二次創作と著作権をちょこっと考えてみた
二次創作と著作権についてはココを見たらいいよ、と言われるくらいのつもりで、力を込めて書きました。
昨今流行りの人気ゲームのひとつが「版権に厳しい」ので有名な企業の作です。二次創作と版権について考えると「へええ、そういうことだったんだ」と認識を新たにすることがすごく多かったので、私の「へええ」をまとめておきます。
法律の専門家ではないので、間違いがあったらご指摘ください。
また本稿は客観的なまとめと、すべての役職を取り払ったスガ個人の感想であり、二次創作を推奨または禁止する意図はありません。
ご指摘を受け、改定、追記、しております。文末を参照してください。
(2021/07/11)
ポケモン事件について複数人からの批判がありました。「おおごとになった一因」と表記し、事件の原因という書き方はしていませんでしたが、念のために補足しました。
(2021/07/21)
「二次的著作物」と「二次創作」は違った!
まずここからかーっ、と天を仰いだりして。
普段使っている「二次創作」っていう言葉。みなさんはどんなイメージでしょうか。私は、狭義に考えて、ファンアート=二次創作、という印象で使ってました。
でもねー。著作権法で定義された「二次的著作物」って、いわゆる「二次創作」とは別物だったんです。
まず、保護されるべき著作物の定義は、こうなってますので、これをアタマに入れておいてください。
「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)
二次的著作物は著作権法で定義された言葉で、翻訳や映画化など、原作を利用した新たな創作物、ということになります。
耳に馴染んだように言い換えると、公式さんたちのメディアミックスは二次的著作物なわけですね。
当然のことながら、原著作者の了解と相応の対価支払いが必要です。
かつ、翻訳にしても文章は翻訳家がひねり出すものですし、漫画化だと漫画家さんの解釈や工夫が入るわけですから、二次的著作物自体にも著作権が発生します。
仮に、二次的著作物をさらに利用する(小説がアニメ化されて、それをアニメ絵柄でグッズにするなど)場合は、原作者と二次的創作物著作者、双方に交渉しなければなりません。
かたや二次創作という言葉は、自然発生的であり、きちんとした定義がないんですよ。
私のように、イコール・ファンアート、同人活動、と認識している人が大部分じゃないでしょうか。
末尾の「キャラクターや設定などの〈アイディア〉は著作物ではない」というところをちびっと補足。
たとえば、
炭治郎という名前の、市松模様の羽織を着た少年
まで保護してしまうと、これから生まれる無数の著作物で「市松模様の羽織を着た炭治郎」が使えなくなってしまいます。
「大正時代を舞台とした鬼を討伐する〈鬼殺隊〉」もそうです。〈鬼殺隊〉という固有名詞が商標登録などで保護(鬼殺しの隊という一般的な言葉なので登録できるかどうかは私には判りません)されていれば別ですが、この設定もアイディアに過ぎないので著作物ではない、ということになります。「幹部を〈柱〉と呼ぶ」にしても、柱の意味はものを支えること、組織や家計を支える言い回しが大黒柱、なんですから保護のしようがない。
けれど、絵は違う。意匠といいましょうか、もう、アノ炭治郎を描けば、アノ炭治郎特定!
絵の情報量の多さは素晴らしいですね。
どこまで似てれば、の境目
特定!と言ってもですね……。
画力が及ばなくて似ても似つかない、とか、取り締まりが怖いのでわざとあちこち違って描いてる、とか、いろいろ難しい問題があります。
ほら、古くはdocomoのコーポレートマークで、裁判がありましたよね。最近では東京オリンピックロゴ問題とか。
基本的に、ロゴマークは情報伝達が目的なので著作権ではなく商標登録や意匠権の範疇ですが、パク(リ)側が(パク)ラレに「依拠(いきょ/この場合は知っていてわざとやったかどうか)」しているかどうかが争点となります。
知らなかったけどたまたま似ちゃったー、が証明できれば、偶然の一致と判断されます。
私がここらへんの勉強中に「いや~、すごいなあ」と思ったのは、このページ。
本を擬人化、だけで「これは自分の真似だろう」と訴える人がいるのが衝撃でした。
世の中には、「ラレた!」と、盗作に対する被害妄想を抱いて、それが世間の同意を得られないと実力行使で事件を起こしてしまう人がいます。その人にとっては人格否定にもつながるとてつもない重要性があるのでしょうが、思い詰めるというのは悲しいことですね。
炭治郎クンの場合だと、たとえ市松模様の羽織でなくても、額にアザがあったりしたら、依拠したと言われても仕方がない。
あのアザには由来があり、原作にこめられた思想や感情が含まれているので、アノ炭治郎ならではの特徴、だから特定!となります。
グレーではなく黒
小説を読んで妄想したイメージ絵だったら、デザイン的特徴が明らかにされていないので大丈夫。
でも本についてる挿絵のキャラをその特徴ごと描いたらアウト。
なんじゃそりゃ。
こんなの知らなかったよ。
ちなみに、「推し描いたの~。Twitterに載せるねー。これでお金もらってるわけじゃないから大丈夫だよねー」もアウト。
よく言われる「私的利用を除く」というのは、お金を稼いでるかどうかではないんだそうで。
はい、目から鱗でした。知らんかった。
金銭授受がなければセーフだと思い込んでる人、多くないですか?
