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n=1に大切にする。ある生徒のお話。

 通信制高校のサポート校・CAP高等学院を運営している佐藤裕幸です。高校生と社会の間にある(と勝手に思われている)様々な垣根を壊し、新しい学びのインフラを構築することをミッションにサポート校を始めて4年目になりました。CAP高等学院には,通信制高校サポート校の他,オンライン個人指導部もあります。
 また、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」(https://business-book.jp/result)で総合グランプリを受賞した、『シン・ニホン』(安宅和人著)の認定公式アンバサダーをしていたり、教育系の出版社である増進堂・受験研究社の客員研究員をしています。福井県立高校の教員研修の講師を始めて3年目になりました。一昨年の9月から、青山学院大学地球社会共生学部の松永エリック・匡史ゼミのアドバイザーもすることになりました。また、昨年の4月にコスモピア株式会社さんから出版された『生徒一人ひとりのSDGs社会論』において,「一人ひとりの生徒と向き合う:自分事から自分たち事への気づき」というタイトルで、CAP高等学院や過去に勤務した私立高校におけるの生徒の取り組みについて書かせていただきました。


CAP高等学院に入校し,まもなく2年目を終える一人の生徒のこれまでを振り返る

 これから書く生徒の話は、「CAP高等学院に入ると、こういう生徒に成長しますよ!」のような宣伝的なものではありません。あくまでもn=1として、皆さんに紹介したいだけです。この生徒の心の動きを備忘録的に記事として残しておきたいという僕の個人的な思いのみで書いたものということを最初にお伝えしておきます。

「将来何になりたいか」をみんなの前で発表させられるのが嫌だった小学校時代

 小学生の頃。「将来何になりたいか?」を書かせられ、教室の後ろに掲示されるのがとても嫌でした。書かせられる“何”は職業だったことに,幼いながら違和感しかなかった。「私そんなに仕事知らないし、お父さん・お母さんがしている仕事にはそれほど興味がなかったから。」
 
別に、憧れの職業を書いている友だちのことを悪く思っていたわけでもないし、むしろ「⚪︎⚪︎ちゃんはもうやりたいことが決まっていてすごいなぁ」とさえ思っていました。しかし、「私とはちょっと違うな。私は毎日楽しければいい。」と思って日々の時間を過ごしていました。ただ、「将来決まっていない人もいるんだよ!」ということを理解してくれて、教室に掲示するのだけはやめてほしいと感じていました。

高校進学という現実を突きつけられて戸惑う私

 中学生になっても、私の「将来何になりたいか?」問題は全く解決していませんでした。むしろ、小学校時代にはなかった定期考査の結果を返却されるときに、「このままだと高校選べないぞぉ!」と言われるたびに、「それって私がどう生きたいかと全く関係ないことじゃない?」と思うようになり、「別に高校なんか行きたくない」とさえ思うようになってきました。
 それでも家族からは、「せめて高校くらい出ておかないと、将来苦労するよ」と言われ続け、興味の持てそうな高校の説明会に参加するも、イマイチピンとくるものがなく、「本当にやばいのかなぁ…」と悶々としていました。
 そんなある日、兄が「僕がオンラインで個人指導をしてもらっている佐藤先生の通信制高校はどうかな?授業は全てオンラインだから、無理に学校に行かなくてもいいし」と言ってきたので、「えっ!学校行かなくていいってどういうこと?」と不思議に思い、とりあえず話だけでも聞いてみようと思って、オンラインで面談をしたのが、CAP高等学院と佐藤先生との出会いとなりました。

高校の説明会に参加してみるも…

面談の際の質問にビックリする私

 兄がいつも楽しそうにオンラインで授業を受けているのを傍で見ていて、なんとなく気になってはいました。しかも聞こえてくる授業中の会話が、数学と全く関係のないテクノロジーの話や、イベントの話。「あれ?お兄ちゃんって数学習っているんじゃなかった?」と不思議な気持ちになっていました。
 そして、いよいよ面談の日。最初に言われたのが、「学校生活楽しいですか?」です。反射的に「あまり楽しくないです」と言うと、「楽しくないのは誰のせいだと思います?」とまた質問。「授業はずっと話を聞いているだけのものもあれば、急に生徒任せで何もしない先生もいるし、何をしようとしているのかわからないんです」と答えると、「その状況を変えるのに自分では何かしましたか?」とまた質問。こんな感じのやり取りを15分くらいしていました。
 そのやりとりが終わった後に、「これまで自分が今思っていることをこれだけ話したことはありますか?」と訊かれた時に、「あっ、自分は思っているだけで何も口にしてなかったんだ」と気づきました。

