【平戸を醸す】飛鸞はどのように地域性を表現しているのか?(酵母編)
飛鸞は長崎県平戸市で醸される日本酒です。平戸に賑わいをもたらすため、長崎県平戸市でしか実現できない唯一無二の酒造りを追求しています。
実は飛鸞、「平戸の風土」を酒に限りなく反映するため、数多くのことを行なっております。
本シリーズでは、飛鸞が「平戸の風土」を日本酒で表現するために、どのようなことを行なっているのかを、生酛編・米編・酵母・未来編の4つにわたって紹介します。
今回は、飛鸞の酒造りで多く用いられる「酵母」にフォーカス。
お酒としての美味しさのみならず、地域性という情緒的な価値を表現することで、芸術作品として日本酒を昇華させる。そんな飛鸞の奥深い取り組みに触れます。
日本酒における酵母の役割
まずはじめに、日本酒において酵母がどんな役割を果たすのか簡単に振り返っていきます。
酵母は発酵を通じて米や麹の糖をアルコールと二酸化炭素に変え、日本酒のアルコール生成と同時に香りや味わいにも大きな影響を与えます。酵母の種類によって生成される成分が異なり、それが日本酒の個性を形作る重要な要素です。
たとえば、ある酵母は爽やかでフルーティな香りを生み出し、軽い口当たりの酒を作ることが多いのに対し、別の酵母ではリンゴや洋ナシのような華やかな香りが特徴で、主に吟醸酒などの高品質な日本酒に使われます。
このように、酵母の違いによって生まれる香りや味わいのバリエーションが、各酒蔵の独自性や個性を際立たせる重要な要素となっています。
蔵独自の価値を生み出す蔵付き酵母とは?
蔵付き酵母とは、酒蔵の自然環境に存在する酵母で、その蔵独自の環境に適応しながら長い時間をかけて育まれたものです。この酵母は、酒蔵の空気や設備、地域の気候条件など、その土地ならではの特徴を反映した日本酒を醸造でき、伝統と風土を表現する一つの手段として重要視されています。
蔵付き酵母の活用は、現在のように全国共通で利用される「協会酵母」が普及する以前から存在していました。近代に入り、技術が進むにつれて、これらの酵母を科学的に分離し、管理することが可能となり、優れた酵母が全国的に利用されるようになりました。しかし、今でも蔵独自の酵母を大切にし、それを象徴的に用いることで蔵の個性や歴史を強く打ち出す酒蔵も数多く存在しています。
その代表的な例が、6号酵母や12号酵母です。
6号酵母は、秋田県の新政酒造で1935年に発見された酵母です。これは、日本で初めて純粋培養された酵母として知られており、現在の協会6号酵母の元となっています。6号酵母は、穏やかで控えめな香りと、スッキリとしたキレのある淡麗な味わいを特徴としています。特に、新政酒造の酒はこの6号酵母によって作られ、フレッシュでクリアな飲み口が評価されています。また、他の酒蔵でもこの酵母は多く使用されており、協会酵母の中でも長く支持されている酵母の一つです。
12号酵母は、五代目蔵元杜氏の修行先でもある浦霞醸造元株式会社佐浦で発見された酵母で、協会12号酵母として知られています。この酵母はバナナのような香りを生み出し、豊かな香りとコクが特徴の酒を醸し出します。12号酵母は、吟醸酒や大吟醸酒のような香り高い酒に適しており、浦霞酒造の日本酒はこの酵母によって、果実味がありながらもバランスの取れた味わいを持つことで有名です。この酵母の存在により、浦霞は香り豊かな吟醸酒の代表格として広く知られるようになりました。
飛鸞の蔵付き酵母
ここからは、森酒造場の五代目杜氏に話を伺いながら、飛鸞での蔵付き酵母の取り組みについて深ぼっていきます。
ーーーまず初めに、蔵独自の蔵付き酵母はどうやって採取することが出来るんですか?
森:単純にもろみから取り出すとそのままのきょうかい酵母になってしまうので、蔵に棲みついている酵母を取り出すために、蔵の木造の扉や旧蔵などから採取しました。木に棲みついているものが取りやすいですね。
採取方法としては、サスペンスドラマでありそうな、化学捜査班が指紋を取るようなイメージで綿棒みたいなもので採取しています(笑)
それを元に長崎県工業技術センターにお願いして培養や研究をしていただく流れです。
ーーー蔵付き酵母の採集における難しさはどんなところになりますか?
森:単純に酒造りに適した酵母を見つけるのが大変ですね。酵母は見つかっても、酒造りに向いている酵母はなかなかいないんです。見つかるまで1年半くらいはかかりました。
ーーー決して簡単ではない道のりですね。最終的にはどのくらいの酵母が見つかったんですか?
森:覚えていないくらい候補は沢山いましたが、発酵試験を全てクリアした酵母はたった2種類しかいなかったです。
ーーーちなみに蔵付き酵母を使ったお酒は販売されているんですか?
森:以前「飛鸞connection X 愛酒クリーム」という商品でリリースしたことがあるのですが、酵母の供給準備の影響で本格的な商品化についてはまだだったんです。でも、今期からようやく準備が整ってきて、正式に商品化に向かって動いています。まだ具体的には言えないですが、来春には商品化予定です!
将来的には「にこまる」などの定番商品にも飛鸞の蔵付き酵母を使っていけたらいいなと思っています。
ーーーありがとうございます。飛鸞独自の蔵付き酵母のお酒が出来たら、かなり歴史的なリリースになりますね!最後に森さんが考える蔵付き酵母の意義をお伺いしたいです。
森:やはり、他の蔵にはない酵母ということではオンリーワンの価値をもつお酒が生まれるところですね。飛鸞の酵母は、かなりオリジナリティが強いものとして仕上がっているので、リリースを楽しみにしていただけたら嬉しいです。
酵母の違いがクイズになる飛鸞「はてな」
9月19日に2種類販売開始した、飛鸞はてなでは、「使用酵母による味わいの違い」をテーマにしており、今回の記事でもご紹介した6号酵母と12号酵母をそれぞれ使用しています。
酵母以外は全く同じ条件のお酒が酵母の違いによって、どのような味わいの変化があるのか楽しみながら飲み比べてみてください!
👇詳しくはこちらの記事をチェック
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飛鸞は、国内だけではなく世界に羽ばたいていくブランドを目指しております。そのため、今まさに『人の力』がより重要になる段階に差し掛かっています。
私たちの目標は、モノづくりを楽しみながら、飛鸞というブランドを成長させていくことです。10年後、20年後には、より素晴らしい景色を皆さんと共に見たいと考えております。
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