要は、こんなの描けた、と、自分で満足するだけであればOKだけど、人に見せた時点でダメ、ということらしい。
【改定箇所1 文末参照してください】そっくりそのままの引き写し(トレース)やもってのほかの海賊版だと複写権、自分絵としてアレンジしたらいいのかというとそれも違って、同一性保持権の侵害になってしまうんです。
よく同人活動はグレーゾーンと言われますが、たとえ自分なりの解釈でキャラ絵を描いたとしても、上記のようにその時点で黒。
ひ~~っ。
匿名性にあぐらをかいてチラ裏(チラシの裏)とSNSの区別がついていない人にとっては、恐ろしい事実だと思います。
ミッキーのプール事件
いま、ここを読んでソワソワしている某ゲームの同人作家さんたちは、この事件を知っていると思います。
【真相】「小学生がプールに描いたミッキー」が、ディズニーの著作権を侵害した話。 | バンザイ!ディズニー!
親告罪と非親告罪の話はあとからします。
この事件を大学の授業で紹介すると、毎回生徒が動揺します。
引用記事にあるように、感情論が先立つからです。
・営利目的ではないのに
・子供がせっかく描いたのに
けれど、ディズニーの言い分も理に適っている。特に、最初に叩いておかないと類似例が続出するのは否めないですからね。
ここで私は、自分の体験による「判断できない例」も紹介しています。
商店街の手芸屋の店先に、毛糸で編んだアンパンマンの幼児用ベストが陳列されていた。
・私には、これが正規に版権を取った「編み図や本」の完成品なのか、手芸屋さんのオリジナル編み図なのかが判らない。
・別の話として、「うちの子が大好きなアンパンマンを、自分で編み図を作ってベストにした」場合、家の中のみで着せる場合は私的利用。では、公園に着て行ったら?
・そもそもキャラクター弁当をSNSにアップするのはどうよ?
・うちの子が初めてクレヨン使ってアンパンマン描いた、と育児ブログに貼り付けるのはどうよ?
どうして捕まらないですんでるの?
知ってか知らずか、甘えてか舐めてか、著作権の横目でチラ見しながら楽しんでいる私たち。
楽しんでいるつもりでも、実は、楽しませてもらっている、んです。
公式さんのお目こぼしによって。
これはみなさんもご存知の通り。グレーゾーンと呼ばれているゆえんです。
二次創作が広まると、公式さんにとってもいいことがたくさん出てきます。
なんといっても、ファンがこぞって作品を宣伝してくれる。
公式絵よりもファンアートのほうが圧倒的に数が多いわけですから、目に触れる機会も段違いです。
ファンの絵の巧さに感心し、斬新な構図に視線を奪われ、かわいい解釈にほこっと笑みこぼす。
公式だけでは手が届かないところにも、ファンアートはこまごまと熱意を傾けてくれます。
魅力的なファンアートが広まれば、「あれ、これ、なんていう作品だろう」と思う人も出てくる。
アニメショップやグッズ売り場で「これ、見たことある。へえ、オリジナルはこんななのか」と手に取ってみたりする。
宣伝効果は抜群です。
海賊版のように公式とまったく同じものを売って競合するわけでなく、ほとんどのファンはコミケで大儲けしているわけでもない。
つまり、宣伝効果と公式の不利益を比較しても、ファンアートで盛り上げてもらえる方がお得。
それに、もしも二次創作が盛り上がってないと、サビシイじゃないですか。
Twitterにも流れてこず、コミケに島(同じジャンルを固めたテーブルのかたまり)もできず……。サビシイ。ほんと、売れてない感じがする。本当は売れていたとしても、同人活動をしようというほどの熱心なファンを獲得できていない証左となってしまう。
なので、キリキリと締め上げるよりは、ファンを自由にさせておいたほうが公式としても嬉しい場合が多い。
そんな感じじゃないでしょうか。
公式だからこその建前
しかしですね。
自由にさせすぎて、「これはちょっと、作品(またはキャラ)のイメージとしてはいかがなものか」というのが流行ると、これはもう、立派な不利益となってしまいます。
超有名なのは、この事件。
ポケモン同人誌事件 (ぽけもんどうじんしじけん)とは【ピクシブ百科事典】
参考――たまさかnote(旧「今日の言わせれ」) : ポケモン同人誌事件のお話
低年齢層をターゲットとした作品だけに、エッチ系のものが出回ると、小さい子もそれを見てしまう可能性が高かったというのも、おおごとになった一因(エッチ系だったから警察騒動になったという単純な事件ではないが、そこからの拡散はこの傾向がクローズアップされた)でした。
別の作品については、私がその作品の関係者から直接聞きました。
