【19】コロナはピンチじゃなくチャンス
2ヶ月もの間、ほぼ毎日近所のカフェに入り浸り
自分の進むべき方向性を見出した。
カンボジアでの起業経験から
自分はビジネスを立ち上げる事も出来るし
現場に入って運営することも出来る。
必要なのは資金調達能力だった。
今までは資金調達能力がなかったため
パートナーから出資を受けて50%ずつ事業利益を
折半していた。パートナーは投資の配当よりも僕と
ビジネスをシェアしたいと長年サポートしてくれた。
そんなパートナーもコロナ禍で別のプロジェクトと
日本の事業に集中することになり帰国してしまった。
今ではある程度チカラがついたので
もし個人で投資家から資金を集める事が出来れば
100%自分のビジネスを持つ事が出来る。
なのでまずは資金調達能力を磨く。
しかし…
そもそもどうやったら投資して頂けるのか?
そこから解っていなかったので
自分が投資家だったらどういう人に投資したいか?
という視点で考えてみた。
魅力的な「投資案件」をベースにするのではなく
魅力的な「人」をベースに考える。
投資家さんからしてみても、
経済的にこのタイミングで投資を考える人は少ない。
調達のハードルは極めて高いだろうなと感じていた。
それでも
これからは自分だけの独立したビジネスを持つ。
これがこの先のひとつの指針だったので
思い切ってチャレンジして道を切り開くしかない。
いま一度状況を整理すると、現在はコロナ禍で
決してお店を出店するタイミングではない。
そして無理にこの時期にリスクを取る必要もない。
焦らずじっくりと投資家となり得る方を探しながら
実際にお会いした際にどのようにプレゼンするか?
などを練ることが何よりも先決だと考えた。
しかしながら
カンボジアで資金調達をするのは容易ではない。
やはり資金調達するなら日本がベストだ。
なぜ投資家なのかというと
僕は日本に事業や法人がある訳でもないので
銀行などから資金調達をすることが出来ない。
そのため投資家を探す必要があった。
投資家候補の顔ぶれは
昔からお世話になっている社長陣
以前ビジネスでカンボジアに視察に来られた方々
カンボジアにいる日本人の方からの紹介
その他、各人からの紹介など。
その殆んどが僕のやってきた事を知っている方
または応援してくださっている方々だ。
今まで現場だけをやってきた人間が
いきなり出資をお願いしたいと聞くと
少し怪しく感じるかもしれないが
現場を長年やり続けてきたからこそ
その分の信用クレジットが貯まっている。
という事に気がついた。
それだけアポイントを頂戴する段階で
日本でお会いしてくださる方が多かったのだ。
資金を出す気がなかったら時間の無駄だし
このコロナ禍で人に会いたくないだろう。
それにも関わらず多くのアポイントを頂戴できた。
ちなみに普通であれば資金調達の際には
事業計画書などを用意するのが一般的だ。
しかし僕は一切書かなかった。
刻一刻と変わる状況の中で
やりたい事業を決めかねていたというのもあるが、
あくまでセルフブランディングで資金調達をしたい。
自分が7年間やってきた事を自分の魅力に変えて
自分自身に資金を投資してくださるようプレゼンする。
一般的にはあり得ない話だ。
特に紹介でお会いする初対面の人にはだ。
もちろん多少のプレゼン資料は用意した。
しかしそこに時間は割かなかった。
セルフブランディングを徹底することで
失いかけた「個の自信」を取り戻す。
カンボジアに来てから今までチャレンジしてきた事、
その中で結果もたくさん残してきた。
今の自分の価値はどれくらいあるのだろう?
だからこそ魅力的な投資案件ではなくて
自分自身に投資してくれる方を探していた。
そしてある程度すべき事が固まったので
2021年4月に日本に一時帰国することにした。
少し話は前後するが
ホテルを二足三文で売却したのが2020年の9月。
その後、首都プノンペンに移動して
とある日本人の方の事業を手伝っていた。
彼はカンボジア人のビジネスパートナーと共に
マイクロファイナンスや不動産業を営んでいる。
前に記事にした事があるが、
カンボジア人との合弁会社であれば
土地も購入する事が出来る。
僕は店舗を持つビジネスしかやった事がなかったので
コロナ禍でも影響を受けづらい店舗を持たない業種
というのに興味があった。
コロナ禍で店舗を持つことは観光業がメインの
カンボジアでは現状はリスクの方が強いし、
今まで経験した事のない業種を知る良い機会だなと考え微力ながら手伝わせていただいた。
どのように物事を見るか?
