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20250225 強くやさしくおもしろく
「…それでその東京の演出家が集まる会みたいなのに連れて行ってもらったんですけど、なんか本当にがっかりしてしまって。会う人会う人『えらい人を紹介してあげる』なんて言うんですけどなんかみんな見栄ばっかり張っていてまるで演劇の話ができなくて実体がなくて。『あんな風になりたくない』って一緒に行った俳優と泣きながら宿に帰りました。」というのは、あるときある人から聞いた、東京のとある演劇関係の会合に参加した時の様子なのだった。
▼またあるときには、とある演劇祭の前夜祭があるからと言われて参加してみると、繁華街のクラブみたいなハコを貸し切って、とある業界団体を中心とした演劇関係者のおじさんたちが凄まじく内輪で盛り上がっていたのを、これは自分自身の目で目の当たりにしたことがあった。素朴に「このパーティの財源ってどうなってるんだろう?」と思ったりもした。「この人たちが斯様に盛り上がる根拠ってなんなのだろう」とも。数年後、その演劇祭は主催者が入れ替わる形で少し形を変えてつづいていったのだけれど、新しくなったそのコンクールではしっかりとした金額の賞金が出るようになっていた。その前は賞金の類は一切出なかった。
▼「演劇をやっていては食えない」というのは本当にそうで、演劇なんていつの時代もきわめて不景気なジャンルではあって、だから、演劇をやっていてもその業界の中で”権力者”と呼ばれる人の持ってる力なんてたかが知れている。演出家であれプロデューサーであれ、ちょっと有名だとしてもそいつが持っている権力なんてせいぜいが数百人から数千人の動員と、ちょっとしたキャスティング権と中間助成団体とのズブズブの付き合いの上での既得権益くらいのもので、何が言いたいかというとそんなものマジでどうでもよくないか?ということである。
(そうは言いつつたまに自分の場所で独自の”王国”みたいなものを築いている本物の王様みたいなパターンもあるから油断ならない。)
▼演劇界(小劇場を主とする)なんてもうそもそもが狭い世界の中で内輪で盛り上がるおじさん、おばさんの類なんてほんとうに反吐が出てしまいそうになる。ただでさえ狭い業界を必死で延命するために内輪で回しているトロフィーの類なんて町内会の神輿くらいどうでもいい。小劇場の関係者は総じてみんな身なりがみすぼらしい(たまに宝塚や商業演劇を観に行くと痛感する)。お金を持っていなさそうなくせに、ちょっとした有名人や権力には積極的に媚びへつらおうとする姿勢がもう本当に卑しい。だから小劇場ってしみったれているのだしそれではダメだろ、と強く思う(まあ、何か見たのだった)。
▼「貧しさこそが敵」と歌った椎名林檎に機関銃で蜂の巣にしてもらえ、と思ったりもする。演劇をやっている以上縋るべき権威なんてものはない。各々が信じる演劇を勝手にやっていろ、と思う。演劇界なんて狭い業界なのだから、放っておいたら早晩ほとんどすべての人が知り合いということになってしまうし人の顔色を伺っていたら心からやりたいことなんてできなくなるし、言いたいことも言いにくくなる。スタンドアローンでいろ、と他でもない自分自身に向けて強く思う。
▼既存の小劇場のどんな界隈にもおもねることなく、自分と自分の周りでは演劇を通じてもっとビシッとしたコミュニティを築いていきたい、と思う。「食えない、食えない」と、ダラダラとなんの問題意識もなく演劇をやっていたら小劇場というクソしょうもない、みみっちいマーケットに消費されてしまう。そうしていつかテレビドラマや映画に出られる日を夢見ながら演劇をやる。そんなのはいやだ。「清く・正しく・美しく」は宝塚だけれども、冗談でもなんでもなく今演劇に関わっている人間が真剣に参考すべきは小林一三翁の成し遂げた仕事だと思う(宝塚歌劇団もとうとう株式会社になった)。いつまでも食えないと言っていては芸がない。唸るほどの資本を引っ張ってこい。そうして「強く・やさしく・おもしろく」くらいのことで、高い理想をもって自分の演劇に向けて離陸していけ、と思う。
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◆2024年の年末に『桜の園』ソロ・こごえという作品を上演しました。https://note.com/hiraoyogihonten/n/n061602834a82?sub_rt=share_sb
◆毎週水曜日に西早稲田近辺で舞台俳優のためのファンダメンタル(基礎トレーニング)を実施しています。
◆2024年5月にはじめての野外劇を上演しました。
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
【公演詳細】
◆2024年5月、上記公演の実施にあたって平泳ぎ本店は戸山公園で野外劇を上演するための所作台(舞台床面)を製作するための資金調達に取り組み、日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき無事に成功しました。ありがとうございました!
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第9回公演
『(タイトル近日発表予定)』
2025年 初夏
続報をお待ちください!
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