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『独りにならない』ための努力

昨日の続き。
少し前から、私の父の体調に気がかりなことがある。
体調に気がかり、とは言ったけど、それが分かったのは1ヶ月ほど前に、母と姉がほぼ無理矢理父を病院に連れて行ってくれたから分かったことで、病気のせいと気付いたのは本当に最近だった。

数ヶ月前から、いわゆる認知症のような症状があった。
私の身近に認知症の人がいなかったので、「これは認知症だ!」と確信が持てるほどではないんだけど、世間でよく耳にしていたし、これがいわゆる認知症というやつなのでは?と疑い始めていた。
ただ、変な言動はあるものの、ずっと長年連れ添っている母が「頭はしっかりしてる」と言い切っていた。母が言うからきっとそうなんだろうと思った。

昔っから他の人に言わせれば「面白いお父さん」で、この年代の男の人には珍しい超おしゃべり。いっつも冗談ばっかり、変なことをばっかり言ったりやったりする人だ。
変なこと言っててもそれが冗談なのか、病気のせいで本気で言ってるのか分からないほどに。

認知症ではなく、せん妄だった。私は病院に付き添ってないので詳しい病名などは分からないけど、尿の毒素が頭のほうに回ってせん妄を起こしている、と言うことらしい。
毒が抜ければ、せん妄も落ち着くのでは、ということだった。

最初に検査をしてから、ひと月近く経ったいま。
少しずつ、症状も落ち着いてきた。毒素も抜けて、そろそろ正常の状態(元々ヘンだけど)になるのでは、なんて甘く見ていたが。
母が言うには未だにせん妄が見られている…どころか、治療しているのに、最初にせん妄が見られてた頃と同じような症状がまた見られたらしい。普段明るく前向きな母が絶望しているような雰囲気を感じ取れた。

いい加減、現実を直視しなければ、と、私もついに先日、実家に様子を見に行くことにした。
実は2ヶ月ほど前、大好きな姉が急遽入院し手術となり、身内に心配事が続いていて、私ももうさすがに嫌だと現実逃避していた。情けない。

行ってみたら拍子抜け。
全くもって、いつも通りだった。
確かにちょっと変なこと言ってるけど(いつも変なこと言うから違いが分からん)。
おそらく、せん妄の隙を与えないくらい私が終始しゃべり倒していたからだろう。会話はやはり、重要だ。

様子を見てると、いつも以上に寂しがるし、会話をしたがっている感じだった。
団塊の世代よりちょっとだけ下の、いわゆる昭和の男だ。プライドがあるのか、寂しいとか構ってほしい、なんて言わない(大の男がそんなことばかり言うのもどうかと思うが)。
今はHSPなんてわかりやすい言葉もあるが、うちの父もそうかもしれない。人付き合いが苦手で、友達は一人もいない。長くなるので詳細は省くが、我が家は母が働いて、父が家にいるような状況だった。なので、会社勤めもしていないような人なので、人との関わりが極端に少ない。
それでも、コロナ前は、まだ外に出歩いていたし、家にいてもネットスーパーで届けてくれた人と会話したり、それなりに楽しく過ごしていた。年に数回は私や姉が子どもを連れてわちゃわちゃと騒がしくしていた。時にはそれが煩わしいと思われているような言動さえあった。

姉のところも私のところも子どもが大きくなっていき、受験だのなんだの、みんな忙しくなってきた。年末年始、お盆などは帰ってはいたものの滞在日数が短くなったり、それ以外の土日にちょくちょく遊びに行くことも減ったような気がする。

父は人との関わりが少なくなり、寂しくなったらしい。加えて、過度な心配性と、少し見えづらい目のせいで、外に出歩くが怖くなり、活動量が激減。
こうなるまで、気づかなかった。
どう考えても、こんな状態は何かしらの病気になるに決まっている。まだこの程度で済んで良かったとすら思える。しかしこの先はわからない。

実は母はまだ仕事をしている。週に1〜2回程度は外に出ていて、あとは自宅にいる。母も数年前に大病してるので、体調にはやや不安がある。無理はできない。というかそもそも持病があって、身体は丈夫な方ではない。
そんな母は家の全ての家事を全うし、仕事をしつつ、父の面倒を見ている。そしてあらゆるゲームを何周もクリアしている。「この人は1日に何時間あるんですか?」とか言いたくなるけど、今日はこの話は省くとして。

