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歳を重ねるということは…

朝、目覚めたような、目覚めていないような時間に、ゆっくりと万代池公園に歩く。秋の気配が辺り一面を橙色に染め上げている。葉っぱたちは、まるで燃えるように色づき、やがてこの並木道は枯れ木のような灰色の世界へと姿を変えていくだろう。

思い出す。かつて50代の頃、この道を走っていた自分。長居公園まで、息を切らせながら走り抜けていた時間。今はもう、走ることはない。代わりに、この小さな池の周りを二、三周歩くだけ。

歩くことで、かつては見逃していた風景が、ゆっくりと、しかし鮮明に目に飛び込んでくる。木々のリズム、通り過ぎる人々の表情、風のささやき。かつての自分なら、ただひたすらゴールを目指していただろう。今は、その瞬間そのものに意味を見出している。

誰かが、年を重ねることの真実を教えてくれようとしていたのかもしれない。歩くことで得られる静かな気づき。走ることではなく、観ることの大切さ。

それでも、相変わらずの自分がいる。今朝も、おはようございますと言うべきところを、何の気なしにこんにちは、と口走ってしまう。些細な失敗。些細な人間らしさか…

秋の風が、枯れ葉を優しく撫でていく。春には桜が淡いピンクに色づき、新緑が世界を覆うだろう。

そして、明日も同じこの道を歩いているだろう。

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