視点変更のおもしろさ~2023年5月に読んだ本から
読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。5月は、2冊。
1 ラブカは静かに弓を持つ 安壇美緒
上司から、音楽教室への潜入調査を命じられた橘樹。著作権法違反の証拠をつかむためだ。
過去の あるできごとから、チェロから離れていた樹だが、音楽教室の 講師や仲間たちと ふれあうことで、変わっていく。自分の使命に心がゆれる。
法廷で証言しなければならない期日が、せまってきた。
潜入調査=スパイ。この役割は、どう考えてもつらい。
どうしたって、うそを重ねなければならないし、何よりも、周りの人々の優しさを感じるたびに罪悪感がわく。ばれた時の、恐ろしさに押しつぶされそうにもなるだろう。
「閉じた性格で あらゆる人付き合いが 得意ではない」樹が、講師や仲間たちとのふれあいの中で、だんだん変わっていく。そんな樹を、応援するような気持ちで読んでいたが、それと平行して、きっとスパイであることがばれる とドキドキしながら読んだ作品でもあった。
2 いつかの岸辺に跳ねていく 加納朋子
幼なじみの護と徹子。
護にとって徹子は「ワケ分かんなくて面白い」幼なじみ。
前半「フラット」は、護の視点の物語。後半「レリーフ」は徹子の視点の物語。
同じ出来事を、別の人物の視点で語るというお話は、いくつか読んだことがある。ひとつの出来事が、人によってこんなに見え方が違うのかと思うこともしばしば。
この本の前半は、護が「ちょっと変わった幼なじみ」について語る「The青春」の物語という印象だった。
が、後半、徹子視点に変わると、びっくりぽんぽん!
前半で語られたできごとが、全く違うものになっている。
徹子は、ただの「ちょっと変わった不思議ちゃん」では なかった。
親友をなんとか助けようとする、徹子のひとりぼっちの「闘い」に苦しさも覚えた。
(人生を何度もやり直して、友人たちを助けようとしたTV番組「ブラッシュアップライフ」が、心に浮かんだ)
でも、そこは加納朋子さん。ちゃんと落ち着くところに落ち着き、安心して読み終えることができた。
そして、最後の最後、伏線の回収がとってもすてき。
「夜眠る前、布団に入って」というのが、私の読書タイムのメインだ。
もちろん昼間も読んでいるが、一日の最後、「さあ、本を読もう」と思って布団に入るのが嬉しい。
寝落ちしてしまうことも多々あるが、「本を読んだまま眠れる」なんて、私にとっては、至福の時でもある。
ただ、最近どうも読めない。
眠くて、眠くて、長く読んでいられないのだ。
布団に入る時間が、遅くなっているわけでもないし、ましてや、昼間 ものすごく働いているわけでもない。
面白くて、早く続きを読みたいのに、気づいたらほとんど進まず、朝になっている。
もっと早く読めると思っていた文庫本が、えらく日にちがかかって 先日やっと読み終えた。
読み終えたのはいいのだが、結局、細切れで、時間もかかってしまったせいで、最後の最後、犯人が明らかになった時、「え?そんな人いた?誰だっけ?」と覚えていなかった。
ああ、時間をかけたら、読み終わるまでに登場人物を覚えていられない。
面白いとおもった本は、なおさら早く読まなくてはと思ったできごとだった。
読んでいただき ありがとうございました。