何かに運ばれていってこそ~2022年1月に読んだ本から
2022年も、読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしていこうと思う。
1月に読んだ本の中から、印象に残った本2冊。
1 ポプラの秋 湯本香樹実
父が急死し、母と2人、アパートに住むことになった 幼い千秋。アパートの大家さんは「死んだ人への手紙をあずかる仕事」をしているという。ちょっと こわいそのおばあさんに、千秋も 父宛の手紙を 書いて渡すようになる。
時は流れ、おばあさんのお葬式にかけつけた千秋。そこには、予想に反して たくさんの弔問客が。
そこで千秋は、母が書いていた「死んだ父宛の手紙」を読むことになる。そこには 千秋が知らなかった 父の死の真相が書かれていた
読書会で教えてもらった一冊。
おばあさんには、たくさんの人が手紙をあずけていた。死んでしまった大事な人宛の手紙を「書くこと」、そしておばあさんにあずけることで、救われた人が多かったのだろう。
それは、千秋も同じ。突然の父親の死、環境の変化、受け止められないことがいっぱいの中で、父親への手紙を書いたことで心を保ち、大きくなっていったのだろう。
最後に明かされた 千秋の母親の手紙にも 胸を打たれた。深い悲しみの中で、どれだけ 千秋を守ろうとしていたのか よくわかる。
手紙というのは、やはり、郵便屋にしろ、海に浮かぶ 瓶にしろ、何かに 運ばれていってこそ、書いた者の心が ほんとうに解き放たれるものなのだから。
「書くこと」の力を感じられたお話。
2 迷犬マジック 山本甲士
認知症を疑われているおじいちゃん、太り気味の独身中年男など、ぱっとしない毎日を 送っている4人の目の前に、ある日突然、迷い犬が現れた。「マジック」と 首輪に書いてあるのだが、いっこうに飼い主が見つからない。しかたなく世話を続ける。すると、ぱっとしない毎日に少しずつ変化が・・・・。
しかたなく世話を続けた「迷い犬・マジック」が縁で、人生が変わっていった4人のお話。
あいさつをする、人と言葉をかわす、身体を動かす、食事に気をつける、新しいことに挑戦する、出会いを大切にする・・・・人生が好転するのは、こういう 何気ないことが 最初の一歩になるんだろうなあ。
「ひかりの魔女」の ひかりおばあちゃんの わんちゃんバージョンとも言えるかも。
図書館が、また閉館しているせいなのか、雪が多くて うんざりしているせいなのか、なんだか最近、読書がすすまない。(私の場合、「忙しくて」読む時間がないということは、全くない。)
お話はおもしろいのだけど、ちょっとずつしか 読み進めず、1冊読むのに 何日も何日も かかってしまっている という状態だ。
う~~ん、なぜだろう。
この数週間、そんな思いにとらわれていたが、さっき読み終わった一冊は、なんだか久しぶりに 読書スイッチ が入った感じがして、すぐ読み終えることができた。
なるほど、こういうときは、好みの「悪い人がでてこなくて、ほっこりしている本」よりも、いつもは手に取らない、「つらかったり、悲しかったり、理不尽だったりする本」の方が 刺激になるのかもしれない と 感じた。
(その、久しぶりに読書スイッチが入った感じがした本は、たぶん「2月の印象に残った本」になるでしょう。)