【まいぶっく05】「どきどき」と「わくわく」~ムンジャクンジュは毛虫じゃない
「ムンジャクンジュ」
なかなか1回で覚えられないこの名前。
「ムンジャなんとか」「ムンジャラカンジャ」「ムンジャクンジャ」???
「ムンジャクンジュ」って何?
生き物だ。
ふかふかして、やわらかそうな黒い毛におおわれている。
頭の方につのがついている。
その大きさは、
今日は、ピーナッツ。
次の日は、えんぴつのキャップ。
また次の日は、絵の具の白いチューブ。
またまた次の日は、ハツカネズミ
・・・・いったいどこまで大きくなるの??
この生き物が、町中を巻き込んだ大騒動をひきおこす。
* * * * *
1日、1日と時間を追って進んでいくこの話。
次は? 次は? え? 次は?と
どきどきしながら、すっかりひきこまれてしまった。
15日間の物語なのだが、途中でやめることなどもちろんできず、一気に読んでしまっていた。
3人の5年生が、こっそりアパートの物置でムンジャクンジュを育てる。
この子たちの観察力、生態に対する推理力、実験をして確かめるところ、
ピンチを機転をきかせて乗り越えるところ、わくわくしてしまう。
一緒に秘密を共有している気になる。
私もすっかり5年生。
担任の川村先生も、なかなかすてきだ。
クラスの子どもたちのちょっとした変化に気づけている。
みょうにうきうきしている。(遠足の前日のような感じ。)
いままでぽつんとしていた子のまわりにクラス中の女の子が集まって楽しそうに話し込んでいる。
あとでこの先生は、子どもたちの味方なる。かっこいい大人だ。
結末は意外にあっさりぽん。
「あれ?これで終わり?」
でもそこがいい。
実はこのお話、1度読んだ後、あえて2回目は読まなかった。
「もう1度読んだら、それほどおもしろくなかった。」ということになったら、いやだったから。
今回、初読みから23年たって2回目を読んでみた。
やっぱりおもしろかった。
良かった。
* * * * *
作者は岡田淳さん。「こそあどの森」シリーズや「びりっかすの神様」などたくさんの作品があるが、この「ムンジャクンジュ」が最初の単行本となる。
先日、クレヨンハウス大阪店で講演会が開かれた。Zoomで視聴できるというのを知り、すぐ申し込んでしまっていた。地方在住の私にとって、ものすごくありがたい催しだ。
最新刊「図書館からの冒険」がどうやってできたのか、その舞台裏についてお話してくださった。今もかわらず、「わくわくした心」と「情熱」をもってお話作りにあたられている岡田さんを感じることができた時間となった。
ムンジャクンジュは毛虫じゃない(A)
岡田 淳 作・絵
偕成社 1979年
(偕成社文庫 1993年)