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自衛隊怪談「営内班」
自衛隊の怪談も少し書かねばなるまい。
いっぱいあるが何を書こうか・・・。
30年以上前の昭和の北海道の某駐屯地
某駐屯地には自衛隊員が生活する隊舎がある。
古い建物で、どの部屋にも幽霊が出ると言うので、居室に掲げられた連隊長要望事項の額の裏とかに御札が見えないように貼られていたりする。
営内者と呼ばれる陸士や陸曹は「指定場所に居住する義務」があるため勝手に居室を替えることは出来ないし、「営内班」と呼ばれるグループ分けされた班員と生活を共にする団体生活をしなけれじならない。
もっともこの話は30年くらい前の自衛隊の話で、今は個室・・・だったらいいね・・・と言う話である。
営内班は当然、階級があって先輩後輩というか階級社会で同じ階級章を付けていても先任、後任があって明確な序列の中で生活している。
部屋長は「先任士長」と呼ばれる古参陸士長である。
当時狭い居室になんと16名も押し込められて全て二段ベッドだった。
劣悪な環境で若い階級の下の隊員は二段ベッドの上と決まっていた。
古参陸士長のいじめ・・・いや懇切丁寧にネチネチした指導もこんなに狭い部屋に居たら新兵はひっきりなしにたまったもんじゃない。
この時代、逃げ出して脱柵する隊員も多く自〇する者も少なくなかった。
冷戦時代の北海道だからそれはそれは厳しい時代であった。
夜になると消灯後に禁じられている営内での飲酒である宴会が毎晩行われていた。
外出も自由じゃなかったからね。
その晩、古参陸士長で3任期目のS士長が「昔よ、この居室でよ、Oという1士が居たんだ。そうそうU3曹の新隊員の同期で俺より1年先輩でよ」と唐突に話し始めた。
4任期の先任士長のT士長はその話題に露骨に嫌な顔をした。
「Sその話はやめろよ、気分悪い」と言ったが万年陸士長で陸曹候補生の1次試験に一度も合格していないT先任士長の言葉なんか陸曹候補生の一次試験に2度受かっているS士長には聴こえない。
「俺が新兵でO1士の指導を受けてたけれど、それがなっていないって先輩士長にこっぴどくやられてよ、参ってしまったんだな、そこでナイフで首を斬ったんだよ」とあるベッドを指さした。
「それからよ、こんな風に夜宴会をしているとよ、O1士が混じっていることがあるんだ」と言う。
「そんな時はそっとして知らない振りをしてくれな」とS士長は涙ぐんだ。
新兵はコップに酒を注いだりしているが、その数が1つ多いのに気づいた。
他の営内班からも来ているのかな?とも思ったが消灯後なので暗いし顔を確認しようにも狭い所に密集しているから・・・。
新兵はぎょっとしたT先任士長の隣に見知らぬ1士がいたからだ。
しかもT士長を憎々しげに睨みつけている。
s士長が新兵に気が付き「言うなよ」と声を出さず口を動かした。
「ああ、O1士をいじめていたのはT士長だったのか・・」と察した。
パワハラの概念も無い時代の話である。
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