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女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存 43

 帰宅して、自室に戻り、ようやく優弥からのメッセージを見る、話したいことがあるので、時間をつくれないか? とあった。正直少し嬉しかった。けれども少し気持ちが混乱した、葉山へ行って以来、お互いに避けているわけではないけれども、あまり言葉も交わしていないし、理佐は少し微妙な距離感を彼に感じた、しかも、友里恵との約束もあり、過度に彼に関わることへの躊躇もある。

 いろいろと考えて、理佐はしばらく返事を保留しておくことにした、幸い今週来週は、例のボランティアに行くこともないので、彼に会うことはない。彼の話したい内容がどんなものかはわからないけれど、必要なら彼からもう一度、督促があるだろう、なければそれまでの事だと考えることにした。ノックがして、由香がドアから、心配そうに顔だけ覗かせる。
「どうかしたの?ママ」 
帰るなり、急に自室へ駆け戻った、母親を少し心配して風呂上りに声をかけたらしい。
 理佐は、ベット脇のソファに腰かけながら、心配ないわ、少しワイン飲みすぎちゃって、とわざと明るい声で返事する、由香は、それならいいけどと言って、おやすみと言うと、ドアを閉めた。

 優弥から再度連絡があったのは、次の週の中頃だった。買い物中に、またスマホが振動したので、見てみると優弥からだった、メッセージには、やはり「ご報告したいことがあります」とだけ記されていた。
さすがに、その週は理佐自身予定があり、その次の週、つまり夫が帰国する週なら、なんとか時間が取れそうだった。

 その旨を、返信するとすぐに、「ありがとうございます」と返事が来た。時間も場所もお任せすることだったので、昼間で少しの時間ならいいだろうと判断した、友里恵の忠告が少し頭の中を過る。
優弥に返事をした同じ日、長女紗香から連絡があり、就職が決まった事を、知らせてきた、理佐はおめでとうというと、よかったね、お祝いしなくちゃねと、まるで我が事のように嬉しかった。


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今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。


まだまだ、物語は、続きます。

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