心に代わって痛みを背負う~ZOOMで読書会 その27
27回目の「ZOOM読書会」。
学生時代の友人「🐰さわ」と 私「🐻くば」がそれぞれ 自分で決めたテーマに沿って 本を紹介しあいます。
過去の読書会はこちら
☆🐻くば☆
<テーマ>歯が痛い!
小さいころから歯が悪い私。しょっちゅう、歯医者さんに通っています。
今月は、歯医者さんが舞台、もしくは歯が痛い人が出てくるお話を選びました。
1 シンデレラ・ティース 坂木司
幼いころの恐い思いをしたため、歯医者が大嫌いになったサキ。大学2年生。
なぜか、歯医者で受付のアルバイトをすることになってしまう。
いろいろな患者さん、そして同僚にかこまれた時間は、サキに大きな影響を与える。
「日常の謎」を扱ったミステリーでもある。
1 いつもお供をつれてやってくる高齢の男性。態度の良いときと悪いときがあるのはなぜ?
2 すごく明るくて面倒見のよい人だったというのに、なぜか最近、不機嫌になったという患者。その原因は?
3 突然、押しかけてきた「クレーマー」。「彼女の治療が長引きすぎている、早く終わらせろ」と言うが・・・
舞台が歯医者ということで、身近に感じる。とんでもなく悪い人も出てこず、読みやすいお話。
2 太陽(「獣の夜」より)森絵都
ものすごい歯痛に見舞われた私は、予約がいらない歯医者を訪れた。
しかし医者は、その痛みは「歯」や「歯ぐき」が原因ではないという。
では、原因は? 治療法は?
歯痛の原因は「心」。
歯痛の原因をさぐっていく私。
「恋人と別れたこと」か? 違う。
他に心当たりは?
「週2で通っていた飲み屋でバカ話ができなくなったこと」
「3日に一回は隣人の「あああああ」という絶叫が聞こえること」
「実家から、『今は帰ってくるな』と電話がしょっちゅうくること」
全部違う。
原因は 意外なものだった。
「心」が不調の原因と聞いて、昔読んだ、夏樹静子さんの「椅子がこわい」を思い出した。
ひどい腰痛になり、いろいろな治療法を試していく体験を描いた話。
これも原因は「心」で、腰痛持ちの私は、「そんなことがあるのか!」と、当時ものすごく驚いたものだ。
だから、「心が歯痛を引き起こす」というのもすんなりおちた。
3 f植物園の巣穴 梨木香歩
主人公は植物園勤務。
痛む歯を一年以上放っておいたが、どうしようもなくなり、歯医者へ。
そこで働いていたのは、「犬」の姿の歯科医の妻。前世が犬で、忙しくてなりふりかまわなくなると、犬に戻るという。
梨木香歩さんの不思議ワールド全開!
元「犬」の歯科医の妻。ナマズ神父。奇妙な登場人物。
住んでいる下宿の話、勤務先の植物園、小さいころ面倒を見てくれた「ねえや」のこと、飼っていた犬のこと。ふわふわふわふわ 舞台がうつりかわる。
すっと読める話ではなく、ところどころ苦労したが、最後まで読みたいと思えた作品。
最後まで読むと、「ああ、そうだったのかあ」と腑に落ちた。
歯の治療の場面に、
というのがあった。
型取りの時、息が出来なくなりそうで、パニックになりそうなのは私もよくある。そのたび、「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせている。
さらに、型取りの時、いっしょに差し歯が抜けた経験もある。
それにしても、梨木さんはどこからこのような不思議な話を思いつくのか。このお話だけではなく、「沼地のある森を抜けて」なんて、まさにびっくりの3乗くらいの話だった。
🐰「歯が痛い」って、面白いテーマだね。
私も子どものころ、歯医者の床に寝転んでギャーギャー泣きわめいて、歯医者さんに怒られたことあるよ。そのせいか、ずっと歯医者に行けず、やっと大人になってから通うようになったよ。
🐻笑笑笑。でも、歯医者って昔ほど痛くないよね。これは大人になったからだけじゃなくて、治療法が進化しているからだろうね。
🐰梨木香歩さんて、なんか絵本あったよね。
🐻うんうん、「蟹なんとか」っていうちょっと不思議な絵本があった。
(「蟹塚縁起」)」
🐰そうそう、「ペンキや」とか。
「丹生都比売」も おもしろかった。
🐻うん、「丹生都比売」は小さくて、箱入りの本で大好きだったよ。
最近は、「ヤービ」のシリーズが好きで買ってるよ。
☆🐰さわ☆
<テーマ>大変だ!