その作品は、予想以上にヒットし、BL(ボーイズラブ。男性同士の恋愛や性行為を描くものが多い)同人誌が大量に出回りました。
作品制作会社のトップたちは、作品や企業イメージの低下を危惧。
結果、次のシーズンが待望されていたにもかかわらず、続編は作られないことになったのだそうです。
近年では、宣伝効果とイメージ低下のバランスを取るべく、公式側が前もって二次創作ガイドラインを設けるようになってきました。
公式ホームページなどで、例えば「趣味の範囲で」とか「エロはダメ」とか「作品を侮辱または冒涜する内容は禁止」とか、明確に条件をつけて同人活動をある程度認めるスタンスです。
漫画家の赤松健さんは、絶版漫画サイト「マンガ図書館Z」を主催しています。作家本人が、絶版だから無料で、もしくは絶版だけど電子書籍で安く、と、作品の命を永らえさせたほうがいいという方針のサイト。
そういう考えのかたですから、同人誌活動にも寛容で、「海賊版(複製)はダメだけど同人活動はOK」を示すマークを制定しています。
ちなみに、「マンガ図書館Z」の前身「Jコミ」時代、私の絶版文庫本が第三者の自炊(自分で本を電子化すること)持ち込みによって勝手にアップロードされたことがありました。
これを、「私の絶版本が電子化されてる。ラッキー。いっぱい読んで欲しいな」と思うか、「また再版するかもしれないのに……」と困るかは、著作者本人の意向によります。
私は後者だったのでびっくりして赤松さんに報告したところ、即座に配信停止。丁寧な謝罪のメールをいただきました。
公式がガイドラインを出したりマークができたりすると、「おや、理解が進んできたな」と感じる人もいるかもしれません。
いえいえ、そう簡単にはいきません。
例えばアニメの場合。最近は状況が変わってきましたが、製作委員会方式で版権を管理している作品がありますよね。
テレビ局、音楽会社、おもちゃメーカー、映像会社などが出資し、作品自体が稼ぎ出す版権料を出資額の割合に応じて分配する制度です。
これは製作委員会の中でもコンセンサスが取りづらい、という欠点があります。一社は「同人活動、カモン!」と思っても、別の会社は「いや、断じて許さん」と考えていたりする。
小説家や漫画家のように、個人の判断で許諾するや否やを決めるわけにはいかないのです。
同人作家の中には、きっと潔癖な人もいると思います。
「公式アンソロジーだって同人作家がたくさん描いてる。公式グッズだって、同人の○○さんがSD(スーパーデフォルメ)やってる。自分の同人誌も公式に認めてもらえば問題ないじゃん!」と。
そう思っても、公式に訊き合わせてはいけません。
同人活動は著作権違反。公式の得になる面もあるから黙認してもらってるだけ、というのを忘れないように。
正面切って「これ、いいですよね?」と訊いても、「ダメです(なんでわざわざ訊いてきたんだー。せっかく見て見ぬふりしてるのにぃ)」
と、なります。
だって許可したらその同人作品の責任まで版権元が負うことになってしまいますから。
それに、同人活動は小規模なものが大量に存在するのが実情で、いちいち許可する手間も大変。
ここらへんの兼ね合いは、古い記事(2008年)のこちらをご覧ください。今でも状況は変わらないんじゃないかな。
ちなみに、神村さんはガイナックス退職後、カラー関連会社へ。今はガイナックスの代表取締役です。
インタヴューの中でも触れられている、ワンフェス(ワンダーフェスティバル。ざっくり言うとコミケの立体造形物版)の「当日版権」は、ゼネプロバイト時代の私も受付やってました。当時はまだパソコンが普及してなかったので、いちいち手書きで、大変でした。
それでも、作り手側にとっては「ちゃんと版権取ってる!」という安心感は大きかったと思いますよ。
主催を海洋堂さんに引き継いでもらって、いまに至るまで毎年成長を続けている要因だと思っています。
告発マニアとか風紀委員とか
公式側が「ここまではいいよ」と示しても、全員がそれを遵守するわけではないでしょう。
人間に性欲がある限りエロ系はすたれないし、厨二病的に「心身共に痛めつけられている様子が好き」な人もいますから。
こういうものの需要と供給は、どんどん地下へもぐります。いわゆるアンダーグラウンド、アングラ、というやつ。公式に見つからないように極めて気を遣いつつ、それでも心のどこかで「これは自分にも買い手にも必要な〈創作物〉なのだ」と誇りながら。
しかし、ことさらにそういうのを暴いて告げ口する「告発マニア」の存在を忘れてはいけません。
前述のポケモン事件は、有名なだけに、真偽の判らない複数のバージョンが存在しました。(上記のたまさかさんのサイトで検証が行われています)
