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【エッセイ】寧静



一人になりたいけど独りになりたいわけじゃない。

そんなとき、いつも私が行く場所がある。
JR浜松町の北口を出るとビルとビルの間、あたたかい色にライトアップされた東京タワーが見える。

東京の人は東京タワーに行く機会がほとんどないらしい。
少し寂しい気持ちになるが、今はそれがありがたい。

忙しないオフィス街を抜けて増上寺の横のゆるい坂道を上る。
気がつけば東京タワーの足もと。
しばらく気の済むまで見上げて、地上150mの大展望台へ。

エレベーターから一歩踏み出す。
何度訪れても慣れない高揚感を抑えて目の前のパノラマを堪能する。
星の数よりよっぽど多い、車のライトや窓明かり。
その光のもとには人の暮らしがあるんだ、と感傷に浸ったりして。

ゆっくり一周する頃にはささくれたっていた心は凪いでいた。

カフェで一服して帰ろう。
東京タワーを出れば私もあのパノラマの一部。
暮らしのなかで、誰かが私の光を見つけてくれるかもしれない。



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