無条件の愛

ずっといい子でいなくちゃいけなかったわ
少なくともそう思っていたの
いい子でいなきゃ愛されない
いい子でいなきゃ喜ばれない
でもなかなかいい子にはなれなくて
たくさん痛い思いをしたわ
物理的にも心理的にも痛いことを

ついに悪い子になって逃げることにしたわ
心を殺しきれないと思ったの
いい子でいなきゃ愛されない
いい子でいなきゃ救われない
でもとうていいい子にはなれなくて
たくさん痛い思いをしたわ
トラウマにだってなり得るくらい

間違ったことをしたなんて
これっぽっちも思っていないわ
逃げた瞬間はまるで
世界が終わったような気持ちになったけど
次の朝が来てみれば
世界はいつもと変わらず動いていて
嘘のように当たり前の日常があったから

ビョーキとはいえ戻ったのは
いい選択だったか自信はないわ
そのときはもうそれしか
残された道はないような気がしていたけど
時間と距離を置いたあとでも
家族は以前と変わらず狂っていて
そして変わらず私を条件付きでしか受け入れなかった

「条件付きだって不満そうだけど他の人は無条件にしてくれたの?」
そう母が言って それで気づかされたのよ
家族なら無条件の愛をくれるものだって
私自身が勘違いしていたんだってことに
浅はかだったわ
家族だとしても無条件の愛をくれるわけではないのよ

条件無しで愛されてきたわけではないかもしれないわ
それなりの努力をして ギブアンドテイクの精神で
愛し愛されてきただけかもしれないわ
それでも信じてるの これまで出会った中に
きっといたはずだわ
家族でもないのに無条件に愛してくれたひとが

浅はかだったわ
家族だからといって無条件の愛をくれるわけではないのよ
だけど信じてるわ
他人ですらときには無条件で愛してくれることがあるわ

無条件の愛がきっとどこかにはあるわ
こんな私でも 誰かに注げる
こんな私にも 誰かから向けられる
無条件の愛が

信じてるの
きっとどこかにはあるわ