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コンテンツだけで頑張るには限界がある(無料記事)

仕事をしていてしばしば感じることがあります。それがこのタイトルの「コンテンツだけで頑張るには限界がある」なんです。

映像などのコンテンツを作って発信しても、思うような結果が得られないことがあります。基本的には思うような結果が得られる方が稀で、ほとんどの映像コンテンツは思ったような結果は得られないと思います。

それは出資者が思い描いている結果が「バズる」ことだからです。すごく低予算で作ってバズったサンプルを持ち出して、「あれがバズるんだから、もう少しお金をかけたウチのコンテンツはもっとバズるはずだ。」と仰るのです。

でも、そもそも計算してバズらせるのは無理です。炎上させてバズらせるのは計算できるかも知れませんが、クライアントが狙っているのはポジティブなバズりです。商品やサービスが関係ないドラマやアニメだって、そんな簡単にはバズらないのです。

バズるところまで求めないとしても、もう少し結果を出したいと思う気持ちはもちろん痛いほど分かります。商品やサービスを開発するには多額の資金が投入されて、血の滲むような試行錯誤がされていますから。

それで、結果を出すためにコンテンツの中身をあれこれとテコ入れしてしまいます。Xのフォロワーの多い俳優や声優を使った方がいいんじゃないかとか、ヒットコンテンツを持っているイラストレーターを使った方がいいんじゃないかとか、有名なアーティストに歌を唄ってもらおうか、などなど。

でも、やっぱりコンテンツだけで頑張るには限界があるんです。なぜコンテンツだけで頑張っても限界があるのかと言うと、そもそも知られてないコンテンツに10億円かけても誰も見てくれないんです。山に籠もって素晴らしい絵を書いたり仏像を彫っていたとしても、誰にも知られなかったら素晴らしいとは言われません。素晴らしいというのは相対的なものです。

芸術の神様に認められるのが目的ならそれでもいいと思います。日本人は割と「いい作品を作れば神様が見てくれて正当な評価を与えてくれる」と思いたい人が多いんですが、神様はSNSをやってないので、いい作品を発見しても人々にそれを知らせる方法がないんです。

それと、コンテンツだけで頑張ろうとしてしまう要因のひとつとして、コンテンツ力で突破したコンテンツのニュースばかりが目の前に現れるからです。専門家がヒットの要因を分析したりしますが、それもコンテンツの中身に関してばかりに言及していたりします。コンテンツの中身のいくつかの要素が、Z世代に受けているとか、子育て世代に受けているとかです。

アカデミー賞やカンヌ映画祭にノミネートされた時も、コンテンツ力で語られます。監督や俳優や脚本の素晴らしさについて語られます。

成功した作品をコンテンツ力で語るのは、それを作った人々をリスペクトする意味でも正しい伝え方だと思いますが、ニュースの受け手側は「やっぱりコンテンツを頑張れば報われる」と勘違いしてしまうのです。その裏側に別の大きな要因があるにも関わらずです。

でも、映画の興行は公開初日の金曜日から始まる金土日の興行収入でその後のスクリーン数が決まってきます。そこで観客の入りが悪かったら予定通り2週間で公開は終わりますし、観客の入りが良かったら予定よりも延長して公開したり、スクリーン数を増やしたりするんです。

コンテンツ力で勝負していたらそんなやり方は無理です。劇場公開して観客の評判が広まるのを待たなければならないからです。だから明らかにコンテンツ力ではなく事前のPRで勝負してるんです。

コンテンツだけで頑張るには限界があるんです。クリエイターの方々なら分かると思いますが、20%のクオリティのものを60%のクオリティに引き上げるのは割と簡単です。才能のある人に頼めばそれで終わりかも知れません。

でも、80%のクオリティのものを90%のクオリティに引き上げるのは壮絶に大変なんです。さらに90%のクオリティのものを95%のクオリティに引き上げるのはもっと大変です。おそらく、90%のものを95%のクオリティに引き上げるには、20%のものを60%のクオリティに引き上げるために使うお金の10〜100倍必要になると思います。

だからコンテンツだけで頑張って結果を出そうとするのは効率が悪いんです。むしろ、悪すぎると言ってもいいかも知れません。75%程度のクオリティのコンテンツが出来たなら、それを95%に引き上げる努力をするんじゃなくて、その存在を知らしめるためにお金を使えばいいんです。CMを作ったりSNSで告知したり。

その方がよっぽど成功の確立は上がるはずなんですが、「コンテンツを頑張れば道は開ける!」と言われることが本当に多いんですよね。「もっと告知にお金を使った方がいいですよ」と言うと、「いや、それはちょっと…」を目を逸らされてしまいます。

多分、「いいコンテンツを作れば告知にお金をかけなくても広まるはず」と思っているからです。完全に逆なんですけどね。「コンテンツが先か?告知が先か?」で言えば、告知が先に決まってます。そこには「上手く行けばタダで広まるかも」という、ケチな思惑もあるんだと思いますが。

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Xや無料noteでは言えない事。毎記事2000文字以上。月に5〜8回投稿。多い時は10回以上。映画監督、映像ディレクターの仕事について。フリーランスの生き抜き方をフリーランス歴20年以上の経験から。「中年の危機」に悶絶している様子をリアルタイムに報告。子供を2人育てる父親の視点と哲学。世の中に対する日々の雑感。親友の画家、石田徹也について。などなどを書いています。

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