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まだまだ教育の中でAIを活用している状況は一握り。だからこそ二番煎じでも三番煎じでもいいから、AIを教育の中に取り入れて、生徒たちの才能と情熱を解き放とう!
一般社団法人CAP高等学院の代表理事をしています佐藤裕幸です。CAP高等学院は広域性通信制高校である鹿島山北高等学校と提携しているサポート校で、高校卒業に必要な単位を所属する生徒さんに最適な形で取得をしてもらうためにサポートをする一方、時間割がないオンライン上の学校にすることで、生徒さんの情熱と才能を解き放ち、自分の在り方を考えてもらっています。
そのCAP高等学院を運営しながら、他には増進堂・受験研究社の客員研究員として問題集の作問や編集などをしたり、青山学院大学地球社会共生学部の松永エリックゼミで、アドバイザーをしたりもしています。一昨年は4月に刊行された『生徒一人ひとりのSDGs社会論』や10月に刊行された『学びとビーイング〜学校内の場づくり、外とつながる場づくり』に寄稿しました。また、今年度から東京にある上野学園中学・高等学校や岡山にある岡山理科大学附属高等学校など複数の中学・高校で「自分丸わかりチャレンジ」という講座をすることになりました。
そして、昨年11月18日からは広島県福山市にある英数学館で久々の現場復帰もすることとなりました。
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最近はよくX(旧Twitter)でAIに関する情報を集めています。特に昨年末のChatGPTのアップデートや新しいAIの出現など、目を見張るものがあったので、何か活用できるものはないかと考えながら、眺めています。
そこで今回は、AIの教育現場での活用について、いつものように僕なりの考えを徒然なるままに書いていこうと思います。
Instagramからの大発表!!
先日、Instagramが新しい動画編集アプリ“Edits”を発表しました。
これ、TikTokの動画編集アプリ「CapCut」にホントよく似ています。でも、そこが結構大きなポイントと思っています。Instagramらしい、いい感じの二番煎じなんですよ。
実は、Instagramのこういったやりかたはスレッズでもありました。Xが色々と変更を重ねているタイミングで発表して、一気にユーザー数を伸ばしました。その時の流れに乗ってスレッズをインストールした人も多いのではないでしょうか?(僕もその一人です…)
“二番煎じ”は価値がない??
そういえば、2009年、民主党政権時に行われた「事業仕分け」の中で、当時参議院議員だった蓮舫さんが「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言されたことが話題になりました。
今回の“Edits”はある意味“二番煎じ”の極みみたいなものです。だからといって、「二番煎じだから価値がない」なんて、言えるのでしょうか?
僕は、全然そんなことはないと思っています。むしろ、タイミングを見極めて、自分たちらしく改良を加えて展開する。これって、すごくスマートだと思うのですが、いかがでしょう?
例えば、Uber Eatsは「配達」と「スマートフォンアプリ」という既存の要素を組み合わせ、そこにAIによる配達ルート最適化を加えることで、全く新しい価値を生み出しました。しかも、システムの構築にはほとんど自前のものは使っておらず、既成のシステムを利用して構築しているんですよね。
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教育現場でのAI活用について
令和6年12月26日、文部科学省から「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」が公表されました。その中で、k活用に関する基本的な考え方は、次のようにまとめられます。
人間中心のAI利活用
生成AIは人間の能力を補助し可能性を広げる道具であり、出力は参考の一つとして人間の判断が必要。資質・能力の育成
生成AIは学習指導要領に示された資質・能力(知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力)を育成する補助ツールとして活用。情報活用能力の強化
生成AIが社会で果たす役割や影響を理解し、適切な利用方法やリスク対策を学ぶ。
今、教育現場でAIを取り入れている学校はまだほんの一握りです。特に地方の学校では、AIの活用どころか、基本的なICT環境の整備すらままならないところも少なくありません。
しかし、上記の基本的な考え方にもあるように、「生成AIが社会で果たす役割や影響を理解し、適切な利用を学ぶ」とあり、ツールとして利用することは、生徒たちも社会の一員である以上、必要不可欠なことと個人的には考えます。