私が先日まで授業で教えていたのは、「拾得物として届けられたから、警察も動かざるを得なかった」みたいなやつ。次の回から、これはバージョンのひとつにしかすぎないって訂正しなきゃ。
この拾得物バージョンは、「青少年健全育成条例」の時のいわゆる「エロ同人誌(有害図書)狩り」と混じってるのかもしれません。
インターネット以前にはエロ本が蔓延していて、よく道端に捨てられたりしていたので。
とにかく、自分は直接被害をこうむっていないけれど「こんなことになってますぜ、いいんですかい?」という調子でタレ込む人たちも存在します。
原作者や同人作家個人に恨みでもない限り、本人は社会悪に立ち向かう善意の行動のつもり。
冷やかし口調で言うところの「風紀委員」というやつです。
こういう人たちの存在が、二次創作文化を滅してしまうのではないか――おそれが最大に達したのは、TPP締結が決まった時でした。
いま、TPPまわりはこうなっている
TPP。環太平洋パートナーシップ協定。経済的な連携に関する協定です。
トランプ政権下の2017年1月にアメリカがさっさとイチ抜けしたりしましたが、日本では2018年12月30日に施行されました。
著作権に触れているのが、以下のような部分。
中でも(2)は、同人誌界隈を震撼させました。
そうです。
告発マニアにチクられる! という恐怖。
これまで、著作権法は親告罪でした。つまり、被害を受けた権利者が自分で訴え出ないといけなかったのです。
ところがTPPに加盟すると、非親告罪化されてしまう。
「こんなことになってますぜ、いいんですかい?」をやられてしまったら、黙認してくれていた公式も動かざるを得ません。
少し話は横道に逸れますが。
霊長類などの高等動物には、脳の中にミラーニューロンというものがあります。
他者のしていることを見て、自分がしているかのように反応する部分で、社会的生物としての共感(エンパシー)能力を育成していきます。
赤ちゃんに対してべーっと舌を出すと、赤ちゃんも真似して舌を出す。そんなやつ。
ミラーニューロンがあるお蔭で、他者の行動を理解したり、模倣によって新たな技能を習得していけます。
うん。そういうことなんだよ。
素敵な絵があったら「自分も描いてみたい」と思うし、なんならキャラになりきって遊びたい(サイドストーリーを妄想したり、コスプレをしたり)。
人間にはもともと「絵を描きたいという本能」があり、太古の昔から壁画を残してきました。
他の人がやってたら、自分もやりたいって思うのは当然なんです。
けれど、まったく何もナシからは難しい。インスピレーションを与えられないと、モデルがないと、徒手空拳からひねりだすのは困難。
だから小さい子は、自分に与えられたコンテンツの中から好きなモノ、例えば、ドレス姿のお姫様やアンパンマン、仮面ライダー、ポケモンを描く。
描くことによって細部を観察して発見の喜びを知るし、もっと似せたいもっとうまく描きたいという願いが、線を安定させ、バランスに気付かせる。
学習や発展とは、模倣から始まるのです。
荒野を駆ける動物を壁画にするのと、写真や名画を模写するのと、既存のキャラクターを描くのと。
精神構造的には何も違いはないと、私は思います。
嬉しいことに、文化庁著作権課でのTPP対応会議には、ヒアリング団体にコミックマーケット準備会も含まれていたという神対応。文化庁著作権審議会の委員の中にも、二次創作への理解者が複数いました。
非親告罪化に関して、対象を「デッドコピーに限定すべき」「二次創作は除くべき」という方向性で、おおむね委員らのコンセンサスが得られた。
――文化庁の審議会、「コミケ文化」守ることで合意、TPPで求められるのは著作権侵害の“一部”非親告罪化、海賊版行為に限定・二次創作は除外すべきとのスタンス -INTERNET Watch Watch
著作権侵害が権利者にとってどの程度重大な影響を及ぼすものであるかについては、権利者自身にしか判らない場合が少なくない。(スガ補足・ので、善意の第三者が告発を行うのはいかがなものか)
二次創作は原版をそのまま複製する海賊版とは別物であり、非親告罪によって萎縮してしまうと新たな文化の創出に支障が出るおそれがある。
ファンと権利者の「黙認」の文脈があってもともとトラブルも少なく、事件に発展してしまったものでも二次創作者が素直に申し出に従っている。
――(上記サイトの内容の一部をスガが要約したもの)
こんなことも書いてありました。
日本書籍出版協会からはまた、「コミケは世界に誇る文化。二次創作を守る方向での制度を」とのコメントもあった。
