認知言語学の基礎まとめ 03
本日の二度目のこんにちは。
さっそく前回の記事、「経験」の続きを書いていきます。
ひとつ前の記事では「経験」から音と意味を結びつけ、身につけることで言語習得ができる、ということと「合成語」について書きました。
本記事では、「連語(コロケーション)」と「自動化」と呼ばれるものについて学んでいきたいと思います。
題材はそうです、籾山洋介さん著の「認知言語学入門」。
連語(コロケーション)
連語とは
句を構成している複数の語の結びつきが(ある程度)固定しているもの
ゆっくり見ていきましょう。
まず、日常的に体調を崩したときによく使う言葉で、「風邪をひく」という言い方があります。
これを「風邪にかかる」や「風邪を帯びる」という言い方にしたらどうでしょうか。
「かかる」「帯びる」。これらは文法的にも意味的にも、「ひく」と同じくらい「風邪」と結びついてもおかしくはない語です。
でも、風邪っぽいとき「やばい、風邪帯びたかもしれん」とは言わないですし、周りからそんな言葉が聞こえてきたら不自然に感じますよね。
日本語だけでなく他の言語もそうらしいのですが、「風邪をひく」のような習慣化した表現があり、それは経験を通して触れてくることで身についていく、というわけです。
そしてこのような句を構成している複数の語の結びつきが固定しているものを、「連語」または「コロケーション」と言います。
ちなみに「風邪をひく」を構成分解してみると次の形になります。
「風邪」(名詞)+「を」(格助詞)+「ひく」(動詞)
格助詞とは主に名詞(体言とも言いますね)について文節どおしの関係を表す助詞のことですが、そのあたりはGoogle先生に訊ねてみてください。
さて、上記のような「名詞+格助詞+動詞」というパターンの連語を、少し見てみましょう。本から一部抜粋します。
「約束を破る」
「予定を立てる」
「怒りを買う」
「ガソリンを食う」
「弱音を吐く」
…etc
例えば、「約束を破る」に対して「約束を壊す」「約束を崩す」「約束を潰す」「約束を滅ぼす」などとは言えません。
このように何かしらの言語を習得し、適切に使いこなすためには一般的な文法規則や個々の語の意味、文法的特徴などの基本的なことに加え、連語についても経験的に必要だ、と本では語られています。
日本語らしい日本であることのひとつの条件は、適切な連語を使うことであることも併せて。
連語というものは、特に勉強して身につけたわけではなく、生きているなかで自然にひとつの型のように覚えて使っていたので、あらためて提示されると目から鱗というか、新鮮な気づきがありました。
ただ、物語のキャラクターのセリフとして、あえて不自然な連語を入れるというのはアリだな、とも思いました。
語尾に個性を出す言葉をつけてキャラクター性を強調するのはよく見かけますが、言語そのものとなるとあまりない気もするんですよね。
『炎炎ノ消防隊』のカリム中隊長は近いのかな…?
閑話休題。
自動化
話が脱線してしまったので、戻して次の「自動化」へ。
「自動化」については、まず「一般的な規則」と「個別的な知識」という、ふたつの言葉が出てきます。
例文として「不可能に近い」という言葉が本のなかでは紹介されています。
これを「一般的な規則」と「個別的な知識」に当てはめて考えると以下のようになります。
① 一般的な規則
「○○に(形容動詞の連用形)+ 形容詞」というパターンに「不可能(だ)」と「近い」を当てはめて作る。
「はるかに遠い」「極端に汚い」など。
② 個別的な知識
「不可能に近い」という表現 = 「ほぼ無理である」という意味を表すひとつのまとまりとして記憶している。
「不可能に近い」という表現は、連語ほど結びつきが固定されているわけではないけれど、経験を通して繰り返し聞き、使うことによって頭に定着し、その結果、①のパターンで作らずとも「不可能に近い」という形で、全体が想起される。
では、自動化とはどういうことなのかまとめてみます。
言語学における「自動化」の解釈
それぞれの要素(この場合、「不可能(だ)」と「近い」)を組み合わせるプロセスなしに、表現全体を使いこなせるようになること。
自動化は表現に触れてきた経験値によって個人差がある。
「目を疑う」「ついうっかり」なども自動化のひとつのようです。
ふだん何気なく使っている言葉でも、経験によって自動化されている表現が実際たくさんありそうなので、連語とともにどこかで頭のなかの棚卸しをしてみたいと思いました。
忘れていた表現、新しい表現。何かしらに出会えそうな気がしませんか。
今回はここまで。
また理解が深まってきたら記事にまとめていきますので、遊びに来ていただければ幸いです。
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