拡張に頼らない「サルベージ資本主義」の可能性
何度でも言いたい。「サルベージ資本主義」という考え方がある。アナ・チン著『マツタケ|不確定な時代を生きる術』(みすず書房)で描かれるこの概念は、今ぼくたちが取り組んでいる「一般社団法人フードサルベージ」のコンセプトに、深みと新しい視点をくれている。
もう「進歩」や「拡大」が資本主義のキーワードじゃなくなってきた時代だ。そんな中で「サルベージ資本主義」は、使われずに放置されているものや捨てられてしまうもの、そういった「忘れられた資源」を拾い上げて、新しい価値にしていくことを提案している。効率や成長だけが目的じゃなく、資源を大事にするっていう視点で、ぼくらの暮らしを再構築していく方法を探ろうとしている。
マツタケの流通を通してこの概念が見せてくれるのは、まだ気づかれていない資源や価値に光を当て、グローバル経済が見落としてきた「生き方」を浮かび上がらせるってこと。
ぼく自身、この概念をまだ完全には消化しきれてないけど、たとえば「スケール拡張に頼らなくてもいい」というメッセージが、ぼくらに何かを教えてくれるなーって。規模の追求からちょっと離れてみるって、いいよね。「サルベージ」には、そんな希望がある気がする。
ぼくらが10年近くやっている「サルベージ・パーティ」もそうだ。資本主義では価値を失った食材(それを食品ロスと呼ぶ。まだ食べられるのに)を集めて、お金では測れない価値をその食材に見いだして、みんなで料理したり、余ったら持ち帰ったりして新たな価値を生み出している。それがサルベージ。食べものを資本主義のレールから外しちゃう、みたいな感覚。
もう「食品ロス削減」という強くてネガティブな言葉で力むより、これからは、「サルベージ」のようにポジな言葉をつかっていこうと思ってる。