ヒアリングに出席したコミックマーケット準備会の広報担当者は会合終了後、「文化庁の審議会の委員の口から『コミケ文化』という言葉をが出たことにも驚いた。日本書籍出版協会からコミケを指示するコメントがあったことも力強い」とコメントした。
さすがは日本国の文化庁!
機能の一部京都移転とキャラクター「ぶんちゃん」の広報のため、京まふに出展するだけのことはある!
クールジャパン戦略に関する政府の答弁もこのようなことになっています。
誤解のないように……
すげー、薄い本、政府公認!……ではありません。
重ねて書きますが、同人誌活動は著作権的には黒です。グレーじゃなくて真っ黒。
それをグレーと呼べる段階にまで明度を上げてくれているのは、ひとえに公式の判断ゆえです。
めったに車が通らない田舎の交差点なので、赤信号だけど渡っちゃう。
判るわー。だって見通しもよくって、渡っても誰にも迷惑かけてないもん。
けど、警察から〈赤信号でも渡っていい許可証〉なんてものは発行できない。
警官に訊いたら「赤信号では渡っちゃダメだよ(気持ちは判るから、わざわざ訊いてくれるなよぉ)」となる。
交差点の真ん中でストリップでも始めた日にゃあ、エッチなのを不快に思う人もあるんで、サイレン鳴らして急行せざるを得ない。
ワンフェスの一日版権は、「んじゃ、30秒だけ信号を青にしてあげるから渡っちゃって。信号機切り替えの手間賃はきちんとくださいね」と言ってもらっているようなものです。
実は、親告罪・非親告罪にかかわらず、第三者による告発や捜査機関の判断によって、現行犯を含む逮捕や押収は可能なんです!
親告罪でも第三者の告発で事件になるだなんて、TPPで大騒ぎしたのは何だったんだ、と思っちゃう。
あの条文を見て、調子に乗ってガシガシとチクりはじめる告発マニアの存在が怖い。この一言に尽きるよね。
まとめ
せっかくなので、著作権法を表にしてくれているサイトを引用します。
――上記表引用サイト
著作者にはどんな権利がある? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
最近ちょっくら耳にすることの多い、YouTubeなどでの朗読配信も、原作者の許諾がなければ公衆送信権により【改定箇所2 文末参照してください】アウトであると判りますね。
なにかにつけて映画が別立てになっているのは、一つはかつては映画が最重要の娯楽メディアだったので影響力が大きいから。もう一つは映画は製作に関わる人が多岐にわたっているという特殊事情があるからです。
俳優や音楽演奏家には著作物を伝える者の権利がついてきますし(著作隣接者の権利 。実演家や放送事業者など)、権利関係がとても複雑なのです。
ここには書かれていませんが、著作者人格権(と解釈される内容【改定箇所3 文末参照してください】)の中には以下のようなものもあります。
名誉声望保持権 (著作物を適切な場所に展示するなど、著作者の社会的評価を守る権利)
出版権廃絶請求権 (著作物の内容に確信を持てなくなった際に著作物の複製をやめるよう求める権利)
修正増減請求権 (改めて複製する際に修正バージョンを適用するよう求める権利)
著作者の社会的評価を守る、なんてのは、ほんとうに大切にしてほしい権利であり、根も葉もない噂による誹謗中傷なんかがTwitterに流れてくると、他人事ながらピクッとしちゃいますね。
いや、私は告発マニアじゃないから何もしないけど。
もしも噂を流されているのが友達だったら「訴えてもいいんだよ」と教えるけど。
個人的に気になるところをまとめたのがこちらです。
鍵は、常識外れの儲けを出していないか、公序良俗に反する表現をして作品や作者を貶めていないか、公式が困惑するような表面化してしまう行動(正面切って同人活動の可否をたずねるなど)をしていないか、ではないでしょうか。
わたくしスガヒロエは、公式も同人作家も「作品への愛を持って」さまざまな判断をしてほしいと願っています。
やってもいいじゃん、ではなく、やることが作品のためになるように。
たくさんのファンを増やし、仮に壁サークルで大儲けしたらちゃんと公式に還元する買い物をし、もしも自分が作家として大成してプロになった暁には「○○の同人誌を作ることでスキルアップしてきました」と、作品に感謝を表明する。
公式の立場からは、禁止禁止で作品の命をあたら縮めることなく、しかし作品への愛ゆえにイメージの保持には目を光らせ、「俺たちのコンテンツで儲けやがって」ではなく、こんなに多彩な表現方法があるんだ、作品を愛してくれてありがとう、と、公での言葉にはできないけど感謝する。
