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一夜かぎりなんて……

 漢字では「一夜茸」と書く。一夜かぎりのキノコなのでそう呼ぶらしい。前にも書いたが、キノコの知識はまったくない。だが、さまざまなキノコにそそられる。今朝、見つけたのは、「ヒトヨタケ」というなんとも寂しい名前のキノコかもしれない。

 キノコを見つけた場所は畑の中である。ここには、つい、このあいだまで伸び放題の大きなウメの木があって、早春になると白い花をつけていた。木にはカラスウリもまとわりついており、いかにも畑に放置されたウメの木だった。

 早春、花が咲きそろうとメジロが飛んできて、しきりに花の蜜を吸っていた。プラスチックの足環をはめたメジロを頻繁に見かけたのもこのウメの木だった。春が本格的になった今年、梅の木は切られてしまい、大量のウメのチップ(木片)が地面を覆っていた。

 地主さんのやったことなのでしかたがない。ただ、もう、来年からメジロに逢えないし、秋、カラスウリの赤い実にもお目にかかれなかった。収穫はカラスウリの白い不思議な花を識っただけである。しかたがないとあきらめつつ、一抹の寂しさを禁じ得ない。

 台風からの大雨がひと息ついた今朝、チップの上にたくさんの灰色のキノコを見つけた。調べてみたら、どうやらヒトヨタケらしい。ヒトヨタケを調べていて、とても興味がわいてしまった。ヒトヨタケでなかったらご容赦いただきたい。

 食べると美味だそうだ。軽く茹でたものを三杯酢やお吸い物にすると適しているとか。しかし、毒キノコだという。酒飲みには大敵で、アルコールを分解する酵素の働きを阻害するため、中毒症状が出てしまう。

 英語で「Inky cap (インクの傘)」と呼ばれるのは、成熟し、傘が開くと柄を残して傘とヒダが一夜で黒いインク状に液化して溶けてなくなるからだそうだ。「一夜茸」の和名の由来ともなっているこのキノコの特徴らしい。なんとも寂しい名前に思えてしまう。

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