手帳
「手帳を取って不利益になることはないよ」
相談にあっさりと答えられて拍子抜けした
主治医に言われる前から調べてはいたけど
自分が条件に該当するレベルにあるのかが
分からなくて動くのをためらっていただけ
結論としてはあっさり審査を通過した感触
頑張って診断書を書いたのは主治医のほう
私は認定通知が来るのを待っていただけで
不利益を感じたことは今のところ特にない
むしろ利点が多すぎて驚いたくらいだった
ほとんどの場合その根拠は恐らく
明らかに見て分かるようなもので
“手帳”が見えたらなるほどねと
私ですら納得することが多いけど
たぶん私は病気には見えなくて
原因の解明も根本からの治癒も
期待できないように思われるし
つまりよく分からない類の病で
「人は『見えない』ものを恐れる」*
だからたいてい困惑を招くだけ
だけどときどきはそうじゃなく
“手帳”を見せて半額運賃でバスを降りるとき
運転手さんが言う「気を付けてね」
“手帳”があると割引されるあちこちの入場料
受付でさりげなく丁寧に扱われる
その些細な間 世界がほんの少し私に優しくなる
この手の中の“手帳”を隠そうとも思わないし
これからもきっとオープンでいたいと思うから
世界は優しかったり優しくなかったりするけど
恐れないで ほんの少しでも伝わったら嬉しい
ビョーキだけど私は私にそれほど失望してないし
できることできないことは少しずつ分かっていく
私は大丈夫だから恐れず何でも聞いてみてほしい
あなたが思うよりも 私が思うよりも それらは
大きな問題にはならないこと かもしれないから
*「Shrink ~精神科医ヨワイ~ 08」(原作:七海仁 漫画:月子 集英社)より