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プール
ちゃぽんちゃぽんという
胃のあたりに感じる水
カラフルな味や形がゆれる
姿を変えていく
ちゃぽんちゃぽんという
ミクロに分解された細胞が
今度は意志を持って泳ぐ
溶けていきながら、そのミクロの意志が
ちょうどいい温水の流れるプールに次々と運ばれていく
プールサイドでの熱い抱擁を待ちながら
そこで“わたし“は別のものに変わるのだ
夥しい数の血管のチューブは温水プールの流れる先まで延々と続いていた
ひとつあたまの真ん中に、海の記憶を秘めた
神聖なプールが波音ひとつ立てずに,ひっそりと湧いていた
“ここから先の立ち入りはご遠慮ください“
丁寧な看板が立っている
プールサイドの熱い抱擁を楽しんだ旅人たちは
深い眠りについて
どちらにしても、その看板には気づきもしないようだった
眠らない監視員は、少しホッとしたように
ほんのひととき目を閉じた
1日の終わり
こんこんと湧く泉の,鏡面のような沈黙が
静かに今日の扉をしめた