オンライン面談でやり取りをしながら得た気づき

「話してくれたことおそらく全部叶えられるよ」と言ってもらい決意する

 面談の最後に、「今日はいろいろ話してくれてありがとうございました。CAP高等学院に所属するかは、自分の意思で決めればいいと思います。ただ、これまで話してくれたことは、おそらく全部叶えられるよ。なぜなら、叶えるのは僕じゃなくて、あなた自身なので。僕は、そのための選択肢を用意したり、必要に応じてサポートするだけです」と言われた時に、「全部自分で決めていいんだ!」と思わず嬉しくなり、入校することをほぼ決めました。
 それでも佐藤先生は、「新入学までは時間があるから、そこまでまずは個人指導で授業を受けてみますか?」と尋ねてきたので、「はいお願いします」と返事をし、オンライン個人指導が始まりました。

地力を問われる授業

 個人指導の授業が始まると、すぐに実感したのが「地力を求められること」でした。これまで全く勉強に興味がなかった私ですが、佐藤先生は私を信じている感じで接してきます。わからないことがあったら、とにかくいろんな手段で調べたか?それでもわからないことがあった時に、授業で質問する感じです。そこまでしっかり取り組んでくれると信じてもらっている感じがするので、質問も具体的になってきました。
 具体的になってくると、ちょっとのヒントで自分もわかるようになり、「勉強面白いかも…」と思うようになってきました。また、学んでいることに関係するようなニュースや出来事なども話してくれるので、それはそれで面白い。ただ、たまに先生が興味あることと重なると、結構熱が入ってなかなか元に戻らないこともありますが…

CAP高等学院入学後の学習

 CAP高等学院は単位制通信制高校のサポート校なので、基本的には履修登録した授業について、NHK高校講座またはDVDを視聴し、それに関する視聴票を自力で作成し、同時に購入した教科書に関するレポートとともに提出をすれば問題ありません。ただ、それを自分で計画的に進めるのは難しいかもしれません。私は、1年生のときは、それを個人指導の授業の中で先生と一緒に画面共有で講座やDVDを一緒に視聴し、先生がチャットで呟く内容を参考にしながら、視聴票をまとめました。おかげさまで、思ったよりも全然早く全ての科目を終わらせることができました。それと同時に、1年生で身につけた学習方法を使って、2年生では全て自力で視聴票とレポートを仕上げることができるようになりました。全ての履修科目を半年で終わらせることができたのは結構自信になっています。

課外活動の充実

 部活動や課外授業みたいなものは全くないですが、私は課外活動をかなり充実させることができました。
 CAP高等学院からは、高校生が参加できそうなさまざまなイベント情報を調べてくれて、その内容が伝えられます。もちろん全部に参加する必要はなく、自分が参加したいと思うものを自分で申し込む形です。最初は何を選ぼうか迷うこともありましたが、そんな時も、佐藤先生に相談すると「これはおそらくこういう感じだと思うよ」と考える手掛かりみたいなものを話してくれるので、参考にして参加申し込みもしました。それも繰り返しているうちに自分でしっかり選べるようになったのはよかったです。

参加したイベントで変わっていく心境の変化

 その課外活動の充実として参加したイベント等を挙げると以下の通りです。

  1. 夏休みに参加したカナダでの語学サマープログラム

  2. 歌やダンス、演技のワークショップ後、英語でのショー絵お作り上げて発表する「HEART Global Music Outreach in Shirakawa」への参加

  3. 「グローバルキャリア探究キャンパスCROSS BRIDGE」への参加

  4. 地域と密着した活動体験ができる「村おこしボランティア・三陸漁場コース」への参加

  5. 「CROSS BRIDGE」プレゼンテーション会で知り合った「高校生が伝えるふくしま人ものがたり」のスタッフの方に誘われた「人ものがたり創刊号、土湯の男たちの物語」の編集委員として、土湯温泉の経営者たちへのインタビュー実施

  6. カナダでの2年間の留学開始(現在も留学中)

