20240925 実家の味
中学だったか高校だったか、あるとき父に味噌汁のつくりかたを尋ねたことがあった。家庭科の実習があって味噌汁をつくることになっていて、父のつくる玉ねぎの味噌汁(八丁味噌のやつ)が私の大好物だったので、あわよくば自分の班でつくってみようかと思ったのだった。
▼父は照れながら「みりんをすこし入れてる」と教えてくれた、同時に「まあでもみんなにつくるのはよせ」といって、なんだか恥ずかしがりながらやんわりと私を止めた。当時は料理なんてほとんどつくったことがなかったからよくわからなかったけれど、たしかに今になって考えれば味噌汁にみりんってあんまり入れないな、と思う。
▼みりんを入れた味噌汁はだからちょっと甘くて、それが好きだったのだけれど、あまり一般的な味付けではない。実習では煮干しで出汁をとって、わかめと豆腐の一応一般的なお味噌汁をつくって食べた。実習室で炊いたご飯が結構おいしくておかわりまでした気がする。
▼家庭の味はどこまでも家庭の味であって、あんまり人様に表立って披露するもんではないのかな、というようなことをその時にぼんやりと思った。場合によっては「ゲッ」というような反応をされることもあるし、なんかちょっと気恥ずかしいものですらあったりもするから、まあそんなもんかと思っていた。
▼父はまた納豆に砂糖を入れるのも好きだった。東北が好きで一人でも旅行でよく行っていたから、そこで食べた納豆を真似していたんじゃないかと、今なら推理できたりもする。学生の頃バイトの賄いで納豆を出してもらった時、ちょっと物足りなくてこっそりと納豆に砂糖を入れたことがあった。「納豆に砂糖!?」と、これもまた人によっては信じられなかったりもするらしいけれども、父が土曜や日曜の朝に食べていたのを分けてもらっていた、いわば”おやじの味”みたいなものなのでふと食べたくなるのだった。
▼だから、というわけでもないけれど今でも甘い味付けのものが好きで、タイ料理屋さんに行って卓上にナンプラーや酢、唐辛子や砂糖なんかの調味料が置いてあるとどんな料理にでも砂糖をちょっと入れてしまう。タイの店員さんをもってしても「その料理に砂糖は使わないよ!」と、笑われてしまったりもするけれど、子供の頃に好きになった味付けからはそう簡単には逃れられないなぁ、と思いながら、ちょっと照れながら砂糖をふりかけるのだった。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
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