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ニンジャの話 その15 停滞

夢中になっていたのに急に醒めてしまうことってありますよね。プラモデルも完成させるまでが楽しく、完成してしまうと後は飾って眺めるだけになります。組み立てにかけていた時間と同じ時間を鑑賞に割くことはほとんどないでしょう。私が小学3年生から始まった古民家改修プロジェクト、10年経つと古民家は素人DYIレベルでできることがほとんどなくなってきました。
穴が空いていた屋根も、抜けていた壁も、虫が飛び跳ねていた土蔵も改修されました。放置されていた庭も手入れが入り民家としては十分居住できる状態になりました。10年経って変わるのは家だけではありません。9歳だった私は19歳になり大学生。さすがに全ての休暇を古民家の補修に充てることはありません。子供は育ち家から徐々に離れます。補修というプロジェクトがメンテナンスというプロジェクトに代わる頃、家族も新たなフェーズを迎えていました。

私は大学生になってからめっきりと古民家を訪れることがなくなりました。弟も高校生になり部活で忙しくなっています。両親は相変わらず古民家に通っていましたが家族単位のプロジェクトから夫婦の趣味的な位置付けに変わってきたと思います。古民家改修を通じて私たち兄弟は多くを学び、多くの思い出と思い入れを持ちました。しかしプロジェクトからの卒業の時期がきていたのでした。ある意味それは当然のことです。

父の健康をとり戻り、生きがいを与え、家族が共に一つのことに向けて努力する機会を与えてくれ、お手伝いしてくれる学生さんや、ゲストとして訪れてくれる多くの子どもたちや知り合いの方達を引き合わせくれた「里の館」は私たち家族の成長と共に少しづつその影が薄くなって行きました。「里の館」から普通の古民家へと戻って行きました。

その後私がアメリカに渡ることになり日本を離れることになりました。アメリカに住んでいた25年間私はほとんどこの場所を訪れることはありませんでした。古民家は夫婦と共に静かな時間を過ごすことになります。

しかし、25年後のある日。静かになった古民家が再び目覚め、The Ninja Mansionへと変態するきっかけが訪れるのです。

続く


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