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少し秋めいてきた朝

 朝の散歩ですれ違うとき、「おはようございます」のひと言がいえない人がいる。無視してすれ違っていくならともかく、明らかに迷惑そうににらんでいく人さえいる。あるいは、こちらのあいさつに、〔え、なんで……?〕といいたげにしていく。それなら、ひと言だけ「おはようございます」と返せばすむものをとおかしくなる。

 しばらく前から、朝の散歩のとき、行き交う誰彼となく「おはようございます」というのをやめた。あいさつされて迷惑と感じる人が確実にいるとわかったからだ。いまも、こちらの出方をうかがうようにしているひとには、相変わらずあいさつをする。無言でうなずくだけの人もいるが、さすがに無視はしない。

 いつも気持ちのいいあいさつをかわしている男性と久しぶりに逢った。彼が、「おはようございます」と返しながら、「少し、秋めいてきましたね」といった。暑さはあまり変わらないが、たしかに秋の気配を感じる。それだけに「少し」であっても、秋の気配はうれしい。今年、涼しさを待ちわびる気持ちは例年の比ではないからだ。

 彼のひと言でたちまち爽快になる。今朝は日曜日の朝だからというわけでもないだろうが、散歩をしている人たちの姿が目に見えて少なかった。6時を過ぎても町は静かだ。人々が、まだ、眠りをむさぼっているのを如実に感じる。働いている人たちは、誰もが暑い夏に疲れてしまっているだろう。

 もしかしたら、いつも会う年寄りたちは散歩に出かけにくいのかもしれない。同居している家族を起こしてはいけないと、家の中でじっとしているようすを想像する。中には、早起きに嫌みや冷やかしを浴びせられる年寄りだっているかもしれない。

 今週が過ぎれば、平日の朝は学校へ向かう小学生たちでにぎわう。道端の草花も秋の装いに変わるだろう。あいさつのとき、「ようやく秋になりましたね」といえる季節に変わっていてほしいものである。

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