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座長日記(2)20201024

ある朝、目覚めると、わたしは旅一座なる団体の座長になっていた。

ここ3ヶ月くらい中老の男性が「学校だ」と自称するzoomの会に週一で顔を出している。

内容は大変面白く、一見するとしっちゃかめっちゃかに思える「授業」と呼ばれるおしゃべりも、よくよく考えてみるとかなりの示唆に富んでいるのがわかり、なかなかに工夫が凝らされている。

ついつい「これこそが本当の学校で授業なのではないか?」「本来の教育は必ずしも一条校である必要などなく、誰もが先生で生徒なのだ!」などの錯覚に陥ることもあるので、この男性の熱量にやられぬようくれぐれも気をつけねばと思っているところだ。

ちなみにその男性はこれらのzoomにアクセスする際に金品を徴収しているようである。zoomではなくnoteなるものを使い、月1000〜10000円をせしめる。曖昧でよく出来たシステムだ。マネロンにも使えそうである。また、男性は次々と「学科」なるネズミ講的システムを考案したので、わたしとしては重課金による被害者が生まれぬよう「フリーパス制度」なるものを男性に納得させ、これを解決した。

しかしながらである。

男性からわたしに対する無理難題はとどまることを知らない上、挙げ句の果てに昨晩、他の被害女性から「いつかこの人はここからいなくなるから気をつけな!」との告発があった。

男性は、自ら謎の会合を開き、「学校」や「授業」と称して盛り上げたのち、他人にそれを押し付け、次の興味ある遊び場へと勝手に移動してしまうと言うのだ。

わたしの予想は大きく裏切られ、ショックだった。

わたしが中老の男性の無茶振りに愛想をつかし去らぬ限りは、何にいつまで関わりたいのかは、わたしの自由意志なのだと信じて疑わなかった。しかし私の意思とは関係なく物事が始まり、わたしは勝手にアサインされ、そしてアサインされたまま男性は私の視界から勝手に消えるのだと、その勇気ある女性は告発したのだ!

わたしは混乱した。動揺が隠せなかった。
わたしは何に巻き込まれてしまったのだろうか。
足元から揺らぎ、底知れぬ恐怖がわたしを襲った。

すると中老の男性はニヤニヤと笑いながらこう言った。
「3年だ。3年したらいなくなるかもしれないけどな、わはは!」

わたしはあんぐりと口を開けて、おどろきのあまり口から本心が漏れ出た。

「これから3年も一緒だなんて、十分すぎるわ!3年後までこのペースならこっちがお腹いっぱいだわ!」

わたしの心配は杞憂に終わった。
よかった。

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