大変な目にあっている人たち、でも、大変だけど明るいというのを基本に選んだ本です。
1 穴 HOLES ルイス・サッカー
主人公のスタンリーは冤罪で砂漠の青少年更生キャンプに送り込まれた。そこでは、ひたすら穴を掘り続けなければならない。過酷な環境の中、そこで生きていく術を考えて身に着けていく。なぜ、穴を掘るのかも明らかになっていく。そして、同じ班のゼロが脱走をしたことから、スタンリーの冒険が始まる。
理不尽としか言いようがない状況だが、その中で、スタンリーは、決してあきらめず、自分自身で活路を見出していく。
「えっ、そうだったの!」「こうきたか!」と、伏線がどんどん回収されていき、爽快感いっぱいで読み終えることができた。
2 家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった 岸田奈美
ダウン症の弟、車いすユーザーの母親、認知症の祖母、父親は、中学生の時に亡くなっている。どう考えてもヘビーな環境。その日々を明るく綴ったSNSが話題になって書籍化された。今年、NHKでドラマ化もされた。
とにかくバイタリティーがある。受験も就職も、行きたい!やりたい!と思ったら、とにかく突破しようと頑張る。理不尽なこと辛いことがあっても、いつまでも自分を憐れんでいない。読んでいてすごく元気が出た。
ドラマより原作の方がカラッとしている。ドラマも明るいのだけど、時々じめっとした重さを感じた。
3 無菌病棟より愛をこめて 加納朋子
急性白血病の告知を受け、突然の入院。5年生存率は3割。そのうえ、めったにいない珍しいタイプ。抗癌剤治療などの辛い闘病生活をいつか発表することも念頭に置きながら日記に綴っていく。
幸い、弟さんが100パーセントのドナーという幸運に恵まれ、骨髄移植手術も成功。現在では、執筆活動も行っている。
辛い闘病生活(その描写を読むだけで苦しくなった)のなかでも、髪の毛が抜けていくとき、竹中直人をライバル視していたり、様々な管につながれているのを「ひも女」と名付けたりなど くすっと笑える描写があって、全体的に明るい闘病記になっていた。
治療に関して、自分自身で詳しく調べていて 専門用語も豊富だったが、それを読むことで、医学の進歩は日進月歩なのだと感じられ、希望が持てた。(万が一自分がそういう状況になったとしたらと考えてだけど。)
🐻ルイス・サッカーの「穴」も読んだんだけど、いつも通り全く覚えていない。情けない。
🐰私も、忘れてた。でもたまたま図書館で見かけて、「あっ!この本 面白かったよな。好きな本だったよね」って読み直したらやっぱり面白かったよ。続編が「道」。
🐻そうそう、続編があったね。 確か「穴」と似たような表紙だったよ。
ここ何年か、「シルバー川柳」の本をよく読む。複数の出版社から、いろいろな「シルバー川柳」の本が出ているが、本の大きさ・字の大きさ それに加え さし絵も気に入っている ポプラ社のシリーズが好き。
先日、最新刊を図書館で借りてきた。
何度も爆笑してしまった一冊。
そうなのよ、同年代が何人か集まれば、必ず体調の話で盛り上がるのよ。
私の生活パターンも似たようなもの。早く起きるけど、昼寝はかかせない。
「シルバー川柳」の説明に、
とあった。「老い」を肯定的にとらえ、楽しめるって 幸せなことだと思う。