夏休みに参加したカナダでの語学サマープログラム

 中学校に通っている頃は、自分の気持ちをどうしても正直に話すことができず、人見知りだった私は、正直この決断をするのにかなりの勇気が必要でした。しかし、せっかく他の同級生とは違う通信制高校への入学を選んだ以上は、これまでの自分とは違う選択をしてみたいと思い、「とりあえず行ってみたら?」と言いながら、紹介してくれた佐藤先生の言葉に乗せられて、決意をしました。
 驚きは、行きの飛行機に乗った時から始まりました。荷物を棚の上に上げるのに苦労していると、隣の席のカナダ人(と思われる)方が、そっと立ち上がり、「手伝うよ」と声をかけてくれました。あまりにも自然に何の躊躇いもなく手を貸してくれたことに、「日本で感じる優しさとはどこか違う」と直感的に思いました。
 それは、カナダについてからも同じで、ホストファミリーの方や、さm〜プログラムに参加している様々な国の人たちからも、様々な優しさの形があり、「ずっと日本にいたら、こんなことには気づかなかった」と思いました。
 また、私が住んでいる所の近くには海がないのですが、私は海を見るのが好きなので、カナダの生活に少し疲れてきた頃に、何度か海を見に行きました。カナダで見る海の景色は日本で見るのとは違っていて、ごく当たり前のことですが、「場所によってこんなに海の表情は違うんだ」と思いながら、いつの間にか海に癒されている自分に気づき、「海に関係する仕事って何だろう?」と考えるようになっていました。

ホストファミリーと一緒に

「HEART Global Music Outreach in Shirakawa」への参加

 カナダからの帰国後、せっかくカナダで学んできた英語を使う機会もあまりないまま、数ヶ月が過ぎていった頃、佐藤先生から紹介されたのが、「HEART Global Music Outreach in Shirakawa」でした。ヤングアメリカンズの教育プログラムを作り上げてきたメンバーが新たに設立した表現教育団体とのことで、英語でショーを表現することから、英語を使う機会としてはちょうどいいと思って参加することにしました。ワークショップに参加しているうちに何か新しいものが芽生えてきた感じで、これまで人前で何かを表現するなんて、人見知りの私には考えられないことでしたが、ショーの中ではそのパートまで任されました。「人間変わろうと思えば変われるんだなぁ」を実感しました。

ワークショップ後のショーの様子

「グローバルキャリア探究キャンパスCROSS BRIDGE 」への参加

 プログラムを通じて海外の社会課題と接点を持ち、探究心を育みながらその解決に取り組むロールモデルとの出会いや自分自身のキャリアの可能性を広げるプログラムと謳われていたこのイベントは、インターネットを通じて何となく見つけたものでした。
 カナダへ行った時に感じた優しさの違いや、カナダの海を見て感じた漠然とした海への思いなど、間にか引っかかるものを感じつつ、それでもうまく言語化できていない自分にもどかしさを覚えていた時に、このプログラムを紹介している記事に出会い、直感的に参加したいと思い申し込みました。
 現地訪問型セクションでは同じ福島県の南相馬を訪れ、同じ福島県で過ごしながら、どことなく遠くに感じていた原子力発電所の事故のことや、現地に住む人たちの思いに触れながら、海の恐ろしさを痛感できたことは、私の海に対する思いをまた違う角度から見ることができた貴重な経験になりました。

プログラムで学んだことをプレゼンテーション

「村おこしボランティア・三陸漁場コース」への参加

 これも佐藤先生がお知り合いの方に紹介してもらったイベントです。私が海に関心があることは授業などを通じてずっと伝えていたので、そのことを気にかけてくれていたらしく、東日本大震災で多大な被害を受けた女川に住んでいる友人に問い合わせてくれて、その友人の方が探してくれたものでした。
 申込サイトを見ると、地元の漁師さんや市場で働いている方々のお仕事を手伝いながら、海に関係する仕事を体験するのはもちろん、ダイビングのライセンスも取得できるという楽しみすぎる内容だったので、すぐに申し込みました。
 このイベントへの参加は私にとってとても大きな体験でした。まずは、地元の方々のお仕事のお手伝い。ワカメの芯抜きという作業をしました。作業をするおばあちゃんたちと楽しく会話をしながら、黙々と芯抜きをしていきますが、「こういう作業が私たちの何気ない日常生活を支えているんだなぁ」と感じた時に、もっと日常の生活の中にやりがいや楽しみ、そして何かしらの課題があるのでは?と考えるきっかけになりました。
 そして、もう一つはダイビングライセンス取得。初日に海に潜った時に眼前に広がる海の暗闇にとても強い恐怖を感じました。「この先に進んだら、もしかしたら戻って来れないかも」と。しかしながら2日目に同じ状況になった時に、なぜか「この先に進む勇気が持てたら私は何かが変わる!」と直感的に思い、前に進んだ先にこれまで見たことがない美しい光景に出会い、「生きていくってこういうことかも!」という感情に揺り動かされました。よく「一歩踏み出す勇気」と言われますが、私はこの時に体感したように思います。

