20241102 天文館にて
あるとき、同期の結婚式のために鹿児島にいた。初めて飛んで行った鹿児島の上空は飛行機の窓から見ると緑が多くて、「この距離をはるばる江戸まで出てきて明治維新をやったのか、薩摩の人たちは！」と思うとはるかな気持ちになった。同じく鹿児島から高校を卒業して10代で東京へ出てきていた同期の心境を、そのとき初めてきちんと想像してみたような気持ちがした。
▼結婚式は心がこもっていて、とてもあたたかなものだった。高校のダンス部で活躍していた彼女の溌剌としたダンスや明るさ、チャーミングさを感じられる演出で、薩摩隼人たる旦那さんのしっかりとした堅実な人柄も相まって、二人は末長く平和に暮らしていくのだろうとその場に居合わせたすべての人たちが感じられるいい式だった。
▼式の同じテーブルに、新婦である彼女が元いた事務所の社長さんがいらして、式の間に薩摩焼酎を酌み交わしながら話を伺ってみるに、その方は私たちが元々通っていた老舗劇団でマネージャーを長く務めていた、ということがわかり、すっかり意気投合してしまって、式が終わってから鹿児島の天文館へと繰り出してもう少し薩摩焼酎を飲もうということになった。
▼鹿児島の繁華街である天文館は薩摩の志士たちもかくや、というちょっと荒々しいバイタリティに溢れていて心が躍った。その方とはその日初めて会ったのだったけれども、老舗劇団の華やかなりし時代のお話を聞くのが大好きなので、薩摩揚げなんかをつまみながら、めちゃくちゃ楽しい時間になった。
▼『寅さん』のマドンナで誰が一番好きかと聞かれたら、迷わずに第17作の『寅さん夕焼け小焼け』の太地喜和子さん演じる”ぼたん”だと答える。シリーズの中で数々の美しい名女優さんがマドンナとして多く登場する『寅さん』シリーズにあっても、太地喜和子さんはずば抜けている。とにかく目を惹くし、画面から伝わってくる俳優としての線の太さ、エネルギー、愛嬌がもう桁外れで、ほんとうにもう無茶苦茶大好きで大ファンなのだけれども、その社長さんが劇団にいた時代に、まさにその太地喜和子さんのマネージャーをしていた、ということがわかって大興奮してしまい、「どんな方だったんですか」「あのスキャンダルの真相は」「あの噂って本当だったんですか」と、次から次に質問攻めにしてしまった。
▼それなりに歴史のある劇団に通ってみることのいいところは、歴史に残る大女優や名優がかつて本当にそこに存在していたことを信じられることだ、と思う。あんまりにも興奮して夜更けまで話し込んでしまい、自分が予約していた宿のチェックイン時間をうっかり過ぎてしまい、宿がなくなってしまった。あまりにもパニクってベロベロのまま漫画喫茶などを求めて走り回っている最中に礼服を街中に落っことしてしまって、真夜中の天文館を何往復もしたのもいい思い出である。
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平泳ぎ本店／Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日（金）ー19日（日）
各日18時30分開演（17時45分受付開始・開場）
※雨天決行
於：戸山公園（箱根山地区）陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】
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