そんな、感謝 × 感謝 でなりたつ同人誌世界になったらいいなあ、と思います。
あ、飽くまでも私個人の意見ですから。
自作品の同人誌が出ないひがみは……うん、ちょっと入ってるかもしんないです。
このページが役に立った!と思った方は、ぜひご支援をお願いします。同人誌はなかなか出ないけど書いたものを喜んでもらえたという証として、宇宙規模の感謝を捧げますんで!
その他の参考サイト
・日本の著作権法における非親告罪化 - Wikipedia
・二次的著作物(二次創作)について - これだけ知っとけ著作権講座
▼著作権法 | e-Gov法令検索
【改定・追記】
1)ここに公表権を書いていましたが、公表権とは
第十八条 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物(スガ注・未発表のもの)を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
とのご指摘をmasaoさん(@namiyome)より受けましたので、削除しました。
二つ目の太字のところの、二次的著作物(法的に正しいもの)と二次創作(ファンアート)の切り分けが、私の認識では不十分だったと思います。
2)同じくmasaoさん(@namiyome)からのご指摘で、もとは口述権侵害と書いていましたが、公衆送信権に変更しました。
(公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
(口述権)
第二十四条 著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
関連……(営利を目的としない上演等)
第三十八条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
3)著作者人格権に含めるかどうかについて、以下のようなツイートをいただいております。解釈はいろいろなんですね。
★同じく、以下のようなご意見をいただきましたので、追記します。
2)著作権等侵害罪の一部非親告罪化(第123条第2項及び第3項関係)
改正前の著作権法においては,著作権等を侵害する行為は刑事罰の対象となるものの,これらの罪は親告罪とされており,著作権者等の告訴がなければ公訴を提起することができませんでしたが,今回の改正により,著作権等侵害罪のうち,以下の全ての要件に該当する場合に限り,非親告罪とし,著作権等の告訴がなくとも公訴を提起することができることとしています。
[1]侵害者が,侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等(権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物等)の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること
[2]有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること
[3]有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる「利益が不当に害されることとなる場合」であること
これにより,例えばいわゆるコミックマーケットにおける同人誌等の二次創作活動については,一般的には,原作のまま著作物等を用いるものではなく,市場において原作と競合せず,権利者の利益を不当に害するものではないことから,上記[1]~[3]のような要件に照らせば,非親告罪とはならないものと考えられる一方で,販売中の漫画や小説の海賊版を販売する行為や,映画の海賊版をネット配信する行為等については,非親告罪となるものと考えられます。
――環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備 | 文化庁
経緯において、この改正は「海賊版叩きが最大の目的」だと聞いています。
二次創作の創作性(という言葉が正しいかどうかは別にして)に行きすぎた規制がかからないように、文化庁自身がこのような文言を発表していることは、「神経使ってくれてありがとう」な気持ちです。
★2021/07/11時点での反省点
・文字書きさん向けへと絵描きさん向けへを混在させている
・商標登録や意匠権についての関連が不十分
みなさまのお心次第で、この活動を続けられます。積極的なサポートをよろしくお願いします。