柿のいた部屋 (あみもの2周年号掲載)

熟れるのを待っていたのに皮ふやけ体液流し死んでいた柿

声もなく腐っていった柿達よわたしはずっと家にいました

閉ざされた段ボールの中死んだのが柿ではなくて人だったなら

柿好きじゃないのにもらって放置してネグレクトの末死に至らしめ

干し柿が粉をふくのを待つ祖母の口癖 おなごはがまんすねばわがんね

町内一美人であった姑の嫌っていた柿を喰らう祖母

アル中でDV男のじいじゃんが死んでニートになれたばあちゃん

美しい人間の中に棲む悪魔どこからきたの元からいたの

曽祖母と同じお墓に入りたくないと言ってた祖母の納骨

柿を吊るしてた軒先、軒先のある家、家も、ぜんぶながれた

回想の中のばあちゃん干し柿を千切る大事なものは舐って

ポリ手して腐った柿を持ち家のちゃっこい庭へ埋める犯人

腐るとは甘いにおいもするようで嗅ぎたがる犬の素直さこわさ

ご近所のアパートの前警官が立つそらいろのシートを掲げ

断れずまたもらう柿果物の二度目の死っていつなんだろう

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赤片亜美
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