MuseumNext Digital Summit 2019 に参加してきた。(@アムステルダム)
MuseumNextというカンファレンスに参加してきた。
■「デジタル技術がミュージアムにできること」がテーマ
■ヨーロッパでの取り組みがメインの発表
■内容的には運営やマーケティング視点が多かった。
■今後、展示だけでなく運営もマーケもブランディングも含め総合的にカバーするプラットホームが普及してくる。
■その中で展示アイテムは何ができるか、が課題になるなと。
↓↓以下、一気にざっと書いたので、長文乱文誤字脱字 失礼。↓↓
1【Museum Next】概要
今回行ったのはMuseumNextというカンファレンス。
https://www.museumnext.com/
2009年、イギリスで始まった次世代のミュージアムについて考える国際会議。
年に 数回、トピックを変えながら主に欧米とオーストラリアでカンファレンスを行なっている。
今回参加したのは「DigitalSummit」という、「デジタル技術がミュージアムの未来にできること」がテーマの回@アムステルダム。(全て英語。同通はなかった。)
スピーカーが次々に登壇して20分程度話をしたあと、質疑応答が5−10分。
そしてコーヒーブレイクやランチの時にフリーディスカッションしましょう、というスタイル。
内容的には下記に示す通り、展示アイテムそのもののデジタル事例というより、もっと包括的にミュージアムとデジタルの関係を考える場所でした。要は運営とマーケにかかわる話が多かった。
全体的な印象としては「ICOMは保守的で硬い感じだし、未来志向でちょっとTEDっぽく今風にイケてる感じにしました!」的な雰囲気。すごくカジュアル。
会場のTOBACCOシアター
スピーカー
https://www.museumnext.com/events/digital-summit-amsterdam/schedule/
(1)Making Digital Happen
Kati Price - Victoria and Albert Museum
Dafydd James - National Museum of Wales
デジタル技術を活用して様々な施策の効果測定をし、KGI、KPIを設定して、PDCAまわすことが本当に大切になってきているという大枠の話。(イギリスでは42%の施設が何も測定・解析していない。)
「Be brave and be prepared to pivot」(勇気をもって、ピボット(方向転換)に備えよう)
(2)Operation Night Watch
Nanet Beumer - Rijksmuseum(オランダ国立美術館)
レンブラントの「夜警」修復作業に伴う展示中止にあたって行ったこと。
「Making Everything Open」
絵を修復作業場に移動させ、その代わりにデジタル等で「夜警」コンテンツをつくる、のではなく、
作業場を絵のところに移動させ、ガラス張りにして作業の全てを公開する。
作業場設置の段階から作業中のムービーをネットで公開し、周知をはかる。
※「Pitch>Play>Plunge」
情報に対するヒトの反応は3段階。展示で3まで行くのは10%以下。
Pitch(ピッチ:傾く) まず気づいて興味を持つ。
Play(プレイ:遊ぶ) 遊んでみる。触れてみる。
Plunge(プランジ:飛び込む) 深堀する。
(3)Why AI is not just for Visitors
Casey Scott-Songin, Tom Cunningham - The National Gallery(イギリス国立美術館)
AIによる常設や企画展のビジター数予測の紹介。精度はかなり上がり、運営計画に欠かせなくなった。今後天気や周辺イベント、SNSのテキスト解析などのファクターも入れる予定。
(4)Agile Development in Non-Agile Museum
Taika Dahlbom - Finnish National Gallery(フィンランドナショナルギャラリー)
ミュージアムのためのWebの在り方。企画の方法論など。
(5)Museum of Things for People(<一番具体的で面白かったやつ)
Pieter-Jan Pauwels - City of Gent(ゲント市)
Eva van Regenmortel - Design Museum Gent (ベルギー、ゲントデザインミュージアム)
首に下げるトラッキングデバイスでビジターの動線と滞留を計測した事例を紹介。
求められる位置の精度とデバイスの取り扱い安さと予算を総合して、pozyxという会社の技術を採用。
https://www.pozyx.io/
電波を使って、GPSの50倍、Bluetoothの20倍の精度、>約10センチ。
首からペンダントのようなレシーバーを下げて回ってもらう。任意参加。
年間運営費15000€(約180万円)
そして最後にその動線に基づいて、周辺のおすすめを表示するアルゴリズムを作った。
「We are a public entity and will share our findings with 100% transparency」
我々は公共セクターなので、行ったことと結果は100%透明にして全て公開する。
(6)An Ethical Minefield
Dr Niels Wouters - Science Gallery Melbourne (メルボルンサイエンスギャラリー)
ミュージアムが収集するデータと倫理観が今後一層重要になるというお話。(英語が難しかった。)
「Museums are one of the few and maybe the last place where people can trust the authenticity of the stuff presented in this fake news world.」
(フェイクニュースが蔓延する世界で、ミュージアムは人々がそこに展示されているものを完全に信頼できる数少ない場所)(だからミュージアムをよりよくするあらゆる努力をしていく)
(7)GEED(モバイル、マルチリンガル、展示サポートプラットホーム)
Ciprian Melian - Livdeo
スポンサーのうちの一社。(フランスの会社)
来館者向けモバイル情報提供サービスのCMSプラットホームをやっている。
詳細解説提供、多言語対応(テキスト、音声、手話。画像認識エンジン付き)、映像に同期した多言語音声再生。text-to-speechで自動的に音声生成可。
アプリダウンロードは障壁が高いのでウェブアプリとした。
