スタイリストが現場で感じるメディアのヒエラルキーについて考えた。
もういくつ寝るとクリスマスです。僕的なベストクリスマスソングは稲垣潤一の「クリスマスキャロルの頃には」だと思うのですが、歌詞をよく読むとハッピーなクリスマスに聴く曲ではないような気がする。サイレントイヴと併せて聴くと号泣間違いなしですね。楽しかった気分どうしてくれるんだ。
昔はそんな曲が使われたドラマが高視聴率を叩き出していたわけですが、数年前から「テレビは終わった」「リアル出版は終わる」「これからはWEBの時代」なんて言葉が聞かれるようになりましたよね。
実際、両方で仕事しての体感としても勢いという意味ではWEBの方があると感じるし、業界の人からもギャランティーの面でそんな話を聞く機会が多いです。テレビを見限ってそっち方面主体の活動をするようになった芸能人も多いですよね。
じゃあヒエラルキーはひっくり返ったのか?というと、そうはなってない。ひっくり返りそうにもなってないと思う。
それは結局、信頼性と継続性の蓄積ということでしょうね。
ゲーム業界に似たような先例があります。
ご存知の方も多いと思いますが「任天堂の倒し方」発言を覚えていますでしょうか?
任天堂と言えば「マリオ」シリーズを始め、ファミコン黎明期からゲーム業界を支えて来た誰でも知っているゲーム界の先駆者です。しかし約6年前、少し前から勃興し始めたソーシャルゲームの勢いに押されていた時期がありました。
そんなソシャゲ界の雄だった某G社の社員が当時の入社面接で「任天堂の倒し方知らないでしょ?俺らはもう知ってますよ」と言った事が大きな話題に。(同社は今年に入って発言をやんわり否定)
じゃあその通りになったのかな〜?と現状を見てみると、その後同社は主力ゲームのヒットが続かず勢いも続かず。結局任天堂のハードで自社ゲームを採用してもらうサードパーティ(ソフト供給会社)に落ち着いています。
当時のG社の勢いはまさに飛ぶ鳥も落とすものだったし、社内では世間以上に盛り上がっていただろうことは想像できます。でも、結果継続できなかったということです。倒した後どうするか?という道筋までも考えられなかったのでしょう。
話をテレビと出版に戻すと、確かに広告出稿もテレビよりWEBや動画への投資が増えているしお金も回っているし、本屋さんは減少して雑誌も続々廃刊休刊→WEBへ移行が増えています。数字だけ見ると衰退していっていると言われても仕方ない。
でも、信頼度や継続性という部分ではどうでしょうか?
明日突然日テレが無くなるなんてことはないですよね?
&premiumで紹介されたお店は絶対にお客さん増えますよね?
「そこで紹介されたなら」「そこで仕事をしてるなら」という信頼が間違いなく存在する。それは長年積み上げてきた実績であり、継続してきた事に対するご褒美です。ベテラン芸能人と若手タレントに対する扱いが全く違うのもそこに理由があると感じます。
ゆえに、テレビに取り上げられた、大手から出版した、というのはまだまだバカにならない影響力があると現場でも思います。結局WEBで話題になった人がテレビや雑誌に取り上げられるという構図は変わってないしね。僕も本出したり雑誌に取り上げられたりしたいですとも。
それは個人レベルでも、例え僕レベルでもTBS等で仕事してます、といった経歴を載せられることで仕事へのプラス要素は確実にあります。例えばフリーで20年スタイリストしてますという人と経歴は5年ですがどこそこの局でもやってます、というのでは絶対後者の方が押しが効くでしょう?
ただ、「今はまだ」という注釈付きで、ですが。
テレビや雑誌に権威があるのはそれメインで育った世代が各業界のトップにいるからで、WEBがメインの今の世代がトップの時代になったら変わるかも知れません。野球とサッカーの関係についても同じ事が言われていますね。
それに、いわゆるオウンドメディアはひとりでも始めて運営できるので、ミニマムにスタートできて収入面でもマージンもなく割りは良いはず。そっちで大きな影響力を築いて世間が無視できなくなるケースも増えています。だからそっちに走る芸能人も多いんでしょうね。散々テレビで名前を売っといて元居た場所を否定するのもどうかと思いますけど。過去のネームバリューあってこそやろ。
今はタレントさんでも「テレビは顔見世興行。とにかく知ってもらって別のメディアの仕事にも繋がればいい」というスタンスです。そこにしがみつこうという人は少ないはず。
今だに「知ってもらう」「信頼が付く」という点では、テレビや出版以上に幅広く獲得できるメディアはないと思います。キー局の番組や大手の出版社なら全国の誰でも見れる場所に露出できる。WEBは特定のカテゴリーに深く届かせるには最適ですが、自分の興味あるものしか入ってこないので幅広さという点では勝てない。
でも今後を見据えた時、自分を自由に表現できる場所も持っているべき。それがnoteのようなSNSだったりオウンドメディアということになりますね。そしてそれも継続して取り組むこと。まだまだ歴史が浅いジャンルだから、完全に信頼されるにはもう少し時間が掛かるのだろうと思います。
当然ながら、なにも全員が既存のメディア転覆を目指す必要はないわけで。権威のあるメディアは幅広い世代への認知と信頼、これからのメディアは実験と先行者利益・実入りのいい仕事、両方の良いところをリスペクトし活かしながら仕事をしていくのが賢いやり方と言えるのではないでしょうか。
あ、ファッションの話ひとつもしてなかった。ファッションでの権威性については、またクリスマスキャロルの頃までには。
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