購うべきはだれか?ーー映画『ラストマイル』レビュー
観る前にものすごく警戒していた。
ソーシャルメディアが「気軽にAma○onで商品をポチることへの反省」にあふれていたからである。
警戒に警戒を重ねていたので「思いつくものをできるだけネット注文してから映画に臨もうかな」と軽口を叩いていたほどだ。大ヒットを遂げているようなのでしばらく上映し続けているだろうと思った。先に上映終了しそうな映画をあれこれ観ているうちに時間がたっていたのだが……今日やっと観れました、『ラストマイル』。
https://x.com/last_mile_movie/status/1833054579942154379
警戒に反して、シンプルにエンタメとして面白かった!
ネタバレばりばりで感想を述べていくので、未見の方はご注意ください。
主人公は、巨大物流企業DAILY FASTで働く舟渡エレナ。物語は、11月後半に控えたブラックフライデーのCMが流れる多摩モノレールで、エレナがDAILY FAST西武蔵野ロジスティクスセンターに初出社するところから始まる。関東の流通の要であるこの巨大倉庫には1日700人〜800人の派遣作業者が出入りする。そのオペレーションの効率を監視し、日々の売上を最大化することに責任を持つのがセンター長だ。福岡で働いていたエレナが人事を言い渡されたのは3日前。新しい部下・梨本孔との挨拶もまだろくに行っていないエレナの耳に飛び込んできたのは、西武蔵野ロジスティクスセンターから出荷された「DAILY PHONE」が、注文者の手元に届いた瞬間爆発したという事件の一報だった。
元々は野木亜紀子×塚本あゆ子のタッグで撮られた過去作『アンナチュラル』が大好きなので、気になっていた『ラストマイル』。蓋を開けたら舟渡エレナというキャラクターの造形にすっかりやられました。センター長就任初日に連続爆破事件発生、とか並のメンタルの人間には耐えられない、未曾有のインシデント対応です。私だったら、全面的に警察に従うか、自分の上司に判断を投げ打ってしまうでしょう。
しかし、エレナはそうしません。発送効率を下げるなと主張する上司・五十嵐(ディーン・フジオカ)に対して、商品を発送し続けてまた爆発したら自社製品であるDAILY PHONEの評判を下げると主張し、彼の意見をはねのけます。一方で、警察の捜査ものらりくらりとかわします。爆弾がDAILY FASTへの挑戦として仕掛けられたことを匂わせる虚偽広告を最初に発見するのは彼女ですが、急いで警察に通報しようとする部下・梨本を止めるのも彼女。「今、事態がおおやけになればDAILY FASTの株価がダメージを受ける。今日のニューヨーク市場が終わるまで待って」と。今失われている人命よりも直属の上司の歓心よりも、会社のポリシーに従い利益を最大化するために動く(ことでオーナーシップを手放さない)女、それが舟渡エレナなのです。ベルトコンベアを完全には止めないように時間稼ぎをしたり、検査機器(でかい・高額)をセンター長で経費購入して警察の検査効率を上げたり。面白い。かっこいい。満島ひかり美しい。
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