今は観光産業に関わるすべての人が試されている
「観光業の事業者は、今までお金もうけに重きを置きすぎていた。
時間のある今こそ人材育成に力を入れ、もてなしの心を育てるべきだ」
本日は、普段から弊所の教育にお力添えくださっている、Visit Japan大使・髙橋正美氏の記事をご紹介します。
「観光を事業として持続的に経営していくには、売り上げと利益といった経済性は必要です。しかし、経済が主目的になると、心がおろそかになっていく」。高橋氏の言う「心」とは、何を意味するのか。
『毎日来てくれるのが当たり前』だった状況が一変し、たった1人のお客さんが来てくれることに感謝や感動といった感情が入り交じり、もう一度、以前同様に彼ら彼女らを友人のようにお迎えしたい、というもてなしの『心』が私の中で深化したのです。
今こそ「もてなし」の心を見つめ直すときだ
インバウンドはもうかる!とノウハウやテクニック、スキルやマニュアルなどを教える書籍や記事をたくさん見るようになりました。
しかし外国人は、日本人をもうけさせてあげたいと思って来ているわけではありません。日本の人々との交流を楽しみにやってくる彼らをお迎えする究極の観光資源は人の心です。
経済に偏ってその心がおろそかになってはいけない、というのが私の問題意識です。今は観光産業に関わるすべての人が試されている
過去に東日本大震災という大きな危機を乗り越えてきた者、今回最大の危機に直面し生き残りを模索する者。
存続か、縮小か、撤退か。インバウンド・ツーリズムに関わるすべてのプレーヤーは今、一様に行方を試されている。
PRESIDENT ONLINE「希望を持つことが大事」箱根の老舗ゲストハウスがそう訴える真意(記事担当:萩本良秀さん)
グローバル視点で、永続的に顧客から選ばれるためのCS(弊所では「グローバルCS」と呼んでいます)を築き上げるためには、経済と心を追求するバランスが非常に重要だとお伝えしています。
お客さまにとっての真のCSと、それを提供するために必要な心を、観光業に携わる人々が徹底して追求することが大切であり、その先に初めて真のCS継続という未来が安定的に現れるのだと思います。
そして、その「追求」は、目の前にお客さまがいるから出来るのではなく、むしろ、今、お客さまという存在を改めて思う時間があるときに、深めることができます。
観光業にとって苦しいこの危機に、真のCSを提供するために自身の心の追求を深めるということを、受入れられない人もいるでしょう。CSを提供するためのお客さまが、来ないのですから。当然、今向き合わなければならないことは、「この危機をどう乗り越えるか」という考えが湧き上がるでしょう。
しかし、その「乗り越え方」が、「観光業者の心の追求を深めることが、一番揺るぎない今後の地盤になる」ということに、今、気付き、対応(追求)しているかどうかが大切です。
目先の結果を生まない「サービスを提供する者の心の追求」は、往々にして敬遠されがちです。
その理由は明らかで、「心の状態によって生み出される真のCSの提供」を自身・会社が経験したことがないからです。つまり、サービス提供者の心の状態の重要性に気付かないままサービスを提供し続けたことが原因なのです。良い悪いではありません。今までお客さまを笑顔にしてきたでしょうし、事業は難なく継続していたと思います。
しかし、コロナ後の人々の価値選択基準は変わります。品質重視になるでしょう。そうなった時、これまでのサービスは淘汰されると予想しています。
その時に唯一選ばれ続けるサービスこそ、「心を追求し続けながら積み重ねてきたサービス」です。
この時期に行う準備は何か?という点で、関わりのある事業者の方とお話をすることがありますが、今、どうしてもその「追求」に落ち着いて向き合えないこともあると思います。
足が地に着かない、心の追求より現実的な目先の問題で視野が埋め尽くされている、そのような場合は、無理をしなくても良いと思います。
現実として、今向き合える余力がどれほど残っているかというのは、過去のサービスの積み重ねの結果として現れています。
今、本質に向き合う時間がもてないのであれば、一端先延ばしにするしかありません。先延ばしにした後、向き合う時間がもてるよう、今を積み重ねていくだけです。