【日記27】新年〜ベーコンエッグ
1.1 MON(12℃/8℃)
新年が明ける瞬間、またいつもの飲み屋「S」にいた。
去年もここにいて、常連さん達と新年を祝った。
ニューイヤーとともに結婚記念日。
歌集『自転車修理屋』の連作「真夏の風に折ってもらった」の中の〈年の瀬も仕事のきみを待ちわびて寿司にカラオケ、婚姻届/杜崎ひらく〉は実話から。
2019年の大晦日に、仕事終わりの妻と待ち合わせて寿司屋へ行って、カラオケ行って、0時半ごろに婚姻届を出した。
鶏の出汁で作ったお雑煮を食べて、午後は妻の実家へ。電車で1時間もかからない道のり。元日の午後の電車は人が少なくて、日差しがよく入って眩しかった。
妻の実家には高齢の柴犬がいる。
足腰が弱くなり、目もほとんど見えていないようで、立ち上がってもコロンと倒れてしまう。
散歩の時は腰にもハーネスを着けて引っ張り上げ、後ろ足を立たせてやっていたが、この度、歩行器が出来上がったようだった。
その歩行器は、とある夫婦が作っている。もともと、自分たちの犬のために作ったのが最初らしい。その歩行器が話題を呼び、作って欲しいという人が多くいたために、専門に作るようになったという。
久しぶりに会った犬は、自力では散歩できなかったのが嘘のように、歩行器に体を預け、足をせっせと動かして前に進めるようになっていた。
歩きたかったんだろうなぁ。
散歩したかったんだろうなぁ。
あちらの花へ、こちらの草へと鼻を突っ込んで、においをかぎたかったんだろうなぁ。
歩行器についたバーを握ってやると、昔、リードをぐいぐいと引っ張っていた頃の感触が手に蘇った気がした。
逃げてください!
テレビでアナウンサーの人が大きな声で言っていた。
義父も義母も、食事の手が止まっていた。
僕も妻もこのお正月の、両親が奮発してくれた料理を、こんな時に食べていいのかよく分からなくなってしまった。
1.2 TUE(9℃/2℃)
能登半島地震から一夜明けて、SNSで「祈る」人を何人も見た。
「祈り」とはなんなのか、僕にも分からないけれど、「祈ることしかできない」という気持ちは僕も同じだった。
そして、文芸に、短歌には何ができるのかと自問する人もいた。
僕個人としては「直接的には何もできない」が正解だと思った。
でも、だからといって、文芸を無力だと思うのは違う。
僕はいつもこう考えるようにしている。
ドライバーやペンチが直接的に人の命を救うことはない。でも、人の命を救う医療機器の組み立てを行うことはできる。間接的に誰かの役に立つ。
道具にはそれぞれに使い方があるように、どんなに直接的に役に立たないものであろうが、まずは一番真っ当な使い方をしてみるほかないのだ。
じゃあ、短歌の一番真っ当な使い方は?
それはもうとにかく詠む、これしかないんじゃないか。
今の自分の気持ちを、能登のことを、そこにいる人々のことを、身近な人たちのことを、自分が詠むべきと思ったことをつぶさに見つめて。
僕もそうやって短歌を作ることにした。
短歌は無力だという悲観はひとまず置いておいて、この日に歌を作ることで、きっと何年か後に、自分にこの日のことを思い出させてくれるはずだと信じて作った。
きっと時間が経てば、震災の爪痕は薄れていくだろう。そのことを憂い、悲しみ、傷つき、苦しむ人がいるだろう。そのことを、僕はきっと自分の作った短歌から思い出す。そうすることが、誰かの支えになれはしないだろうか。そういう願いを込めて、いくつかの短歌を作り、11首残した。
なぜか推敲している場合ではないと感じ、即詠をそのまま出したが、変わらず「祈り」については分からないままだ。
ただ、祈りというのは他者に対して行うことだろうと、なんとなく思ってはいる。自分のことを置いておいてもまずは他者のことを!と考えてとった行動が、祈りに近いものになるのかもしれない。
1.3 WED(11℃/2℃)
夜に一人で飲み屋「B」へ。
正月だからと湯呑みで日本酒を出されたのが面白かった。
1.4 THU(15℃/7℃)
仕事始め。
三が日はずっと妻が風邪を引いていて、そのことをなぜか僕のせいにされて意味がわからなかった。
めちゃくちゃムカついたけれど、仕事をしながら、気分を変えて、家でボードゲーム大会をしようと、妻に大会概要を送る。
夜にラミーキューブをやりながら、険悪ムードの解除に成功した。
1.5 FRI(13℃/3℃)
妻の風邪も治ってきて、夜に元気に赤ワインを飲んでいた。
結婚祝いに友達がくれた焼き物のグラスで飲むと気分が上がるらしく、ワインをぐびぐび飲んでいた。やめとけ。笑
1.6 SAT(15℃/3℃)
よく伸びたアロマティカスが窮屈そうだったので、花瓶を替えてあげた。
花瓶といっても、うちの花瓶はほとんど瓶詰めの瓶である。
今回は、正月に実家でもらった海鮮丼の具のおしゃれ瓶詰め。ハーバリウムにも使えそうな綺麗な瓶だったのでとっておいたのを、家族の一員であるアロマティカスにあげた。もう一株のアロマティカスにも、ちょっと口の広い瓶を。
これは、何が入っていたっけな?
クリームチーズといぶりがっこのおしゃれつまみが入っていた瓶じゃなかったかな?
台所の下に、まだまだ海苔の佃煮や鮭フレークの空き瓶が眠っている。
また少し植物を部屋に迎えたい。
午後に初詣へ。
地元の四社を回った。うち一社は混みすぎて入れず、日を改めることにした。
妻はシェアサイクルを借りて、僕は自分の自転車で地元を走った。妻は自転車に乗るのが久々すぎて、ものすごく遅かった。電動自転車の恩恵を本当に受けているのかしらと心配になる程ペダルを漕いでなかった。
夫婦兼用の自転車を買おうかしら。
妻にも僕にも乗りやすいように、自分で組もうかな。そう考えだすと楽しくていろんな妄想を膨らませていた。
夕方に飲み屋「T」へ。今年もよろしくお願いしますと挨拶し、2024年もきっとずっと胃袋掴まれっぱなしなんだろうなと思った。
1.7 SUN(12℃/6℃)
秦野にある出雲大社相模分祠にお参りへ。
飲み屋「S」の神社大好き常連メンバーで一緒に行ってきました。
そのあと、曾屋神社へもお参り。恵比寿様の顔出しパネルがあって、昨年はやったけれど、今年はやらなかった。
そしてお待ちかね、石庄庵と言うお蕎麦屋さんへ。
店先にかわいい柴犬がいるんだこれが。そしてお蕎麦も美味しいのだ。
お腹いっぱいになって、帰りの車の中で口を開けて寝ていた。
夜は月詠を作りに飲み屋「B」へ。
ベーコンエッグをつまみにレモンサワーを飲みながらなんとか作り上げた。
清書は翌日に。
今年もどうぞよろしくお願いします。