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20240605 人が縫い、人が織りなす、次の時代の舞台芸術というテクスト。

Photo by Kyono Hirose

元はと言えば私がたまたま若葉町ウォーフで佐藤信さん、清水宏さんのお手伝いをしていたことから全国小劇場ネットワークの「シアターホームステイ」という企画で沖縄のアトリエ銘苅ベースさんへ派遣してもらう機会を貰ったことが、ここまですべてをつなげてくれたのだった。先の作品『若き日の詩人たちの肖像』に沖縄の要素が入っているのも、長野県上田市の犀の角へとツアーへ出ることができたのも、すべてはこのシアターホームステイという企画のおかげだった。
https://note.com/1st_x_ep/m/m07ab1fcecfd6


犀の角公演にて、全国小劇場ネットワークの生みの親、伝説のドラマトゥルク野村政之さんと!!!犀の角でこの作品を観ていただけて、ものすごく嬉しかったです。

▼佐藤信さんから「彼の地の劇場にただ行って、ボーッとしているだけでいいから」と言われていたその企画はしかし、那覇で私を受け入れてくれたアトリエ銘苅ベースの当山彰一さんたちのやさしいホスピタリティもあって忘れがたい経験となって私の中に残った。アトリエ銘苅ベースがそもそも全国小劇場ネットワークのはじまりの地だったこともあり、たくさんの場所を見て、たくさんの人たちの話を聞いて、今に至るまでたくさんのことを考え続ける契機になった。

▼そんな経験を経て、たまたま自分がいま暮らしている街に野外劇を上演するための所作台(舞台機構)をつくる、というための資金調達に挑戦している。シンプルに東京で舞台の木の床をつくっているだけといえばそうだけれども、そこから少し踏み込んで「そこをどんな人たちに使ってもらえるか」「その場所にどんな人たちを呼びたいか」「その場所からどんな文化を発信できるだろうか」ということを勝手に考えてワクワクしているのも、これはシアターホームステイに行っていろんな人たちに会えたおかげだということは胸を張って言える。

▼たとえば東京で演劇をやるといった時に、かつては小劇場すごろくと呼ばれるものがあってVAN99ホールや下北沢のOFF・OFFシアターなどのごく小さな劇場から始まって、いずれ紀伊國屋ホールに至り、それに飽きたらない人たちはさらに国立代々木競技場第一体育館へと至るような上昇&拡大思考というのが存在したりもしていた。けれどもそうしてとにかく動員を増やしたり大きな会場を使ったりということではない、別の軸での舞台芸術の豊かさということを、私たちの世代ではいよいよ真剣に考えなければならなくなってきている(滅びてしまうから)。

▼たとえば演劇の動員ということを考えた時に、シンプルに東京だけで1万人の動員を達成しようとすれば、その作品の具体的なキャスティングや方向性ということはけっこう限られてくるのではないかと思うけれども、これが日本全国の各都市(大都市に限らない)の合計で1万人、ということになればもう少しカラフルな形でその実現を考えられるような気がする(人口1400万人の東京での1万人と、1.2億人いる日本全国での1万人ではもちろんその割合も異なるのだし)。

▼動員や経済効率を考えて、大きな資本で大都市だけで動員をしてペイする、というのではない形の観客とつくり手の有機的なつながりを、私たちは生み出していかなければならない。もっと豊かな舞台芸術のありようを、真剣に想像しなければならない。

▼東京都のど真ん中で野外劇を気軽に上演できる環境が生まれるということは、なにも東京のカンパニーだけを利するものではない。誰が来たって、いつだってそこでかんたんにキャパ100くらいの演劇を上演できるのである。この区や、都だけのためになるものをつくっているのでは断じてない。日本の、もっといえば世界中のすべてのアーティストのためになる場所にきっとなるはずだと今は強く思っている。

(そう考えると「東京都のインフラを整えるための資金調達を個人が行うな」というような話がじっさい前にチラッとあったのだけれども、それもちょっとピントがずれている。新宿区、東京都のものが都民、区民の役にしか立たないのでは本当の意味での公共性は果たせないはずだから。この資金調達は別に東京都や新宿区のためだけのものでは断じてないと、今ならはっきり言える。)

▼そうしてまた、東京のつくり手が東京だけで滞留していては仕方がない。東京でつくった作品はどんどん積極的に東京以外の地域へと持って出かけていった方がいい。旅をして、いろんな街を見た方がいい(楽しいから)。というか東京のアーティストの人たちが東京以外の街でつくる作品も最近は増えてきているから、若い人たちは特にわざわざ東京に縛られることなく自由にいろんなところへと行って作品をつくったら良いと思う。創作環境だけ考えたら東京よりも優れた環境を備えている場所は日本の中にもたくさんある。

▼これから先これといった対策もなしに、人もモノもお金も何もかもが東京に集中し続ければあっという間に地方都市は滅びるし、東京や大都市しか残っていない日本なんていよいよただのディストピアというか、なにもおもしろくない国になってしまうだろうという予感がビシビシとする。演劇を通じて多くの人たちがたくさん旅をして、人と作品がいわば針と糸となってこの日本中の各都市を相互に行き来し縫い合わせていくような状況をつくれたら、その現状に少しでも抗うことができるかもしれない。そうしていま私が資金調達をしているこの場所も、その人と人との交流に少しでも役立つことができたら、こんなに嬉しいことはないと思う。

▼このようにして大袈裟なことをいってみても、実際のところはシンプルに野外の舞台のための、木の床板をつくっているだけではある。たった一枚の木の床板が、これから先東京のど真ん中でなにをなしうるのか、正直私にも未知数なことばかりである。資金調達は残り二日。
最後までどうかよろしくお願いいたします。

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◆現在資金調達に挑戦しています!ぜひご一読ください。
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
https://hiraoyogihonten.com/2024/02/24/hiraoyogi8th_info/

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