見出し画像

[旅行記]金山寺味噌のふるさと

途中下車の範囲からは外れるけれど、大阪から南に向かって和歌山の方へ。

和歌山県は、伊勢のほうから熊野三山まで訪れたことはあったけれど、それくらいしかない。遠い場所、という印象がずっとつきまとっていて、なかなか足を伸ばそうという気分になりにくい。

大阪から和歌山へ向かう阪和線に乗る。学生さんが多い。しかも、隣町の高校へという程度ではなくかなり長い間乗っている。毎日の通学だけで既に大変そう。

そんな学生さんたちも、和歌山市までで大半が降りていった。目的地は更にその先。湯浅という駅で降りる。

ここは醤油発祥の地と云われていて、今も味噌を作っているところが多い。その味噌は、いわゆるおかず味噌といわれるものだけど、ここで作られているのが金山寺味噌。

関東育ちだとあまり馴染みがないのだけど、ごはんのお供としてメインを張れるようなおかず味噌って、なんだかとても興味ある。いつか行ってみたいと思っていた。

湯浅の町は、こういってはなんだけど鄙びた感じで、こぢんまりした昔ながらの小さな町。「古い町並み」とも言えそうな風格ある町並みがありつつも、その規模は高山とかと比べるとほんの少しだけ、といったところ。

でも、その町並みの中や少し離れたところに金山寺味噌を作っている会社がいくつか。駅前でレンタサイクルを借りて、とりあえずひと通り巡ってみる。

たぶん一番有名なのは、この丸新本家。金山寺味噌だけでも種類がたくさんある。醤油蔵としても続けていて、大手とは違う手間暇かけた造りの醤油がいろいろとラインナップされていた。

蔵は自由見学ができるそうなのでひと通り見てまわる。ちょうど、醤油を絞ったあとのものを取り出す作業をしていた。布で包まれた四角いペースト状のものをぺったんぺったん。絞ったあとも何か使うのだろうか。

ひたすら熟成を重ねる静かな蔵の中。美味しさが積み重なっていく。

醤油類の試食もあった。利き醤油みたいに比べてみる。生一本黒豆が特に美味しい。それぞれで結構味わいが違う。のだけれども、そこまで使い分けられる腕が自分にないのが惜しい。

金山寺味噌は、試食させていただいた中でいちばんおいしかった具だくさんタイプを買って帰る。


丸新本家は町の中心からは少し離れたところにあったので、そこから町中の方へ戻る。住宅と商家が入り混じりながら並ぶ古い町並みには、小さめの味噌造り蔵がいくつか。

昔のこの辺りの様子とか、醤油蔵の変遷とか、金山寺味噌は割とどの家でも作っていたこととか、とりとめもなくいろいろと聞く。

試食させていただいて、それぞれの蔵元で結構味わいが違うことがわかる。ここでもひとつ買って帰ることに。

町並みの中ではつるし雛の展示など、昔ながらの風習を伝える場も。なんだか、この町では時間の進みがゆっくりしているような、そんな気がしてくる。


昼時で、さてどうしようかと悩み始める。店はあまりないらしい。ふらふらと自転車で巡っていると、なれ寿しの文字が。なれ寿し? ここで?

押し寿司と和菓子の店らしい。なれ寿しは、残念ながら今日は無いとのこと。仕込んでいるものがあるけれど、明日にならないと出来上がらないとか。

訊いてみると、使っているのは鯖で、ごはんとともにだいたい一週間ほど漬けるのだとか。どれくらいの発酵ぐあいなのか、とても気になる。

無いものは仕方ないので、色々入った盛り合わせを頂く。駅でレンタサイクルを返し、電車を待っている間に頂く。

左上隅にあるのが鱧の押し寿司。鱧で押し寿司というのは初めて聞いた。食べてみると、かなり甘じょっぱくて濃い味付けだけど確かに鱧だ。

〆鯖は酸味と甘味がハッキリと強め。甘さがなんか不思議な風味。柑橘だろうか。このあたりは有田が近くて、そういえばみかんといえば有田みかん、というくらいには名前が通っている。周りにもみかん畑が多かったので、この寿司にも使っていたりするのかも。

どこか懐かしさも感じる甘さ強めの田舎寿しっぽいところ、嫌いじゃない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?