これによって人の考え方は変わるが、
僕が感じたのは、これらの業種にとってコロナ禍は
ピンチではなくチャンスになっている。
という事だった。
不動産というのは一般的に
人が「売りたい」と思った時に買って
「買いたい」と思った時に売るのがベストだ。
経済の発展による地価の上昇だけではなく
マーケットニーズがそこに存在する。
要は需要と供給だ。
コロナ禍によりカンボジアで何が起きたかというと
観光系の業種はもちろん厳しい状況に追い込まれたが
その他にも事業が上手くいかなくなったりで
現金収入が減ったり、なくなった人が増えてしまった。
何かプロジェクトを進行していた人は
母体が資金不足に陥ったりして建設などが止まった。
ここまではどこの国も一緒だと思う。
大きく異なるのは
日本は企業にも個人にも政府からのサポートがあるが
カンボジアは全くと言っていいほど支援がない。
なので職もお金もなくなってしまった人が増えたのだ。
こうなると銀行などからお金を借りるのが一般的だが
個人の信用調査の問題で銀行口座を持てない人も
まだまだ多い。
銀行のローンも簡単には通らない。
そうするとどうなるか?
人は資産を手放して現金化しようとする。
土地などを二足三文で手放すのだ。
こうなると相場よりも信じられないほど安値で
土地の購入が実現出来てしまう。
カンボジアの経済は伸び続けているので
このコロナ禍を除けば地価は自然と上昇を続ける。
これを理解していれば、そして資本に余裕があれば、
今後開発が進むであろうエリアをピックして、
条件の良い土地を仕入れるベストなタイミングに
変わるのだ。
彼のパートナーは政府関係者とも親しいため
今後の都市計画などが驚くほど早く手に入る。
これによって例えばだが、
どこに橋が架かるのかだったり
どこに新しい空港が出来るのかが分かったりする。
「情報」とは正しいものであれば
これほどお金に変わるものはない。
日本でならインサイダー取引になりそうだが
カンボジアでのこのケースはそれに該当しないようだ。
そもそもインサイダーとか存在しない気がする。
ただ安いから、そして地主が現金化したいから
という理由で土地を買うのではなく、
開発マップに沿って価値ある土地を安く買う。
これが極めて重要で大変勉強になった。
買った土地は寝かせるだけのものもあれば
開発を入れるものもある。
土地のサイズやエリアの開発状況によって
その判断を変えていた。
僕も実際にいくつか土地を見に行ったり
購入する際に同行させて頂いた。
大規模な都市開発が入る事が分かっていたので
購入した土地。
購入してから数週間後に首相が都市開発の発表を行い
地価が一気に跳ね上がった。
地主がどうしても現金化したいという理由で
購入した土地なので元の相場よりも安く購入できた。
値下げが容易に出来るタイミングで購入して
購入後すぐに値上がるのだから儲からない訳がない。
こちらはシェムリアップ近郊に新しく出来る空港の
近くの土地。というか道路を渡って反対側。
少し見にくいが赤丸をつけた白いクイは
50m間隔で置かれている高速道路の建設予定地だ。
この高速道路がシェムリアップ市内まで
伸びる予定らしい。
コロナはピンチではなくビジネスチャンスだ。
それを目の当たりにした瞬間だった。
先ほど挙げたもう一つのビジネスが
マイクロファイナンスと呼ばれる金融機関だ。
マイクロファイナンスとは
2006年度にノーベル平和賞を受賞した
ムハマド・ユヌス氏が創設したグラミン銀行発案の
「低所得者向け小口融資」の総称。
ムハマド・ユヌス氏
要は一般市民にお金を貸し出す機関で
東南アジアではメジャーな存在だ。
マイクロファイナンスの意義は貧困層を減らすと
同時に、融資を受けた人の「社会的自立」を促す事。
つまりはお金を貸す際に仕事も紹介することで
返済リスクが軽減されるので双方良しというものだ。
先ほど書いた事と重複してしまうが、
個人の信用調査において銀行から資金を借入出来る
人の割合が、日本をはじめとした先進国に比べて
非常に少ないのが、カンボジアに限らず
東南アジア全体の問題だ。
銀行口座を持っていない人もまだまだ多く、
その中で不動産など現金化出来る資産を所有して
いない人はマイクロファイナンスなどの金融機関から
資金を借りるなどの方法が一般的だ。
もちろん銀行に比べて金利は割高だ。
悪く言えば日本のサラ金のような感じはあるが
国民に受け入れられていて雇用制度などもある。
日本よりも借りる金額は小さいケースが多く
例えば冷蔵庫を買いたいとかケータイを買いたい
などの用途にも使われる。
こちらも同様にコロナ禍で職を失ったり減給されて
しまった人たちによって急激に需要が高まった。
金額によりマイクロファイナンスは「担保」を要する。
小口融資の場合はバイクや車などが担保となるが、
額が大きくなると担保は土地に変わる事が多い。
返済が長期間滞ったりすると契約上担保が没収となる。
これが大きなリスクヘッジとなり
極めて高い返済率の維持にも繋がっている。
このような業種も同様に考え方によっては
コロナ禍はピンチでなくビジネスチャンスとなり得る。
これは新しい着眼点で日本に帰国する際に
プラス思考の面白い話ができるなと感じた。
つづく…
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