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デザイン外注でデザイン経営は実践できるのか

結論からいうとできない。外注のデザイナーが経営の根幹に関わるような提案をした際に快く採用する経営者がいないからである。デザイン経営に必要なのは経営者の覚悟である。

デザイン経営とは

デザイン経営とは、経済産業省と特許庁が提唱する新しい経営コンセプトで、デザイン(ビジネス課題を創造的に解決する行為)を実践できる組織体制を経営者が整備することにより、企業のブランド価値向上とイノベーション実現の両方が実現する、というものである。

ブランド価値向上は、サービスデザインの実践によって実現する。あらゆる顧客接点で統一感のあるブランドメッセージを発信し続けることで、ブランドイメージが確立する。

イノベーション実現は、デザイン思考の実践によって実現する。実際には思考だけでは足りず、ユーザー調査とユーザーテストというお金のかかる行為に積極投資することで、顧客の本質的要求を満たす画期的な製品サービスが実現する。

デザイン経営=デザイン外注?

さて、この新しい経営コンセプトを打ち出した経済産業省は具体的にどのような振興策を打っているのかというと、なんと「企業と外注デザイナーとのビジネスマッチング」である。経営と銘打ったものを外注してもよいといっているのである。やや意外な事実である。

では経産省はデザイン経営実践のために経営者は何をすべきと考えているのだろうか? 九州経済産業局の配布する「九州デザインストーリーブック」の「デザイン経営導入を考える経営層の皆様に理解頂きたいこと」という章にはこう書かれている。

デザイン経営導入を考える経営層の皆様に理解頂きたいこと:
1.デザインを理解する
2.デザインの価値を信じる
3.デザインの限界を知る
4.デザインに対する方針を明確にする
5.長期的な視点でデザインに取り組む

これをひとことで要約すると「経営者はデザイン経営を実践する覚悟を決めろ」である。

必要なのは経営者の覚悟

覚悟の必要性について、例を挙げて説明しよう。

「イノベーションの達人!」(トム・ケリー&ジョナサン・リットマン著, 2006年)という書籍に、駅でソフトドリンクの売上を伸ばすために駅利用客の観察を行なった結果、「売店の真上に大きな時計を掲げる」という施策を導き出し、実際に売上が伸びたというエピソードが紹介されている。

ここでのポイントは駅利用客の観察である。書籍では明言されていないが、かなりの観察期間と人件費が発生したはずである。

さて、もしも外注のデザイナーに「良い結果が出る保証は全くありませんが、長期観察するので経費を300万円ほど出してください」といわれて快く承認する経営者は何人いるのだろうか? またその結果として「売店の真上に大きな時計を掲げてください」と横山光輝版諸葛亮孔明のような提案をされて「たったそれだけかよ!」と激怒しない経営者は何人いるだろうか?

もっとシンプルな例を挙げよう。

外注デザイナーに「これからあらゆる顧客接点で統一感のあるブランドメッセージを発信しますので、まず御社のブランドコンセプトを教えてください」と問われて「(今日会ったばかりの)お前が考えろ」と言い放つ経営者は本当に経営をしているといえるのだろうか?

成果の約束できないユーザー調査に大金を投資するには相当の覚悟がいる。企業のブランドコンセプトの決定のような企業当事者でしか成し得ない作業もある。これらのできない経営者の元では絶対にデザイン経営は実践できない。「デザイン経営に必要なのは経営者の覚悟」。このことは今後も声を大にして主張し続けていきたい。

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