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20250121 土台になりたい

自分が男性であることが怖いという気持ちが私にはある。昨今の芸能界の数多のおぞましいスキャンダルを目にするよりもずっと前から、自分が割合(身体的にも精神的にも)マッチョな男性であるということについて折に触れて悶々としている。男性であるというだけで誰かを威圧してしまっているし、これまでの人生ですでに下駄を履かせてもらって生きてきているし、というかもう存在しているだけで暴力、というような部分がある。

▼「でもさ、結婚したら自分が家族を養いたいし…」みたいな迂闊なひとことから学生の頃の同期にめちゃくちゃ怒られて、こんこんと説教されて泣いてしまったことがある。その時まで自分がゴリゴリの家父長制というか、旧来の家族観を信じていることにぜんぜん気がついていなかった。20代の最初の頃まで男が働いて家族を養うもの、というのが当たり前だと思っていた。そうしてたぶんちょっと無意識のうちに女性のことを軽んじていたことに、自分自身てんで気がついていなかったことがものすごくショックだった。

▼米津玄師さんが『虎に翼』の主題歌である「さよーならまたいつか」という曲について、「『虎に翼』という作品には大きなテーマとしてのフェミニズムがある。そこに墨汁を一滴垂らすようなことはしたくなかった」と語っているのを見かけた。烏滸がましいことだとは思いながら、自分もせめて己の振る舞いで他の女性の足を踏んづけたり、他の誰かのことを抑圧したくないと思うけれども、そのために具体的にどうしたらいいのか、何が正解なのかどれだけ考えてもどうしたらいいのか、はっきりとした答えなんか見つからない。

▼しかも自分の主宰しているカンパニーは男性の俳優だけで構成されている。ものの本で読んだ「劇団が続けられなくなるのはお金と、異性間の問題による」という言葉を真に受けて、お金だけでも苦しいのだからせめて異性間の問題だけでも考えなくてもよいようにしたい、と思って、そのように答えていたこともあったけれどもそれだって今となっては全然よくない回答だと思っている。たとえどういうジェンダーの人がその場に集まるにせよ、そこに集まるすべての人がひとりの人として尊重される場であるべきだから。男性だけであることは「そこで色恋沙汰が起きない」というような免罪符には決してならないし、こうなってくるとむしろストレートに男性だけであることのマッチョさ、偏りと暴力性の方がますます気になってきてしまうのだった。

▼冗談でもなんでもなく「メンバー全員が去勢したら信じてもらえるのかな」と思ったこともあった。でも中国の宦官なんかを考えてみるに、仮に男性器とともに性欲がなくなったとしても支配欲や出世欲、そのための他者への攻撃性や加虐性なんかがなくなるという保証はどこにもないわけで、それ自体もまた本質的な解決にはならないのだと思う。私は自分が男性であることが怖い。ものすごく怖い。(冗談でもなんでもなく)たとえばガリガリになればいいのかもしれないが骨格がすでに大きいし、食べることもトレーニングも好きだからまだしばらくは身体は大きいままだろうな、と思うと「どうやって自分が男性であることを納得してもらえるのだろう」とぐるぐる考え続けてしまう。たぶん、ものすごく変なことを書いている。

▼これからの社会がよりよくなるために、逃れようもなくゴリゴリの男性である自分にできることなんてあるのだろうか、と考えてみたときに、やさしくあることくらいなのじゃないか、と思ったりする。そうして自分の周りの人たちにもやさしくあってもらえるように働きかけることが、自分にできる唯一のことなのではないか。笑ってしまうほどにぼんやりとしている、と我ながら思う。鍛えているのはそれで誰かを押しつぶしたりブン殴ったり黙らせたりするためではなくて、地面にグッと踏ん張って、それで誰かの土台になるためだと思っている。きっと信じてはもらえない。まとまりがない。あまりにもまとまりがないけれど、一度書いておきたかったことなので書いてみた次第である。

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◆2024年の年末に『桜の園』ソロ・こごえという作品を上演しました。

◆2024年5月にはじめての野外劇を上演しました。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
【公演詳細】

◆2024年5月、上記公演の実施にあたって平泳ぎ本店は戸山公園で野外劇を上演するための所作台(舞台床面)を製作するための資金調達に取り組み、日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき無事に成功しました。ありがとうございました!

【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!

◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第9回公演
『(タイトル近日発表予定)』
2025年 初夏

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