20240425 5%
「芸術監督という仕事をやっていると、演劇の創作(演出)に使える純粋なエネルギーは5%ほど」というのはSPAC静岡舞台芸術センターの宮城聰さんの言葉だった。宮城さんでもそんなに大変なんだ(事務仕事なんかに追われるのだなぁ)と思うのと同時に、たったの5%であれだけの作品を世に送り出しているのかと思うと恐ろしいような気もしたものだった(『白狐伝』では宮城さん自身が出演もされるから無茶苦茶大変だろうと思う)。
▼東京芸術劇場の芸術監督が野田秀樹さんから岡田利規さんにバトンが渡されるというのはすこし明るいニュースのように思えたけれども、それでも東京の公立劇場の芸術監督となるといろいろ苦労も多いのだろうなあと想像する(『三月の5日間』が20年前で、岡田さんも50歳かと思うとなんだか嘘だろ、という気持ちにもなるが)。
▼メキシコ出身で今京都に住んでいるてる君という友達がいて、彼とお互いの演劇事情についていろいろ話していた時に「カンパニーなんか主宰しているとさ、公演の最中でも助成金の書類やなんかをたくさん書かなきゃいけないだろ?そうするとリハーサルに集中できなくてついイライラしてしまう。すると劇団員は僕に気を遣ったりしてくれるんだけど申し訳なくてさ。なんで俺がペーパーワークしなくちゃいけないんだっていう気持ちになるんだよね〜」という話でひとしきり盛り上がった。
▼世界各国どこも、事情は似たようなものなんだなと思うとそれはそれで諦めもつく。劇団なんか主宰した日には終わらない事務仕事に追われまくることになる。先日読んでいた本でアメリカの劇場だとたとえば資金調達のためのチームが数十人からのチームを組んで動いていて、年間で数億円から数十億円の予算を劇場にもたらしてきているらしい、ということを知って気が遠くなった(そうして莫大な元本をさらに運用することで利益まで上げているらしい)。
▼目の前の公演の資金調達や広報・宣伝をいろいろ考えながら、次年度の公演予算を確保するための助成金の書類をつくっていたりする。せいぜいが数百万円ほどの予算なのだけれど、悲しき東京の演劇人としてアルバイトや家事などの隙間を縫ってえっちらおっちらつくった予算書や企画書がちょっとした不備で突き返されたりするとさすがにめげそうになる。
▼だからたまによその劇団やプロダクションに呼んでもらえて俳優だけに専念できたりすることはものすごく贅沢なことである。余計なことを考えずに俳優だけやれることの幸せというものはある。それでも事務仕事のいいところは、創作の”甘さ”みたいなものをものすごく強く感じるようになることだろうか。事務的なメールや連絡を打ち返したりした後に上演台本をいじっているとものすごく楽しく、たまらなく幸せな気持ちになる。それがどんなシーンになるかはまた、稽古場に行ってみないことにはわからないのだが。
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