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スタイリストが見た、シャネルの「マドモワゼル・プリヴェ」展

11月も後半なのに20度かと思ったら翌日はひと桁なんて。これも政権の不祥事隠しに違いない。というわけで、天王洲アイルで開催中のマドモワゼル・プリヴェ展に行ってまいりました。

「MADEMOISELLE PRIVÉ」
マドモアゼル プリヴェ
それは、パリのカンボン通り31番地、4階にあるマドモアゼル シャネルのクリエイション スタジオの入り口に掲げられた言葉。この言葉を題したエキシビション「マドモアゼル プリヴェ」は、いつの時代もメゾンのエスプリを体現し、コレクションごとに刷新されるオートクチュール、1921年に誕生した伝説的なフレグランス「シャネル N°5」、そして1932年にマドモアゼル シャネルがデザインした”BIJOUX DE DIAMANTS”(ダイヤモンド ジュエリー)の復刻版をはじめとする唯一無二のハイジュエリーから成る、シャネルの3つのクリエイティブな世界に迫る冒険の旅へと誘います。ー公式サイトhttps://mademoiselleprive.chanel.jpよりー

シャネルはパリのカンボン通り(31 Rue Cambon, 75001 Paris, )という有名な場所に本店があるのですが、今回はそこをイメージした内容になっているのだそう。展示会はロンドン、ソウル、香港、上海を経て、ようやく日本でも開催されています。

これは是非にでも見ておかねば、ということで空いていそうな夕方に行くことにしました。

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天王洲アイル駅から大きな街道に出て歩くと、分かりやすい案内看板があります。これがなかったらかなり迷う可能性大。

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お、左がイベント会場だな?と思ってはいけません。実はこの突き当たりを右に進んだところが会場です。そして事前に予約をしていないとここで入力させられます。無料の代わりにしっかり個人情報を収集するシャネル、さすがです。

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これが会場。モノトーンのファサードからしてシャネルの世界観を表現しています。入場制限をしていることもあり、僕が行ったときは全部で20分くらい待ったでしょうか。いよいよ入場!

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入ってすぐにお目見えするのが、この階段。
正位置に立つとカンボン通りの本店にある螺旋階段が見えてくるんだそうです。面白い仕掛けです。

「あれ、写真撮っていいの?」

そうなんです。
今回一番すごいなと思ったのは、全館撮影OKだったこと。それどころかスマホの使い方が上手じゃないおばあさまにスタッフが撮り方を教えてすらいた。

こういうエキシビションて、大抵撮影NGじゃないですか。内容が分かっちゃうと面白くないとかマナーが乱れるとか色々な理由はあると思いますが、それ自体は理解できるところです。NGだって仕方ない。

でもシャネルは「いいじゃん撮って拡散されても。それでも絶対人来るしマナーも統制取れっから」とばかりに規制しなかった。

実際かなりスタッフの人数も揃えていたし親切だったし、空間も完璧すぎて誰だってちょっと背筋が伸びるような感じでした。

余裕を持って、どっしり構えてユーザーの好きなように遊ばせてくれる。それでいてしっかり伝えたいことは伝える。流石だなと思いましたね。老舗ながら最先端の考え方も理解している。

そんなシャネルの余裕は展示にも表れていて。もうどれもが説得力に溢れていました。

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代名詞のシャネルスーツ。
生地から装飾まで特注品ですが、この規則的なデザインを手作業で仕上げるんですからまさしく超絶技巧。時間と人手の掛かった一着です。このフォルムなら誰が着ても素敵に見えるでしょう。シャネル”風”には出せない雰囲気です。シャネル風スーツを着て野暮ったく見える原因は「デザインが絞られてない」からだと思うんです。ツイードの厚みがよけいに膨張して見える。やはり本物はその辺の微妙な絞りが効いているから綺麗なんですよね。

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オートクチュールならではのデコレーションもセンスが凝縮された作品に。全部がゴテゴテしたデザインではなく、襟周りや袖先などは繊細な雰囲気になっているところには唸るしかありません。このあたりの足し引きがセンスの有無だなと。

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ジュエリーも合わせて展示。チェーンモチーフにシャネルの意匠を感じますね。僕も仕事柄いろいろと見てますがこんな素敵なブレスは見たことがありませんでした。いや素敵という言葉すら薄っぺらく感じてしまう、まさに言葉を失う逸品です。

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この展覧会タイトルも、実は全部ビーズ刺繍!とてつもない時間が掛かっていることでしょう。これもスタッフさんがさりげなく教えてくれました。

 
まだまだ紹介したい語りたいピースはたくさんあるのですが、きりがないので今宵はここまでにいたしとうございます。このネタもそろそろ通じなくなるか。

最近は体験型のイベントが多くなっていますが、それは「リアルに触れてほしい」という主催者の願いがあって、SNS全盛の反動でもあると思うのです。

例えばシャネルにしたって、コレクションはリアルタイムで配信されるし最新ピースはクリックひとつで買える。ユーザーとの距離は近くなったけど、昔に比べてありがたみや緊張感は無くなっています。財布を握りしめて初めてシャネルの店舗に向かうときのようなドキドキ感を経験していない人も多いでしょう。

ネットで買ってもドキドキはするでしょうが、リアルにお店に行って一流の接客を受ける経験とは全然違う。ハイブランドにはそういう「決心」をして購入するところに価値がありました。
 

今回の展覧会では、そういう体験を気軽にして欲しかったのではないでしょうか。

実際に足を運んで、ブランドの空気で満たされた空間で超絶技巧を見て、感じたことを発信という形でアウトプットしてもらう。

この経験をするのとしないのでは、シャネルに対する「価値の重み」が全く違ってくるはずです。ライトなユーザーはより深く興味を持つようになり、元々のユーザーはさらにロイヤルティを高める。よく考えられているなと思います。

そして、そういうことを率先して行えるからこそ、シャネルがトップブランドであり続けられるのでしょう。本当に素晴らしかった。

僕の敬愛するカール・ラガーフェルドは残念ながらこの世を去りましたが、後任のデザイナーには彼の右腕の女性が就任。今後のシャネルにも注目です。リスペクトの意味も込めてカールTシャツを着て行きましたが、ふいに撮れたツーショットを想い出にしたいと思います。

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マドモワゼル・プリヴェ展はいよいよ12月1日(日)までです。事前登録しておくとスムーズですので、まだの方はぜひ駆け込みで行かれてみてください。

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