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20241020 虚を衝くディスタンス

「ノーモーションでぶん殴る」ということばがある。そういうイメージ、というか、実際に物理的にぶん殴る訳ではなくて、虚を衝く間尺で何かしらの表現を(やや暴力的に)差し込んでくる感じ、というのが個人的なイメージに近い。そういう表現に出会うとだいたい「ああおもしろいな」と思っている。

▼「ノーモーション」の対義語は言ってみれば「おおきく振りかぶって」ということになるだろうか。どれだけ強い打撃だとしても「せーの!」と大きなテイクバックをとって見え透いた軌道で撃ち込まれたら、まあ多少なりとも両腕を構えてガードできるしな、という気持ちである。

▼それでもたまにガードの上からぶん殴られる、というか「わかっていても感動してしまう」ようなことは大いにあるし、予定調和と相まってかえって大きな感動をさせられてしまうようなプロットというのもあるから一概には言えないものの、基本的なスタンスとして「どうせなら虚を衝いて欲しい」という欲望が、観客としての私の中にはある。

▼たとえば舞台に限らず映像でも小説でも「人間ならおよそこうする」という定型、パターンみたいなものがあって、それを元に目の前で何が起こるかについておおよその検討を立てている。何が起こるんだろう、何が語られるんだろうということをいちいち少し想像しながら、目の前の表現と付き合っている。

▼いつだって観客は少し先回りしている。客席にいながら、知らず知らずに目の前の表現の数歩先を歩き始めている。”巧い”脚本家は観客のこの部分のはたらきを捕まえるのがうまくて、それを逆手にとって伏線を張っておいたり、ミスリードしておいて後でそれをひっくり返したりもする。じゃあ俳優は、と思う。

▼「普通の人間ならこうする」というありうべき人間像を再構成してみせるのは近代の俳優である。今となっては惰性で一筆書きをしたって仕方がない。舞台上の俳優が描く軌跡が凡庸ならそれは凡庸な舞台だろう、と思う。可能な限り観客に次の挙動を予想させない立ち方、出方ができるのが一番良い。傍観させずに立ち会いの間合いに引き込んでしまって、そこからノーモーションで裏切って、それでも「これが人間だ」と思わせることができたなら、それが一番いいよなと思う。

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
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