ニンジャの話 その16 人形の館
リサイクルショップって行ったことありますか? 家電や生活雑貨、楽器、スポーツ用品がブランドに関係なくずらりと陳列されており、ほぼなんでも揃う市場のようなお店です。生活用品の中古車販売店みたいな感じです。
私の父はこのリサイクルショップが大好きで時間があれば覗きに行って掘り出し物がないか探していました。そういえばお宝鑑定団もよく観ていたように思います。 覚えていらっしゃるかと思いますが私の父には刀剣収集の趣味がありました。そもそも刀剣収集の旅で見つけた古民家なのですが、次第に主従が逆転し始めます。古民家の改修を始めてから刀剣の方にはお金が回らなくなったのかほとんどの収集品は売却してしまいました。それほど古民家改修の金銭的負担は大きかったのだと思います。一介のサラリーマンですから当然ですが。
古民家の改修がひと段落した頃、父の収集癖がまた顔を出し始めます。そして古民家がその収集癖に加速度をつける役割をします。なぜか? 収蔵するスペースがふんだんにあるからです。昔の家では蚕を飼っており多くは屋根裏が蚕部屋になっていました。当然ながら父が買った古民家にも屋根裏がありこれが丸ごと収集品スペースとなります。これに加え元々納屋であるので倉庫として使える長屋門、収蔵品を収めるにぴったりの土蔵とコレクターの父がモノを溜め込める場所が大量にあったのです。
そもそもコレクター気質を持っていたこと、古民家の改修がひと段落して資金に余裕が出てきたこと、古民家にはたっぷりと収蔵スペースがあったこと。パーフェクトストームというのは3つの台風が奇跡的に一つになったことにより引き起こされたらしいですが、まさに父にとってはパーフェクトストーム。気に入ったものがあったらなんでも即決で引き取ります。またそれに加えて父にはそれを正当化する理由までありました。
「里の館では将来商売をやるのだからこれは必要なものだ!」
そう、古民家改修に入れ込んでいた父には密かな想いがありました。実はここでなんらかのビジネスをやりたかったのです。父の生家は店舗を営んでおりそもそもが商家出身。四国徳島の人間は商売っ気のある人が多いのです。ただサラリーや講演収入を趣味に突っ込んでいるというわけではなく、父の中ではこれは「投資」だったのでした。
私が渡米している25年の間にさまざまな「必要物質」がリサイクルショップから買い込まれました。グランドピアノ、ドラムセット、トランペット、段飾り雛人形10セット、5月人形セット、数えきれないほどの茶器、食器、黄金の(父は黄金好きw)の仁王像セット、金屏風セット、重さ2トンの鷲がネズミを捕まえている木像などなどなどなどなど。
またこれに加えて思い出も品は全て収蔵されました。私が子供の頃に使っていた絵本や積み木などのおもちゃの類、小学校でもらってきたプリント、幼稚園で作った父の日の灰皿などなどなどなど。とにかく広いのでなんでも置いておけるのです。そして父はなんでも置いておきました。
私が25年の海外生活から帰国したとき。父はすでに認知症を患っていました。72歳で大学は定年退職しました。そして夫婦は名古屋の家を弟夫妻に譲り、生活の基盤を古民家に移していました。別荘であった古民家は夫婦の引退後の拠点となり、母が認知症の父を介護しながら生活する場所となっていました。10セットの雛人形に囲まれながら、、、、
続きます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?