「終末のフール」伊坂幸太郎さん(読書感想文)(*ネタばれ注意)
「世界が終わりを告げる前の人間群像8話」
圧倒的なクオリティです。
↑ 本の帯?に書いてあったフレーズ。
まさに、まさに。
ほんまにすごいね、伊坂さん。
あと、8年で、小惑星が
地球にぶつかるというストーリー。
最初の5年に荒れ放題。
殺人、自殺、強盗。
でも、いったん落ち着くと、
台風の目みたいになって
安定感というか、気分の落ち着いた
穏やかな人だけが残っている
3年間を描いている。
穏やかな人々のほとんどが
家族を失っている。
でも、もう、達観している
ような視点。
8話が、それぞれ、微妙にふれあい、
つながり、全体的な世界を
作り出している。
もはや、登場人物たちにとって、
世界の滅亡は
それほど意味を成していない。
今、いかに生きるかのみ。
それがとても潔く感じた。
【再読】
(ここから先は、モロ、ネタばれです)
二度目の読破。
・・・というのも、
私がこの本を勧めた人に、
「とりあえず、ビデオの延滞は、
しないようにします」
と言われ、まったく本の内容が、
思い出せなかったから
ストーリー書いておこう、と。
① 終末のフール
10年前に自殺した和也。
父親はずっと息子を
バカにしていて、
それを妻(静江)、娘(康子)も、
許せないが、終末の3年前、
康子が仙台に戻ってきて、
和也の「魔物」(甲子園)を
思い出して、笑う話。
でも、父は許せない、と。
② 太陽のシール
優柔不断な夫、桜庭富士夫と
妻の美咲に今更子供ができた、
という話。
ここで、サッカー・チームで一緒の、
土屋さんの子供「リキ」が、
体が不自由で、隕石に感謝している
と聞いて、
(子供の将来を案じなくていいから)
美咲の出産に賛成する。
③ 籠城のビール
アナウンサーと、そいつのせいで、
妹と母を自殺に追い込まれた
兄弟の話。
そこに、仕返しに行ったら、
兄弟たちに怯え泣きながらも、
食事を続けようとする家族。
なんと、もともと、
アナウンサー一家は
自殺するところで、食事に
毒が入っていた。
④ 冬眠ガール
父母が死んで、父の蔵書4000冊?を
読み終えて、外に出る美智という
女の子の話。
⑤ 鋼鉄のウール
苗場さんというボクサーに
あこがれる「ぼく」の話。
終末に、自分にできることを
やっている男のロマン。
⑥ 天体のヨール
妻・千鶴を殺された矢部は、
自殺の最中、大学時代の
二ノ宮に会う。
天体ロマン?
でも、結局、矢部は自死する。
⑦ 演劇のオール
「孫」「姉」「母」「恋人」
を演じる主人公。
でも、最後にみんな集まっちゃう。
⑧ 深海のポール
ビデオ屋の店主・渡部と
変わった父(やぐらを作っている人)と
家族の話。
ビデオ延滞の客に、100万請求する
ジョークあり。
(これが、ビデオ延滞のネタだった!!)
最後に①~⑧までの、
ヒルズマンションの住人が、
マンションのベランダから空を見てる。
世界の終わりに達観した人々の姿が
清々しい。