そして、今の状況はInstagramの例のように、むしろチャンスなんだとも考えられます。
この記事を書いているときに…
この記事を書いている最中に、次のようなニュースが入ってきました。
ここまでAIの精度が上がってくると、単に知識を伝えるような授業にはほぼ意味がなくなることを示唆しています。だからと言って、単にAIの使用を規制するというのは意味がないこともわかりますよね。
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僕のちょっとしたAI活用法
最近僕は、授業の中で、従来の「生徒同士の学び合い」と「AIとの対話」を組み合わせることで、驚くほど効果的な学習環境が作れるようになりました。普段から一緒に学校生活を送っているクラスメイト同士ですと、対話の安心・安全は確保されているものの、徐々に思考が似てくることになり、どうしても新しい発想が生まれにくくなったり、どこかで妥協のようなものが生まれてきます。そのような時に、AIを活用し、自分たちだけでは生まれないような要素を投げ込んでもらうことで、生徒同士の対話にも新しい風を吹き込むことができます。
しかも、同じプロンプト(生成AIに何かしてほしいことを伝えるための「指示文」や「質問」のようなもの)を入力しても、出力される内容が微妙に違っていたりすると、それはそれで生徒たちも面白がり、より対話が活発化します。
先日の授業の中で、芥川龍之介『羅生門』について、その中で描かれている状況などを生成AIで検索してもらった後に、画像生成をしてもらったところ、色使いは近くても、羅生門自体は違ったものが出力されていたので、授業の中でも盛り上がりました。それをきっかけにして、文章自体にも関心を持ってもらえたのは、大きな収穫でした。
僕なりのAI活用の提案
僕は通信制高校のサポート校を運営しながら全日制の学校にも所属していますが、そこで感じるのは、今の教育現場には「我慢と犠牲」が多すぎるということ。先生たちは日々の業務や教材研究、部活動の指導に追われ、生徒たちは課題に追われ、みんながみんな疲弊しています。
しかし、こうした既存の教育活動にAIを掛け合わせることで、状況を大きく変えられる可能性があるのではないかと。
例えば…
1.教材作成+AI支援で、生徒の理解度に合わせた効果的な教材開発
2.部活動指導+AI動作解析で、より効果的な技術指導
3.生徒の作品・レポート+AI分析で、より詳細なフィードバック提供
のような活用で、効率的かつ効果的な結果をもたらすことができそうです。
でも…
「でもうちの学校には予算がない」「AIなんて使いこなせない」
そういう声が聞こえてきそうですが、それは違います。
今やChatGPTのような無料で使えるAIツールもたくさんあります。完璧を目指す必要はありません。できることから、小さく始めればいいんです。
そして何よりも重要なことは、テクノロジーの進歩は、人間を便利に楽にするためのものということを理解することです。
例えば、「生成AIにどんな指示や質問をしていいかわからないから、使えない」という方もいるかもしれませんが、インターネット上には、さまざまなプロンプトを無料で提供してくれる方がたくさんいます。また、“ChatGPT”は名前にもあるように、“Chat(おしゃべり)”です。ちょっとしたことを質問しながら、何度も会話をしていくうちに、自分で欲しい回答が得られるようになりますし、徐々に質問の仕方も感覚的に身についてきます。思っている以上にハードルは高くないですよ。
特に地方の学校こそ、今がチャンスです。都会の学校に比べて環境は厳しいかもしれません。でも、だからこそ、工夫次第でAIを活用した教育改革で一気に追いつき、追い越すことだってできるはずです。「ファーストペンギン」という言葉がありますが、「セカンドペンギン」でいいと思います。
そして、必ずしもゼロから新しいものを作る必要もない。既存の良いものを掛け合わせ、そこにAIという新しい要素を加えることで、十分にイノベーティブな教育が実現できるんです。
僕自身も完璧に使いこなせているとは言えません。試行錯誤の連続です。でも、その一歩を踏み出したことで、生徒の変化も授業の内容も確実に変化しています。
最後に
生徒たちの才能と情熱を解き放つため、そして先生たちがもっと本質的な教育活動に時間を使えるようにするため、今こそAIを教育に取り入れるときなのではと思っています。
大河の流れも一滴の雫から始まるように、一人ひとりの小さな一歩が、やがて教育を大きく変えていく流れになるはずです。まだその流れは小さな川かもしれません。でも、確実に前に進んでいます。
「我慢と犠牲」の教育から、生徒も教師も生き生きと学び、教えられる教育へ。
そのための大きな武器として、既存の教育実践とAIの掛け合わせを、真剣に考えてみませんか?