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20241112 読んだように、書いている?

学生の頃にせっかく時間があるので本を読まなければ、と思ってちょっと考えて、とあるひとりの作家の本を片っ端から文庫や単行本で買って読んでいた。本、ということでいうと学生の頃に、同期の人たちが当たり前のように漱石の『草枕』を題材に難しそうな議論をしているのを横目で見て、冷や汗を書きながら文庫本で『草枕』を買って読んだのもいい思い出だったりする。

▼「やばい、話についていけないぞ」と思ってすこし背伸びをしたり、知らなくても「ああ、みんなこういう本を読んでいるんだな」と思って後で図書館や本屋さんで調べて本を読んでいくのは楽しかった。学術書や哲学書になるといくら読んでもさっぱりわからないこともままあったけれど、そうして難しいテクストに向かい合ったことの経験は何かしらの知的な支えになってくれている、ような気もする。

▼「この作家を読もう」と思って、大学の生協にあるその作家の文庫本を、めぼしいやつから順番に買って読んでみた。大学の生協の本屋さんの雰囲気はどこまでも落ち着いていて本の匂いがして、街の本屋さんにはないようなラインナップが静かに並んでいたりして、とても好きだった。『生協の白石さん』が流行った後でもあって、割と生協の人たちも学生に対してポジティブというかフレンドリーな雰囲気があった気がする。

▼大学の生協といえば三年生くらいの時、なんの気なしにYouTubeで野球のフォームの解説動画を見ていて、たまたま自宅にあった野球の硬式ボールを手に持ちながら「ん、こうか…?」と、出所の見えにくい投球フォームを真似していたらうっかりボールが手からすっぽ抜けてしまって、ボールがパソコンの画面に直撃してバキバキになってしまったことがあった。ディスプレイには電子機器に対するボールの衝撃を伝える曲線と直線の、黒と鮮やかな彩りからなる不思議な色の幾何学模様が浮かんでいた。

▼大学の授業の連絡や何かもすべてそのパソコンでやりくりしていたので青ざめて生協に駆け込み、事情を詳しく説明して「な、なんとかなりませんか…!!」とお願いしたところ、「野球ボールが!?直撃したんですか!!?なんで!?」と驚かれながらもものすごく親身に話を聞いてもらい、生協の人がメーカーにも掛け合ってくれて無事に修理してもらったことがあった。嘘みたいな本当の話だけれど生協の人たちはとにかく学生にやさしかった。涙が出るほどありがたかった。閑話休題。

▼大学の授業の合間に、大学の図書館で、神社の境内で、たまに井の頭公園に出かけたりして5月の晴れた日のベンチで、その一人の作家の文章をとりあえずずっと読んでいた。その作家に関して読んだことのない文章はほとんどないと思う、というくらいにはその人の書くものを漁って読んでいた。だからどう、ということもないけれどもどこかしらできっと深く影響を受けている。人はまあ、たぶん読んだように書いている。秋も秋ということでインプットの季節だなぁ、と思う。

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
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