で、この父の相手が別に楽しければ良いのだが、夫婦二人だと、どうしても言い合いの喧嘩になるようで。
父は、育った家庭環境が聞いている限りではあまり良くなく、自己肯定感が低め。普段は楽しい父だけど、物事に対して、あまり聞きたくない否定的な暴言を度々いう。自分がこうだと思ったら、ちゃんと説明しても頭ごなしに否定されたりする。

大人になった私や姉には否定的なことはあまり言わなくなったけど、ずっと一緒にいる母には当たりがキツいまま。母が良かれと思ってやったり言ったりしたことも「勝手なことした」「嫌味だ」と言ったりする。
母は全くそのつもりがないのに、そうだと決めつけられてしまう。
父には会話が必要だし、人との関わりが必要だとは分かっているけど、そもそも、父がおかしくなっているのにいち早く気づいて、病院での検査やなんやらをすごく言っていたのに、その度に喧嘩になってしまい、否定されてしまうので、さすがの母も嫌気がさしてしまったらしい。
いや、見てても思う。あんなのと会話したくない。
元々あたりはキツイが、さらにキツくなったようにも思える。やはりせん妄のせいなんだろうか。

だが、私はやっぱり思ってしまう。
また、元気な父に戻ってほしい。
外を散歩したり、宅配の人と会話したり、かなり前だが、母と変わりばんこにwii Uで『風来のシレン』をやってた時もある。
そんな父をまた見たいと思ってしまう。
ただ、母にこれ以上父との関わりを求めるのは絶対しんどい。

病気にかかることが悪いとか、そんなわけはないんだけど。
でも、その後の治療に関しては、周りもそうだし、本人の努力もやっぱり必要なんだよな。
治療に対する、あらゆる努力。
病院に行く、治療のための話を聞く、周囲の人と良好な関係を築けるような言動。
うん、うちの父、どれもちょっとずつ欠けてる。

母も結局、「自業自得だ」なんていう。
母もたくさん関わり続けてきた。それでも、本人が努力しなかった。結局、転倒して、動けなくなってどうしようもなくなって、救急車で運ばれるまで、自分から病院に行くなんてことは言わなかった。
母は仕事を長期で休むことになり(リモートでカバー)、姉は何日も泊まり込みで父の世話や病院の送迎をしていた。
周りに迷惑をかけていることは本人も分かっている。

迷惑?
いや、本来は、迷惑なんて言葉を使いたくないんだ。
思わぬトラブルや病気など、自分ではどうしようもない時に周りの手を借りるのは当たり前のことで。
だから、もしこんなことが唐突に起きていたら、私も積極的に手伝いに行っていたと思う。というか、母から言動がおかしいと数ヶ月前に初めて聞いた時は、予定がみっちりだったのに隙間を縫って実家に行ったからね。
今回、母から聞いても私が前向きになれなかったのは、父が治療することに前向きじゃないと分かっていたからだ。
これ以上悪くなってもいいと思っているわけではないけど、周りの協力があってこその治療なのに、それを本人がイマイチ理解できていない。
私もどこかで「自業自得だ」と思っていたのかもしれない。

ただ、実家に行って父を見て、父と会話して。
とにかく会話をしたい、誰かと関わっていたいって会話の隅々に出ていて。
中高生くらいの同級生の女子ならちょっとウザいと思われかねないくらいの構って
構って状態で。
どうにか、関わってあげる時間を作ってあげるべきか、と思い始めた。
病気の治療は双方の努力が必要。
母は十分すぎるくらい、努力してる。
姉も協力してる。
今度は私が何かできることを。
何かが変わるかもしれないことを期待して。

生き様や言動だけ見たら、とっくに見捨てられても良さそうな父だが。
周りにいい人ばかりでよかったね、幸せな人だ、なんて思う。

母が会社で「私の周りにはいい人しかいない」
と言ったらしい。
そしたら同僚の人に「それはあなたがいい人だからよ」
と言われたとか。

そうだよね。

ありがとうございます。ぺこり。

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