いざというとき助け合える~2022年12月に読んだ本から
読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。12月も、3冊。
1 夏のくじら 大崎梢
篤史は、都会を離れ、祖母の住む高知の大学に進学した。
もうかかわることはないだろうと思っていた「よさこいのチーム」の打ち合わせに顔を出したのは、理由があった。ある人物を探し、4年前の約束を果たしたかったのだ。
最初乗り気ではなかった篤だが、他の人とのかかわりや、よさこいの魅力から、しだいに真剣に取り組むようになっていく。
本番に向けて、だんだんと盛り上がり、よさこいの「熱い」雰囲気が、びしびしと伝わってきたお話。
やっぱり、一つのことに打ち込むっていいなと思ってしまう。
大崎梢さんの作品は、「成風堂シリーズ」や「本バスめぐりん」など、「本」に関わるものが好きなのだが、それらとはまた違った魅力を感じた一冊だった。
北海道には、「よさこいソーラン祭り」がある。
私も以前、かんたんな踊りに挑戦した。当時40代。
「ソーラン節」が入るから、振り付けにも「漁網を引く動作」が含まれている。片足をぐっと伸ばして、しゃがみながら網を引く。右側、左側・・ううう・・しゃがんだら、立ち上がれない・・ここで私のよさこいソーランへの挑戦は終わった。
2 若葉荘の暮らし 畑野智美
感染症の影響で、収入が激減したミチル。引っ越し先は、40歳以上独身女性限定のシェアハウス、若葉荘。
そこには、いろいろなものを抱えながら生きている女性たちがいた。
少しずつ少しずつ、周りの人たちや若葉荘での暮らしになじんでいくミチル。
なんだか私も、これからの暮らしを思うと、ミチルの持つ「不安」は人ごとではない。
作品中に出てきた一節、
「適度な距離感で暮らしていて、いざというとき助け合える住居」というのには、ものすごくひかれた。
若葉荘で暮らしたことで、
「誰かが何かしてくれることを待つばかりではなく、自分から動ける人になりたい」
と、一歩進んだ考え方を持つようになったミチルが、頼もしい。
3 きみはいい子 中脇初枝
じわじわとクラスが壊れていく新任教師、娘をたたいてしまう母親、80歳過ぎのひとり暮らしの女性にいつも「こんにちは、さようなら」と言葉をかける小学生、認知症の母親と3日だけ暮らす娘。
ひとつの町の5つの物語。
虐待の場面がでてきて、読むのが苦しかった作品。でも途中でやめることはできなかった。
大人たちも子どもたちも、それぞれがいろんなものをかかえている。出口の見えないまっ暗い箱の中で、もがいている。
でも、まわりの人の気づきやちょっとした声かけで救われていく。
いつも、子どものことで謝ってばかりいる母親が、
「なんていいお子さんなんだろうと、ずっと、おかあさまをうらやましく思っていましたのよ。」
と声をかけられ
「そんなこと言われたのはじめてです」
と、泣き出した場面が忘れられない。
たいへんなことは、いっぱいある。それでも「希望」はちゃんとあるよと、思えた一冊。
2023年、新しい年になった。
今年は、どんな本に出会えるだろう。
新しく出る本はもちろん読みたいし、今まで読んだことのない作家さんの本にも挑戦したい。
「有名で、非常に人気も高いのに、私は苦手な本」も、けっこうあるから それを読んでみようか。
再読したい本も たくさんあるなあ。
と、読みたい本の候補が 次々と出てくる。
でも、何よりもまず、
「元気に本が 読めますように。」
これが一番の願い。
読んでいただき ありがとうございました。