『「和の食」全史/永山久夫』読了
縄文から現代までの食の歴史を眺めてみた。
年末年始には本を読もうと思って、あれこれと手を出していたうちの一冊。この本を読みたくなったのは、やはり「たべものラジオ」の影響が大きくて、主にシリーズ17の「日本料理の系譜」に近いものがある。実際、この本を読んでみると、たべものラジオの中で語られていた内容に近しいものがあったりして、なるほどなるほど、と理解が早かった。
序盤の縄文人や弥生人がどういう食生活をしていたのか、それによって社会がどうなっていて、人々の生活や心身の健康がどうなっていたのか、ということも書かれていて、このあたり、非常に興味深い。意外に健康寿命が長かった縄文人、という話で、ある村落では65歳以上が30%以上いた、という痕跡もあるとか。
もちろん平均寿命は短いのだけど、病気や不意の怪我がなければ、かなりの長寿だった可能性がある。また、身長も平均170cmくらいはあったのでは、というような説もあり、どちらも栄養がしっかりしていないとこうはならないので、穀類や果物から肉類まで、幅広く食べられていたということに。すべてが新鮮な分、むしろ現代よりも健康的なんじゃないかと。
戦国時代の食も凄い。下級武士や足軽たちの陣中食では米が基本。そして戦時中にどうやって食料を確保するのか、ということも詳細に書かれていた。足軽傘をはじめとして、食のこともしっかりと考えられた装備があのスタイルを作ったのかと考えると、非常に合理的。そして食べる米の量が半端ない……。1日で一升とか、現代人からは信じられないくらいの量。
なかなかに分厚い本で、かつそこそこ細かい内容にはなっているけれど、日本人の歴史10000年ほど一冊に押し込めようとしているので情報量的には少し物足りないところもあった。あくまで全体の流れを把握するための本として、とりあえずは抑えておこうか、という感じ。最近好きな日本の歴史との関連性もあいまって、とても楽しく読むことができた。
この本を読んで、そして「たべものラジオ」でその他のエピソード、たとえば寿司シリーズとかじゃがいもシリーズあたりを聞いた上で、そういえばと気になった漫画があって引っ張り出してきたのが、『信長のシェフ/梶川 卓郎 (著), 西村 ミツル (著)』。
なぜか織田信長の時代にタイムスリップしてしまった現代の西洋料理人、という設定で、信長の無茶振りな要求とシチュエーションに対して料理で生きる道を開いていく、というもの。
かなり初期の頃から読んでいるので、もう10年くらい読み続けている。当初から、時代考証とか料理の内容とかがとにかくしっかりとなされていて、歴史モノとしても「そうだったのか」と思える内容がたくさんあった(だから好きで読み続けているわけなのだけど)。
今回、1巻からもう一度読み返してみたら、理解できる内容がとても増えていて、自分でも驚いた。本膳料理の意味とスタイルとか、足軽たちの料理の姿は本当にこうだったんだなあ、とか、あの野菜はまだ入ってきていないとか、砂糖の代用には何が使われていたのか、とか。
たべものラジオ、今回の「和の食」全史、他にもずっと聞き続けているコテンラジオ。このあたりの知識が、信長のシェフの解像度を3段階くらい引き上げてくれた感じがする。
知識が増えることによって好きなものの解像度が上がることは、これは本当に楽しい。ああ、学ぶ楽しさってこういうところだよなあ、と思いながら、新年早々本に埋もれていろいろと読みふけっている。
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