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泣く映画。

初めて泣いた映画はなんだろうとつらつらと記憶をたどる。

そして意外な事実に気が付く。

スピルバーグの「ポスターガイスト」だ。
え?オカルト?これは正直自分でもクラクラするくらいショックだった。

自分は昔話で小学生の頃ハマっていた漫画の話をする時
「女の子をキャーキャー言わせたかったから、恐怖まんがを読んでました」などと言っている。楳図かずおはかなり極めた方だと思う。恐怖ではないがつげ義春とか、ちょっと歪なものを知ったかで語るとみんなが耳を傾けてくれる…そんな優越感に浸っていたのだ。だが、高校や大学でその甘ったれた文化人気取りはバッサリやられる。

「きも」
「大丈夫?」
「SFってオカルトだよね?」
場合によっては「ご家族に何か大変なことを抱えてる?話したくなったらいつでも声かけてね」

えー!単なるエンタメ、こっくりさん、トイレの花子さんそういうレベルで考えていた「怖い話」が、自分をマイナス評価させるものだと認識したのだ。なので表面上は「えへへ。だって女の子がきゃーぎゃーいうの面白いじゃん」とか言って誤魔化して、ほんとは見たいのに、高校ぐらいからはそういう自分を隠すようになった。

しかし浪人時代、勉強すること自体にあまり意味が見出せなくなり予備校に通っているのにもかかわらず、授業を抜け出して早見優の四谷の所属事務所
「サンミュージック」のビルに行き、そのテナントの喫茶店に入り浸り早見優ドリンクを飲んだり、有楽町や錦糸町の映画館にこっそり足を運んでいた。

その時に多分「エクソシスト」や「エイリアン」を見ていた。

当時、ビデオデッキの普及でレンタルビデオって商売があり、ダビング文化でいくらでもそういうことにハマる人たちが発生した。猟奇的な殺人事件が日本でも起こるようになり、その人が大量のビデオを所持していたなんてことがワイドショーでも報道されたりして、「エンタメ」だった怖い話が「タブー」な感じになっていった。

SFに関してさえもそういう考え方をする人がいるのだなということを知り、当時は結構ショックだった。

まあ、でも高校生くらいになると大人なので、あんまそういうところは出さずに、薬師丸ひろ子や原田知世が日本映画を沸かしている頃に、「いいよねー。」なんて調子を合わせていた。でも、そのうち本当に好きになり、友と語り合った若き日を思い出したくなると、その映画を何度も見たりして。その頃の角川映画とか、大林宣彦監督の尾道三部作、高橋瑠美子さんのラムちゃんとかは自分の人生にとってよき青春の思い出の映画、作品となった。

さて、そんな頃「ポルターガイスト」を一人こっそり錦糸町で見て泣いたのだ。

ストーリーはお化け屋敷もの。新興住宅地に移り住んできたニューファミリーが購入した家に次々不可思議な現象が起こり、ついに末っ子の女の子が魔物の世界に引き込まれて消えてしまう。

テレビの砂の嵐、って今24時間オンエアの時代にわからない人もいると思うけど、砂の嵐と末っ子の女の子が会話を始めてしまうのだ。なんか、スピルバーグすげえなって思いながら見ているとついに悪魔出現。

骸骨とも恐竜とも取れない魔物。今考えたらデスノートの悪魔の方が全然デザインが良いのだけど、当時としたら光の洪水の映像に圧倒され、怖い話なのに「綺麗な映像だなあ」なんて見惚れてしまったりとか。

まあ、それでなんで泣いたかって話なんだけど、母親は子を取り戻そうと、相当おっかない化け物の世界に、自分から乗り込んでいくわけです。

そして臍の緒みたいなキモい管から、子を抱えながら、自ら生まれ変わるようにこの世界に帰還する。だーっと涙が出た。

主人公のママは、別に悪い母だったわけじゃないし、たまたま新興住宅街の不動産屋がお墓あるのに更地にして分譲したために、そこにすくう悪霊たちが、「お前ら、何やっとんじゃー」と大暴れし出したという話。

僕自身は母の愛に飢えていたというわけではないと思う。今でも結構仲良い方だと思う。でも「やっぱ母は偉大だ!」と思ってなぜか授業をサボった浪人生は映画館で涙を流したのだ。うわ恥ずかしい。当時はマザコンという言葉が流行っていてお母さんと仲良くする男子は異常扱いされたのだ。

その後、後々「ターミネーター」のサラコナーズも精神病棟に監禁されても我が子を守るとか、この時は泣きはしなかったけど、ポルターガイストテンプレートが僕の中にあったのですんなり気持ちよく受け入れた。見た後も後味がよかった。

あれ?「ママスイッチ」で前に同じようなことを書いたかもしれない。極限状態で再確認される家族愛ってやつなのでしょうか?

そんで、何十年も経って久々に「すげー」的な映画を見た気がするのでリンクしておきます。でもこれは「母がすごい」のではなく「子がすごい」
バージョンでした。ちなみに恐怖映画で泣いたのはポルターガイスト以来でした。

ヴィジット (吹替版)


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