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UXデザイナーの11の行動原則

原則1:現場、現実をみる
原則2:仮説を立てる 
原則3:自分はユーザーではない
原則4:デザインの理由をもつ
原則5:WhyとWhatを行き来する
原則6:手段は目的ではない
原則7:自分か、自分たちか
原則8:咀嚼する
原則9:批判しない
原則10:楽観的に振る舞う
原則11:段階を意識する


原則1:現場、現実をみる

UXデザインの起点は、現場、現実をみること。ユーザーのおかれている現場、現実から、背景にある課題を明らかにし、得られた示唆を通して、解決策を導き出す。テクノロジーの進化に伴い、ユーザーの嗜好性や行動が多様化している現代では、既存情報の組み合わせから顧客体験を描くことは困難になってきています。課題解決のために深く人間を理解する。たった一つのエピソードが、課題解決へのアイデアにつながることを、UXデザイナーは理解しています。


原則2:仮説を立てる

仮説が曖昧のまま検証を行うと、十分な示唆は得られません。十分な仮説とそれに基づいた調査設計の上でデザインリサーチを実施すると、他では得られない深い示唆を得ることができます。忘れてはならないのは、仮説はあくまで仮説であって、仮説=結果となることが目的ではありません。より確度の高い仮説を導くためには、検証前の仮説自体を見直すことも必要です。


原則3:自分はユーザーではない

提供する顧客体験が、デザイナー自身にとって価値のあるものかは重要な判断基準ですが、デザイナーの価値基準を起点に顧客体験を描くと、往々にしてユーザーのためのデザインにはなりません。自身の経験からのバイアス、提供者としてのバイアスがあるからです。どういったデザイン対象に向き合う場合でも、自分はユーザーではないことを前提とし、ユーザーの行動、課題、ニーズ、バイアスと向き合うことが大切です。


原則4:デザインの理由をもつ

アメリカで働いていた時に、ステークホルダーに対してデザインの理由を説明することが重要であると気づかされました。さまざまなステークホルダーと関わるUXデザイナーは、アメリカであれ、日本であれ、ローコンテクストな環境に置かれていることを意識する必要があります。エンジニアやビジネスオーナーといった、違う価値基準のステークホルダーに対して、デザイナーの情熱は伝わりません。デザインアウトプットに対して、常に「because...」を意識することで、デザインの正当性を説明できます。


原則5:WhyとWhatを行き来する

アイデアを発想する際には、Whyが起点となる場合と、Whatが起点になる場合があります。コンセプトのデザインの場合にはWhyを起点に、モノのデザインの場合にはWhatを起点に発想することが多いかもしれません。どちらを起点とした場合でも、必ずもう一方を考えてみる。WhyとWhatを行き来することで、アイデアの妥当性が確かめられたり、新たなアイデアを生み出したりすることができます。


原則6:手段は目的ではない

ツールやフレームワークを活用することを目的にした場合、その効果は限定的になってしまいます。それらを活用することは手段であって、目的ではありません。例えばワークショップは効果的なツールですが、それを行うことが目的になると、得られる結果は納得感のあるものではありません。また、ステークホルダーを巻き込んだ議論の中では、手段がいつの間にか目的になっているケースがあります。議論の中で、何が目的で、何が手段かは気をつける必要があります。


原則7:自分か、自分たちか

UXデザインを行うときは、ペアで行うべきです。実務経験の差があったとしても、2人で課題に取り組むことで、アイデアの幅が広がりますし、相互に気づきが得られます。また、UXデザインはデザイナーのみで行えるものではありません。ステークホルダーと共にあるべき顧客体験を考えます。そのため、(こと英語のコミュニケーションにおいて)主語を自分(I)とするか、自分たち(We)とするかは気をつけます。自分自身の考えなのか、関係者を含めた考えなのか。成果を説明するときは、特に言い方に気をつけます。UXデザインの成果は、自分たち(We)の成果です。


原則8:咀嚼する

ユーザーが言ったこと、ステークホルダーが言ったこと、どこかの著名人が言ったこと。誰かの言ったことを鵜呑みにし、それをデザインの理由にしてしまうことは、UXデザイナーの役割を放棄し、思考停止していることに他なりません。情報過多な現在においては、往々にして他者の意見に流されてしまいます。得られた情報を咀嚼し、自分の言葉で話すことを意識しておくことが大切です。


原則9:批判しない

批判をするコストは、モノを作るコストに比べると圧倒的に少ないです。誰かが作ったものに対して、頭だけ使って欠点を探せばいいだけです。ただ批判することは誰でもできます。そこに専門性は必要ありません。アウトプット作成の過程と努力に敬意を払い、UXデザイナーの視点から改善につながるアイデアを出すことが、専門家としての役割です。


原則10:楽観的に振る舞う

デザインプロセスの過程では、さまざまな困難に見舞われることがあります。困難な中で現実を悲観することは簡単です。しかし、困難な状況であればこそ楽観的に振る舞うことで、状況を打開する発想が生まれます。ステークホルダーどうしをつなぎ、コミュニケーションのハブになるUXデザイナーは、状況を一つ上の視座から俯瞰する姿勢が大切です。


原則11:段階を意識する

Jesse James Garrettの「Elements of User Experience」にある、UXを考える上での5段階モデルは、今なおデザイン対象領域を理解する上でのわかりやすい概念です。UXデザインの過程では、一つ一つの段階を組み立てていきます。それぞれの段階での検討結果は、次の段階を検討する際の根拠(戻り先)となります。一足飛びに戦略からグラフィックデザインは作れませんし、グラフィックデザインの課題は戦略が原因ではありません。自分たちが今どこの段階で検討しているかを意識し、時に前の段階に立ち戻りながら一つ一つの段階を組み立てていくことで、戦略から表層のデザインまでの一貫性を保つことができます。


以上が、私が日頃デザインの現場で意識している行動原則です。

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