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自分の仕事にほこりなんて持てなくていい

自分の仕事にほこりなんて持てなくていい。
ほこりを持ってはいけない、と言っているのではない。
自分の仕事にほこりが持てなくても、恥に感じたり、劣等感を
抱いたり、何かを変えなければならない、と考えなくてよい。
と私は思う。

私は明治大学を卒業して、
大都会東京の新宿副都心で、
今は亡きカメラ量販店、安さ爆発!みんなのさくらや
の店頭に立った。
時にはピンクのはっぴを着て、店頭でティッシュを配ることもあった。
「誰か同級生に見られるんじゃないか」
とても恥ずかしかった。
だから、一刻も早くティッシュを配り終わろうと、私はすごい勢いで
ティッシュを配りまくった。
これはこれはモチベーションである。
たぶん30分もかかっていない。10分か15分か。
すごい勢いで、自分のノルマとして与えられたティッシュを配り終え、
私は店内でのカメラ販売に戻ることができた。
数年後、紆余曲折を経て、再びカメラ量販店の店頭に立つことになった。
今度は横浜。
ヨドバシカメラ横浜駅前店。
ここではほどなくして、私はカメラ販売員として、大活躍始めた。
とても楽しかった。
特に土日祝日はかき入れ時である。
さくらやの時もそうだが、昼休憩、業界用語で「一番」と言った。
「一番」は45分間。
夕方の休憩、業界用語で「三番」は30分間。
横浜での私は、躍動していて、
「一番」はお昼前11時過ぎくらいに、
いまでもある立ち食いそば、鈴一(すずいち)で、
「てんそ」(天ぷらそば)をかっこむ。
たぶん20分もかかっていないだろう。
そこから休憩室でマウスウォッシュだけして、
そそくさと売り場に戻る。
そこからはカメラを売りまくった。
「三番」という夕方の休憩を取るのは、
売り場が閑散となった夜20時近くになってから。
ほぼほぼ今日の仕事も終わり、と、休憩室でゆっくりした。

この頃の私は自分の仕事を楽しみ、自分の販売力にほこりを感じていた。
充実していた。
そんなときでも、当番で、駅の改札前で決められた時間、立て看板を
持たなければならないことがあった。
新宿勤務のときと違い、私はそのときに恥じらいなど、微塵も感じていなかった。
「早く売り場に戻りたい」というのは同じだが、
その衝動の背景にある感情はまったく異なる。
私は一刻も早く売り場に戻り、カメラを売りまくりたかった。

新宿のさくらや勤務の時は、
お昼や夕方の休憩のときは、さくらやのネクタイを外して街に出た。
それほど、自分の仕事を隠したかった。
販売員同志、同僚で飲みに行くと
「さくらやで働いていることがはずかしいと思っているか」
なんていうことが先輩方の口から話題にのぼる。
まさに自分の心の投影である、と感じる。

二十年と少し前の話しだ。

あの頃の自分に声をかけられるなら、
「自分の仕事が恥ずかしくてもいいじゃん。気楽にいきようぜ」
と声をかけるだろう(笑)。

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