三陸の方々の日常
自分の気持ちが明らかに変化したダイビング体験

「人ものがたり創刊号、土湯の男たちの物語」の編集委員として、土湯温泉の経営者たちへのインタビュー実施

 「CROSS BRIDGE」で声をかけてくださった「高校生が伝えるふくしま人ものがたり」の方のお誘いで、福島市にある土湯温泉に行き、旅館を経営する3人の旅館経営者にインタビューをし、創刊号発刊に関わることができました。同じ福島に住んでいても、全くわからないことばかりで、根拠もないまま福島にはあまり魅力がないと勝手に思っていましたが、“人”を通じてその場所を知るという新しい発見ができたことはとても貴重な経験でしたし、福島をもっと知りたいと思うことができました。

参加した他の高校生との打ち合わせ

カナダ留学の決断と留学開始

 中学校時代までの私は、人見知りでどちらかというと人と関わるのがあまり得意ではありませんでした。人に優しくされても、「なぜこの人はこんなに優しくしてくれるんだろう?」とどこかで何かを疑っている自分がいて、素直にその優しさを受け止められない自分がいました。
 また、“みんな”という感覚がどうしても好きになれずに、人と同じことをするというのがどうしても苦手でした。
 しかし、通信制高校というこれまでとは全く環境の違うところに自分を置き、自分の責任で選択することをしてみると、どうしても人に頼らないといけない部分が出てきて、勇気を持ってお願いすることも必要になってきます。その時に初めて人が優しくしてくれることの意味を知ることができました。そして、「もっと何か自分にできることはないか?」と考えた時に、改めて佐藤先生に相談しました。
 佐藤先生はまた色々と調べてくれて、「去年行ったカナダならば、英語でコミュニケーションができるようになると、役所でボランティア活動を紹介してくれるようだよ。自分でやりたいことを探せる環境があるのはとてもいいと思うよ。」「それに視聴票とレポートは9月までに8割以上仕上げられるし、NHK高校講座も海外で見ることができるし、残りの視聴票とレポートはエアメールでも送れる。そうなれば日本の高校卒業資格とカナダの卒業資格両方取ることができるよ。やってみる価値はありそうだね」と話してくれました。
 そして現在、カナダのセカンダリースクールで2年間の留学生活が始まっています。

留学生活が始まる初日に出会った高校生との1枚

よく言われること

 今回の記事は、生徒へのロングインタビューを基に、できるだけ忠実に再現したものです。そして、こういう具体的なことを紹介すると、「この生徒は特別だからできたことですよね」と言われることがよくあります。
 確かに、単に一つの具体例かもしれませんし、本当に誰でもできることでもないかもしれません。
 しかしながら、この生徒さんが本当に特別だったかというと、決してそうではありません。むしろ、自分に自信がなくて、どちらかと言うと普段はネガティブに物事を考えてしまう生徒です。でも、そういう生徒さんが何かをきっかけにマインドセットがかわり、何かに臨もうとすることはわかってもらえたらなと思います。

最後に

 一般社団法人CAP高等学院は、広域性通信制高校・鹿島山北高等学校提携のサポート校です。教室を持たず完全オンラインで最適・最速の単位取得を実現し、空いた時間を生徒が自分のやりたいことを見つけるための活動に使ってもらっています。
 1日6〜7時間、机の前に座り先生の話を聞くだけの授業は一切ありません。自分の学びは自分で決めることができます。
 確かに自分の責任のもとで学びを進めるのは、不安しかないと思います。しかし、そこはもちろん代表である私・佐藤が伴走者として、生徒とともに学んでいきますし、一人ひとりの生徒さんにとって最も大切なことを発見していくように見ていきます。
 中学校3年生にとってはいよいよ進学先を決める入試が控えています。また、現在高校に通ってはいるものの、年度末になり「このままでいいのだろうか?」と漠然とモヤモヤしている高校生もいるかと思います。
 さらに、お子さんを見ていて、どことなく不安を感じている保護者の方もいるでしょう。
 もしそういう悩みやモヤモヤがあるようでしたら、いつでもCAP高等学院のホームページにアクセスして、お問い合わせください。入校するしない関係なく、ご相談を受け付けます。
 お問い合わせは、私の個人メールhiro.sato@caphighschool.com二でも構いません。

 
 

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