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20241107 どんな晩でも

かつて本当にお金がなかったとき(今もないけど)、井上ひさしさんの劇団であるこまつ座のお手伝いのアルバイトをして、コツコツと貯めたお金で同期の結婚式のお祝儀を捻出したことがあった。

▼コロナでたぶんいろいろ変わってしまったのだろうとは思うものの、以前のこまつ座だと劇場のロビーでチケットをもぎったり、物販をしたりお客さんを案内したりするのは基本的にはアルバイトのお手伝いさんたちで賄われていた。こまつ座の社員さんも何人かはいるものの、基本的には歴の長いお手伝いさんみたいな人たちがいて、その人たちが仕切ってくれていた。

▼こまつ座は公演期間も長いのと、その日のお給料を手渡しでもらえるので結構ありがたいアルバイトだった。どんなド素人でもこまつ座のあの法被を羽織るとなんかそれらしく見えるので、イメージというのは大切だなぁと思いながらせっせと紀伊國屋ホールに通っていた。

こまつ座といえばこのスタイル。

▼こまつ座はお芝居も手堅く面白いので、席が空いていれば積極的に観せてもらっていた。井上ひさし氏が現役の頃はなかなか台本が完成せず、ギリギリになって完成したらしたで今度は一言一句でも間違えると烈火の如く怒る、ということで現場の人たちは翻弄されまくっていたらしいものの、亡くなってしまえば氏の戯曲によってコンスタントに面白い演劇が上演できるのでなんとも困った劇作家だなぁ、と思う。

▼当時1ステージのお手伝いが3000円で、お祝儀の三万円を目指してスタンプラリーみたいにせっせと新宿三丁目に通っていた。私自身はどんな形であれ劇場のロビーにいるといくらか元気になるのと、昼・夜でお手伝いする時はお弁当をもらえたりして(こまつ座はさすがお弁当もいいものが出る)、ほかの小劇場のお手伝いだとなかなかそのようにしてお手伝いでバイト代を貰うことなんて望むべくもなかったから、なかなか楽しい仕事ではあった。

▼客席で観劇しないときでも、ロビーのモニターから漏れ聞こえてくるお芝居の音や声を聞きながら終演を待っているのは楽しかった。「どんな晩でも少なくとも一人、生まれて初めて芝居というものを観て、そのために人生に対して新しい考え方を持つようになる人が劇場のどこかに座っている。その人のために全力を尽くせ。上がってなどいられない」という、氏の言葉を何となく思い出しながら、無事に貯まったお祝儀を大切に袱紗に包んだ。

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◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に成功しました。ありがとうございました!!
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「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】

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