インターネット上でも、ローカルのサーバーでもできる。ローカル用にハードも含めたシステム一式あり。
今後こういうプラットホームビジネスが必ず来る。日本はどこが市場とるのか。
※ちなみに類似プラットホーム「cuseum」(アメリカ)
http://www.cuseum.com
こちらはモバイル、ARでの解説に加え、デジタル会員システムも内包した統合プラットホーム。ココも気になる。とにかくプラットフォーマーの勢いがすごい。
(8)Digital transformation
Catherine Devine - Microsoft
マイクロソフトのミュージアム&ライブラリー部門。ミュージアムのあらゆる活動のコアにDigitalを、という活動をしている。要するに会社の業務基幹プラットホームのように、ミュージアムの研究から展示から広告から資金繰りまで全てをデジタルでつないで効率的に運営しましょうという話。
「Museums can't afford to be disrupted」(今まで当たり前の様に存在して安泰だと思われていたビジネスが時代とテクノロジーで駆逐された例はいくらでもある。ミュージアムも危機感を持って臨まないと足元をすくわれる。)
「Digital should not be something extra that museums do. It should be part of the core operation.」(デジタルはミュージアム活動の補足ではなく、基幹としてとらえるべき)
(9)Dusty Documents to Hold-Your-Breath Stories
Hannah Hethmon - フリーランスポッドキャスター
物と事実を展示しておしまいな時代は終わり、キュレーションされたストーリ―が最も大切。人は事実よりストーリーに反応する。(理科年表<聖書)
それを伝える一つの手段、ミュージアムに来てもらう手段がポッドキャスト。
(10)How to tell stories online that people won’t move away from
Fransje Pansters - Van Gogh Museum(ゴッホミュージアム)
ミュージアムのウエブサイトの平均滞在時間は2分しかない。これを伸ばし、興味を持ってもらう必要がある。>>そのカギは「ストーリー」
・事実より感情
・時系列より物語
・網羅するよりシンプルに短く
・冒頭であらかじめ数を宣言する(先が見通せて最後で進む確率が高まる)
例:「ゴッホの絵に共通する5つの色彩マジック」
・優れたコピーはコストパフォーマンスが非常に高い投資。トライアンドエラーも即座かつ安価に可能。
※後日訪れたゴッホミュージアムはたしかにストーリーが非常によく伝わるような展示がいくつかあった。
・桜の絵とミュージアムの関係、
・ゴッホの弟テオの妻ヨハンナのビジネスセンス、とか。
(11)Unexpected stories and incidental objects
Russell Dornan - V&A Dundee(スコットランド デザインミュージアム)
展示品を物体としてではなく、大きなストーリーへの入り口としてとらえた展示設計。
以上。
※質疑応答は www.sli.do というサービスを使用。会場で伝えられたパスワードを入れると、掲示板的なものにアクセスできて皆でそこに質問を書き込む。進行役は壇上でスマホを確認しながらスピーカーに質問していく。
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参加してみて感じたこと
■みんなとにかく熱い
どの参加者もミュージアムが社会に果たす役割を信じてる。
で、それに対してデジタルが出来ることを信じてる。
そこに自分が貢献できると信じてる。
熱い。
◾️Museum = Service
ミュージアムをモノとか空間だけで語る時代はおしまい。
ミュージアムという名のサービスとして包括的に考えるべき。
その中核にデジタルがあるべき。
なので、展示アイテム単体とかWebサイトだけとか単発で考えないで全体の戦略にそれがどうハマるかを常に考えながらやっていく。そして解析したデータを次の予算取りに最大限に生かす。
◾経験と勘でやってる時代はおしまい
️何事も測定して解析して改善する>KGI, KPI設定してPDCA回すの大切。
◾️日本というコンテンツのパワー
いろいろな人が「コンニチハ」「ハジメマシテ」と話しかけてくれて、片言日本語率けっこう高い。日本は独自の長い歴史もありながらテクノロジーも進んでいて「大好き」または「ぜひ行ってみたいと思っている」という人多し。
「日本的なものxテクノロジー」、その組み合わせはかなりのコンテンツパワーだと感じました。
◾️こういう場でのコミュニケーションスキルはほんと大事
上記の「日本好き。行きたい。」は半分以上社交辞なんだけど、でも言われた方は悪い気はしないし、片言でも相手の言語使ったりして知らない人に話しかけて会話を広げるの皆ほんと上手。コーヒーブレイクで一人で突っ立っている人がほぼいない。
リアルタイム全帯域人間間通信、超大切。
◾️シェアの精神
皆、日々の業務でやっていることをや分かったことをシェアしようとする意識が非常に高い。もちろん言えないこともたくさんあるはずですが、シェアできるものは積極的に全てシェアしようという精神。どんな小さなことでも誰かの役に立つかもしれないのでとりあえず発信、という考え。
これは人脈もそうで、会話の中で「さっきあなたの会社と同じような業務してるイギリス人いたよ。あ、あの人だ。おーい、ちょっとこっちこない?」的な感じでどんどんつなげてくれる。
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カンファレンスの後はそのままバーにみんなでなだれ込んでお酒を飲みながらのネットワーキングとフリーディスカッションでした。直接すぐ何かの業務につながるわけではないけれど、とにかく刺激を受け、世界でミュージアムのことを真剣に考えている同士にたくさん会えて本当によかった。
ちなみに名刺交換をした人はかなりの確率で LinkedIn経由で後日連絡してきてくれました。アカウントあるけどほとんど使ってないんですが、日本外だとかなり活用されてそう。
※ぼくはここにいます。
https://www.linkedin.com/in/tomonori-hiramatsu-256a0113
ということでまたこういうの参加したらシェアしたいと思います。
※MuseumNextの運営の人に「ぜひアジアでもやって!」と強くお願いしてきました。本当に来るときは是非何か運営のお手伝いをしたいと思います。