恋する図書館~2022年8月に読んだ本から
読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。
8月に読んだ本の中から、印象に残った本3冊。
1 古本食堂 原田ひ香
兄が遺した神保町の古書店を継ぐことになった 珊瑚さん。
そのお手伝いをすることになった、 美希喜。本が好きな 国文科の大学院生である。
視点が、珊瑚さんと 美希喜、交互に変わりながらお話はすすんでいく。
古書店をとりまく人々、おいしい食べ物、一冊の本。
いろいろな悩みをかかえた人々も 何かヒントを得て一歩踏みだす。
お寿司、焼きそば、ビーフカレー、ピロシキ・・・おいしい食べ物を古書店内で食し、訪問者の声に耳を傾け、そして一冊の本を手渡す。食と本がうまくむすびついたお話。
珊瑚さん、その年齢で上京し、やったこともない古書店を経営するというのはとても勇気がいることだった思う。
美希喜が神保町を歩く場面が何度か出てくる。
古書店の店先に並んでいる 絵本や写真集をながめたり、新刊書店に入り ベストセラーのチェックを終えたら、またまた別の古書店に入ってしまったり。実に楽しそう。
私には、田舎暮らしが合っていると思っている。だけど、この神保町のように、本と美味しいものが たくさんならんでいる街には住んでみたいなあと一瞬思ってしまった。
2 隠居すごろく 西條奈加
巣鴨で六代続く 糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、還暦を機に隠居生活に入った。
のんびり暮らそうと思っていたが、孫の千代太が 次々と「やっかいごと」をもってきて、なぜか忙しい毎日となっていく。
読んでいる途中で「わらしべ長者」が、頭にうかんだ。
最初は、(痩せて小汚い)犬 次に(小汚い風体の)子ども2人 と、孫の千代太が、徳兵衛の隠居先に連れてくるものが、だんだん大きくそして多くなっていったからだと思う。
大店の主人として、商人として、堅実な商いを第一としてきた徳兵衛が、人との関わりで変っていく様子にしみじみし、最後に本を閉じたとき、ああこの本に出会えてよかったなあと思った。
西條奈加さんの作品は 初めて読んだが、次はどれを読もうかと思案中。
3 夢見る帝国図書館 中島京子
「上野の図書館のことを書いてみないか」
喜和子さんは、私にそう言った。
日本初の国立図書館の物語と、謎の多い喜和子さんの物語。
二つの物語は、最後にひとつになる。
帝国図書館。日本で初の国立の図書館。現在は、国際子ども図書館となっている。
たまたま、少し前に、国際子ども図書館をあつかったテレビ番組を見ていた。(「名建築で昼食を」第9話)
予算が途中で足りなくなって予定の4分の1ほどで建設がとまったこと。
ドアに「おす登あく」(押すと開く)というプレートがついていること。
この場面は、TVでもとりあげられていたところで、お話がぐっと身近に感じられた。
その図書館を主人公にした物語。そこには、建設の歴史はもちろん、通ってきていた明治の文学者たち、関東大震災での混乱の様子、戦火をのがれるための本の疎開、近くの上野動物園の戦時中の様子(トンキーや花子も登場)なども出てくる。
いちばん好きなのは、「図書館が 樋口一葉に恋してた」のくだり。なんてかわいい図書館だ。
この図書館に限らず、古くからある建物には、それぞれ こうしたたくさんの物語があるのだなあと気づかされた。
もう一つの物語、喜和子さんの波瀾万丈な物語。
最後に二つの物語がつながるのが見事!
9月になった。
9月になったけど、我が家のアサガオは、今、花盛り。
タネをまいたのが遅かったというのもあるが、10本くらいの株に、昨日は10個、今日は13個と花を咲かせてくれている。
目が覚めた時、「今日は、何個咲いているかな」と、ワクワクできる幸せよ。
アサガオは、偉大だ。